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蜜月

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 白露の発情期は七日ほど続き、最初の三日間は食事を摂るのもそこそこに二人はまぐわいあった。

 四日目、五日目と日が経つごとに落ち着いてきて、七日目の今では琉麒の膝の上に乗せられてご飯を食べさせられていても、キスをねだらずに食事を続けられる程度には落ち着いてきた。

 琉麒の自室でお互いに夕餉を食べさせあいながら、白露は目の前の美麗な顔を愛しげに見つめる。

「はい、あーん」

 薄い唇が白露の差し出した鶏肉を口の中に含み、咀嚼する。食事をしているだけなのにどうしてこんなに神々しいのかとうっとり眺めていると、鶏肉を飲みこんだ琉麒が白露のために葡萄を剥いてくれて、目の前に差し出してくる。

「白露も食べて」
「うん」

 ツヤツヤの果実を口に入れると程よい酸味と甘さが舌の上に広がり、白露は自然と笑顔になった。桃の季節は終わってしまったけれど、葡萄は葡萄でとても美味しい。

「ふふ、笹を食べさせあえなくたって、他に美味しい物はたっくさんあるよね」
「なんの話だ?」
「僕ね、将来番になる人とはお互いに助けあって暮らして、美味しい笹を分け合うような、一緒にのんびり鳥を眺めて楽しむような、そういう生活をするのが理想だったんだ」
「そうだったのか」

 琉麒は一瞬考える素振りを見せたが、凛々しい声で宣言した。

「白露が望むのであれば、私も笹を食してみよう」
「いいよ、無理しなくて。琉麒は笹を美味しく食べられないでしょう? そういう意味で言ったんじゃなくってね、一緒に食事を楽しんだり、日々の小さな出来事に感動しあえるといいなって意味なんだ。だから今こうして琉麒と過ごせて、すごく幸せだよ」

 にっこりと笑いかけると、琉麒は白露を包みこむように優しく抱きしめた。

「白露……私もだ。君が里を出てきてくれてよかった。君と出会えたことは、私の獣人生で一番幸運な出来事と言っても過言ではない」
「そんなに? うん、でも僕もそうかも」

 彼と出会ってから勉強することばかりで苦労もしたし、慣れない環境で戸惑いもあったけれど、それでもこうして側にいられて間違いなく幸福だ。

 勇気を出して噛んでもらったお陰で番同士にもなれていた。お医者様からも太鼓判をもらったし間違いない。

(これからはずっと一緒にいられるんだ。嬉しい)

 琉麒の肩に顔を寄せて隙間なく抱きつくと、また触れあいたくなってきてしまった。彼に情熱的に愛されたここ数日間の情事を生々しく思い出しただけで、白露の分身が元気になってくる。

 くっついている琉麒にももちろん気づかれただろう、彼は妖艶に微笑んだ。

「今日も天国に連れていってあげようか」
「ん……あ、でも、そろそろ琉麒もお仕事に戻らなきゃいけないんだよね?」

 白露が発情期に入ったからと、琉麒は最低限皇帝が関わるべき仕事だけを短時間で終わらせて、後りの時間はずっと白露の側についてくれている。最初は無邪気に喜んでいた白露だったが、流石に七日もこの状態だと心配になってきた。

 茉莉花の匂いで番を誘いつつも、彼の事情を案じる白露の視線を受けて、琉麒は苦笑しながら首を横に振る。

「普段から働きすぎなんだから、こういう時はしっかり休めばいいと太狼に送り出されたよ。虎炎も秀兎の失態を取り戻させてくださいと精力的に働いているし、本当に何も心配することはない」
「秀兎は何も悪くないよ、僕が勝手に出て行ったんだから。また先生をしてくれるといいんだけど」
「私からも頼んでおこう。だが今は、君を愛でるのに忙しい」
「あっ」

 琉麒が白露の兆しはじめたモノを布の上からなぞりはじめた。たちまち頭の中は桃色な気分でいっぱいになる。

 理性ではまだ真面目な話をしなくちゃと思っているのに、身体は正直なもので腰を琉麒の手に押しつけるような動きをしてしまう。

「待ってぇ、まだ話したいことが、あるっ、のにぃ」
「後でまた話そう。式の計画については、白露の意見を取り入れたいからね。でもそれは一旦忘れて、今は君のことを味わせてくれ」
「う、ゃあ、あん!」

 少し触られただけで蕾から濡れた感触がするのが恥ずかしくて頬を染めながら俯くと、琉麒の熱を帯びた声が耳に吹きこまれる。

「積極的に快楽を追う君はとても魅力的だったけれど、恥じらう君もかわいいね」
「あ、やだぁ……」
「寝台へ移ろう」

 その日も夜半まで愛されて、白露は甘い声を上げ続けた。

 発情期の最初の頃のように強引すぎるくらい熱烈に抱かれるのもよかったが、涼やかな声に熱を滲ませながら、かわいい、好きだよ、もっとしてあげると甘やかされるのも素晴らしく気持ちがよかった。

 とろとろになるまで奥を穿たれて、白露からもお返しにキスをしたりしながら熱い夜を過ごした。そうして白露の初めての発情期は収束を迎えた。
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