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32 告白したら寝落ちってどゆこと
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目を開けたまま寝落ちした疑惑のカリオスの前で手を振ってみるべく、握られた手を取り返そうとしたが。
ちょっとやそっとじゃ動かないくらいギッチギチに握られていた。無理くり引き剥がして、傷でもつけたら嫌だしな……仕方なく俺は半眼で彼を見つめるだけにとどめる。
「……おーい、なんか反応してくれー?」
カリオスは俺の一言に、ハッと正気を取り戻したようだった。
「いえ、ちょっと信じられなくて」
「なんでだよ……俺もカリオスのこと好きだわ、ちょう好きだから。もうマジマジきゅんだから」
「そ、そうでしたか」
カリオスの顔が急激に熱を帯びて、ポッポと赤くなる。狼狽えて視線を逸らすカリオスなんてはじめて見た。めっちゃレアじゃんと目を見張ってしまう。
「なぜにそこで照れるし」
「いやだって、ツカサはかなりつれない態度だったでしょう。強気に迫っていましたが、内心そこまで自信はなかったんですよ」
あの態度で自信がなかったとか、カリオス君ってばとんだハッタリ上手だな!? 俺はとっくに、俺ですら気づいてなかった恋心を見抜かれていたと思いこんでたぞ。
カリオスは赤い顔のまま、咳払いをした。どうでもいいけど白人種が赤面すると面白いくらいに赤くなるのな。トマトみたいだ。
トマトなカリオスは、必死になって言い訳を重ねた。
「僕がここまで迫って落ちなかった人はツカサが初めてです。それまでに出会った人であれば、愛の言葉なんて言わなくても思わせぶりに近づくだけで、みんな出会って三秒即落ちでしたから」
「ケッ」
せっかく気持ちが通じあったとこなのに、過去のモテ話を持ちだすのやめてくんない?
カリオスはテンパっているのか、大袈裟な身振り手振りでそんなつもりではなかったと打ち消した。
「ああ、言い方がまずかったですね。好きです、ツカサ。もっと早く口にしていればすれ違わずにすんだのに」
ついでに、カリオスが直球で好きだと言わなかったのには理由があって、冷え切った仲の両親がパーティなんかで外面をとり繕う時に、愛してるわだとか大好きだとかをお互いに連呼するらしいんだ。
だから俺にはそんな空虚な言葉を使いたくなかったらしい。
うん、それはまあ……カリオスが口にしたくないなって思っても無理はない。
けど俺はそういう直球言葉、ちゃんと気持ちがこもった状態で言われたら嬉しいからさ? これからは言いあっていけるといいなと告げると、彼もコクコクと首を縦に振った。
「毎日言います。好きですツカサ、愛しています」
「うん……俺も、愛してるよ」
「かわ……かわいいがすぎる……」
感極まったように手を額に当てて、上を向くカリオス。恥ずかしいからそれやめてくんない? 話の矛先を逸らしてみるか。
「てか前にも聞いたかもしらんけど、ぶっちゃけお前さんいつから俺のこと本気で好きだったの?」
「そうですね、恋しましょうと言ったあたりからですかね」
「最初からじゃん!?」
「その時に貴方の容姿をはじめてじっくり見て、ああかわいい人だなと思いました。声もかわいいし反応もありきたりではなくて面白い、この人をベッドの上で鳴かせたらどんな声を上げるのだろうと」
「あーあーあーせっかくのイケメンが下ネタで台無しだー」
「ちょっと、ツカサが聞いた話ですよ? 最後まで話させてくださいよ」
「耳が腐るからムーリー」
「……腐るなんてとんでもない。熟れて赤くなってますよ」
やっば。カリオスのあけすけな言葉に、体が反応してしまったみたいだ。立ち上がったカリオスは俺側に回りこむと、ヒョイと俺をソファーに押し倒した。
「ま、待って待って」
「ツカサはいつもそれだ。僕としては、もっととか早くとかおねだりが聞きたいのですけれど」
「そういうのはまだ無理だから、こちとら恋愛経験ろくにない素人なんで。手加減していただけないと困るっていうね?」
「ああ、ツカサの匂いがする……帰ってきたんですね」
ぎゅうっと密着されて首筋に吐息がかかる。少し迷って、さまよう手を右は頭に、左は背中に置いてみた。ここ最近の不摂生で少々パサついた金の髪を手櫛ですいてやると、不思議と心が満たされた。
広い背中に抱きついたまま、思いきり息を吸いこむ。不思議と全然嫌じゃないカリオスの匂いが、俺の肺を満たした。なんだか癒された。
「おかえり、カリオス」
そのままなでなでしていると、ついに睡魔が限界にきたらしい。ズシリと重みがかかると同時に、規則正しい呼吸が俺の首筋をくすぐった。
「お、やっと寝たのか。しっかりクマがとれるまで養生するんだぜ? 不老不死の魔法をかける前に死なれたら、俺だってぽっくりいきたくなっちゃうかもしんないからな」
「……カサ……僕……、むにゃ」
なにか言いかけたカリオスだが、寝言は不明瞭でよくわからなかった。起きたらどんな夢を見たのか聞かせてもらうことにしよう。
カリオスを彼の部屋に寝かせる頃には、太陽は地平の下へ沈んでいた。紅く染まった空の淵の反対方向から、美しく幻想的な夜空が窓の外に広がりはじめていた。
ちょっとやそっとじゃ動かないくらいギッチギチに握られていた。無理くり引き剥がして、傷でもつけたら嫌だしな……仕方なく俺は半眼で彼を見つめるだけにとどめる。
「……おーい、なんか反応してくれー?」
カリオスは俺の一言に、ハッと正気を取り戻したようだった。
「いえ、ちょっと信じられなくて」
「なんでだよ……俺もカリオスのこと好きだわ、ちょう好きだから。もうマジマジきゅんだから」
「そ、そうでしたか」
カリオスの顔が急激に熱を帯びて、ポッポと赤くなる。狼狽えて視線を逸らすカリオスなんてはじめて見た。めっちゃレアじゃんと目を見張ってしまう。
「なぜにそこで照れるし」
「いやだって、ツカサはかなりつれない態度だったでしょう。強気に迫っていましたが、内心そこまで自信はなかったんですよ」
あの態度で自信がなかったとか、カリオス君ってばとんだハッタリ上手だな!? 俺はとっくに、俺ですら気づいてなかった恋心を見抜かれていたと思いこんでたぞ。
カリオスは赤い顔のまま、咳払いをした。どうでもいいけど白人種が赤面すると面白いくらいに赤くなるのな。トマトみたいだ。
トマトなカリオスは、必死になって言い訳を重ねた。
「僕がここまで迫って落ちなかった人はツカサが初めてです。それまでに出会った人であれば、愛の言葉なんて言わなくても思わせぶりに近づくだけで、みんな出会って三秒即落ちでしたから」
「ケッ」
せっかく気持ちが通じあったとこなのに、過去のモテ話を持ちだすのやめてくんない?
カリオスはテンパっているのか、大袈裟な身振り手振りでそんなつもりではなかったと打ち消した。
「ああ、言い方がまずかったですね。好きです、ツカサ。もっと早く口にしていればすれ違わずにすんだのに」
ついでに、カリオスが直球で好きだと言わなかったのには理由があって、冷え切った仲の両親がパーティなんかで外面をとり繕う時に、愛してるわだとか大好きだとかをお互いに連呼するらしいんだ。
だから俺にはそんな空虚な言葉を使いたくなかったらしい。
うん、それはまあ……カリオスが口にしたくないなって思っても無理はない。
けど俺はそういう直球言葉、ちゃんと気持ちがこもった状態で言われたら嬉しいからさ? これからは言いあっていけるといいなと告げると、彼もコクコクと首を縦に振った。
「毎日言います。好きですツカサ、愛しています」
「うん……俺も、愛してるよ」
「かわ……かわいいがすぎる……」
感極まったように手を額に当てて、上を向くカリオス。恥ずかしいからそれやめてくんない? 話の矛先を逸らしてみるか。
「てか前にも聞いたかもしらんけど、ぶっちゃけお前さんいつから俺のこと本気で好きだったの?」
「そうですね、恋しましょうと言ったあたりからですかね」
「最初からじゃん!?」
「その時に貴方の容姿をはじめてじっくり見て、ああかわいい人だなと思いました。声もかわいいし反応もありきたりではなくて面白い、この人をベッドの上で鳴かせたらどんな声を上げるのだろうと」
「あーあーあーせっかくのイケメンが下ネタで台無しだー」
「ちょっと、ツカサが聞いた話ですよ? 最後まで話させてくださいよ」
「耳が腐るからムーリー」
「……腐るなんてとんでもない。熟れて赤くなってますよ」
やっば。カリオスのあけすけな言葉に、体が反応してしまったみたいだ。立ち上がったカリオスは俺側に回りこむと、ヒョイと俺をソファーに押し倒した。
「ま、待って待って」
「ツカサはいつもそれだ。僕としては、もっととか早くとかおねだりが聞きたいのですけれど」
「そういうのはまだ無理だから、こちとら恋愛経験ろくにない素人なんで。手加減していただけないと困るっていうね?」
「ああ、ツカサの匂いがする……帰ってきたんですね」
ぎゅうっと密着されて首筋に吐息がかかる。少し迷って、さまよう手を右は頭に、左は背中に置いてみた。ここ最近の不摂生で少々パサついた金の髪を手櫛ですいてやると、不思議と心が満たされた。
広い背中に抱きついたまま、思いきり息を吸いこむ。不思議と全然嫌じゃないカリオスの匂いが、俺の肺を満たした。なんだか癒された。
「おかえり、カリオス」
そのままなでなでしていると、ついに睡魔が限界にきたらしい。ズシリと重みがかかると同時に、規則正しい呼吸が俺の首筋をくすぐった。
「お、やっと寝たのか。しっかりクマがとれるまで養生するんだぜ? 不老不死の魔法をかける前に死なれたら、俺だってぽっくりいきたくなっちゃうかもしんないからな」
「……カサ……僕……、むにゃ」
なにか言いかけたカリオスだが、寝言は不明瞭でよくわからなかった。起きたらどんな夢を見たのか聞かせてもらうことにしよう。
カリオスを彼の部屋に寝かせる頃には、太陽は地平の下へ沈んでいた。紅く染まった空の淵の反対方向から、美しく幻想的な夜空が窓の外に広がりはじめていた。
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