半身転生

片山瑛二朗

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第5章 第十五次帝国戦役編

第451話 君に託す

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 公国軍は夜明けを迎えた。
 なんとか迎えることが出来た。
 公国軍第1師団と言えば、その全体像は約1万人に上る。
 公国が誇る大規模集団の一角であり、ミラ丘陵地帯での戦いは彼らが主導した。

 現在、第1師団で戦闘可能な人間の数は500名。
 実に1/20である。
 勿論残る9,500人が皆死んだわけではない。
 行方不明になったり、脱走したり、負傷して戦線離脱したり、様々な理由で離れているだけだ。
 しかしそれにしても少ない。
 それはもう、戦いを続けることができない程に。

 第1師団長アダム・クラーク中将は、味方を鼓舞するために前線に出ていた結果矢を受けて治療中。
 アラタも良く知る第2連隊長リーバイ・トランプ中佐は部隊が壊滅に追い込まれ、再編成と共に後方へと送られた。
 要約すると、大損害を出したことによる更迭である。
 500名しかいないわりに指揮官の数が多いと意思決定に無駄な時間がかかるので、時折こうして上層部の人数を減らすのだそうだ。
 それを聞いたアラタは、度重なる敗北でクラーク家の威光も地に落ちたのだと悟った。
 そしてクラーク家にとっての凶報は続く。

 クラーク伯爵家長男ケンジー・クラーク中尉、次男ブレーバー・クラーク少尉の両名の戦死。
 レイヒム死去の翌日、前線から戻って来たアラタは自分の耳を疑いながらも、否定しようのない現実を目の当たりにした。
 2人ともクラスは平凡だが、高い戦闘能力と指揮能力を持った指揮官だ。
 並大抵のことでは崩れないし、事実そうやってこの帝国戦役を戦い抜いてきた。
 それがここにきて示し合わせたかのようにほぼ同時の戦死。

「特殊部隊かと思われます。魔術師の一団と少年兵の一団が同時にやって来たのです」

 副官は涙ながらにそう語った。
 どこかで見た事聞いたことある特徴。
 お前たちもここに来ていたのかと、アラタは敵の姿を明確にイメージする。

 コートランド川の戦いでアラタ率いる第1192小隊を苦しめた魔術師部隊。
 ハルツ殺害に関与し、1192小隊の裏切り者と連携してこちらを狩りに来た少年兵たち。
 あの時しっかり殺しておけば、そう思うこともある。
 ただ、あの時あの場所では深追い出来る状況ではなかった。
 だから仕方のないことだと、たとえこれから親しい人が彼らと対峙して殺されたとしても自分のせいではないと心の中で自己肯定する。
 そんなやり取りをしている間に時間がやってくる。

「アラタ殿、そろそろお願いします」

「分かりました。ルークさんは?」

「一緒じゃないんですか?」

 アラタに対して再出撃を知らせに来た伝令係はてっきり同じ場所にいると思っていた。
 しかしその場にルークはおらず、アラタも知らないという。
 これは困ったとほんの少しだけ逡巡すると、すぐに優先順位を付け直して対応する。

「アラタさんは先に行ってください。ルークさんはこちらで何とかします」

「分かりました」

「ご武運を」

 まずはアラタを戦場に確実に送り、それからルークのことを気にする。
 そういう心づもりだ。

 ——戦争なんだ、人は際限なく死ぬ。
 誰だろうと関係ない、死ぬときは死ぬ。
 だから、俺もいつ死ぬか分からないから、死ぬその直前までは、出来る限りの敵を殺そう。

 そしてアラタは、刀に手をかけた。

※※※※※※※※※※※※※※※

「来たぞぉ! 銀星だ!」

「生き残るぞ!」

「全員気張れ!」

 一致団結して、心を一つに、そんな運動会のスローガンが似合う帝国軍。
 相対するのはアラタを含めたごく僅かな公国軍。
 もはや軍というより、兵士の小さな集合体でしかない。
 アラタ含め、公国兵は怒り、辟易し、呆れ、殺意に満ちていた。

 貴様らはどの口で、どの立場でそんな前向きな言葉を吐くのかと。
 帝国人は侵略者で、そこに言い逃れの余地はない。
 先の東部動乱に乗じた武力介入ならまだいくらか言い訳もつくだろうが、今回は完全な領土侵犯である。
 コートランドから西に100km単位で侵攻し、畑を荒らし、町を破壊し、人を殺した。
 公国兵との戦闘でも、彼らは躊躇することなく戦った。
 一方から見れば勇敢かもしれないが、もう片方から見れば蛮族と呼ぶのもおこがましいほどの邪悪。
 自然と刀を握るアラタの手にも力が入る。

「ぶっ殺してやるよ」

「敵が来るぞ!」

 帝国軍の指揮官が檄を飛ばし、呼応するように大楯を構えた重装歩兵が前列に立つ。
 彼らの数列後ろには軽装歩兵と弓兵が待機していて、そのさらに少し後ろに予備戦力が控えている。
 起伏の激しいミラ丘陵地では馬の機動力を活かせる場所というのは案外少なく、例によって今回も歩兵がメインの戦場となる。
 上からの振り下ろしがある騎兵は歩兵の天敵だが、いなければアラタにとってこれ以上ないくらいおあつらえ向きのフィールドとなる。

 寡兵ゆえに味方同士のスペースが空き、魔術が使える。
 疲弊していても、魔力はまだ尽きそうにない。
 いつからだろうか、アラタが魔力切れを気にせず戦うようになったのは。
 いつからだろうか、戦い方を磨けば磨くほど、自分の想い人を殺した憎き仇の姿と被るようになったのは。
 大公選の直後、エリザベス・フォン・レイフォードを殺しにやって来た男、ユウ。
 彼は全力全開のアラタと互角以上に戦い、最後は100本もの雷槍を一気に打ち出して戦いを決めた。

 まだそこまでの境地には辿り着けてはいない。
 流石に魔力も足りなければ、上級魔術を連発できる気力も体力もない。
 しかし、徐々に近づきつつある。
 その歩みは遅く、遠回りもする。
 しかし確実に距離を詰めていく。
 本来存在するはずの成長上限を取り払うスキル【不溢の器カイロ・クレイ】。
 アラタの魔力量を異常増大させ、身体能力を拡張し、スキルを成長させ、とにかくありとあらゆる上限を乗り越えさせる。

 季節は冬、カナンの冬は湿度が下がる。
 湿度が下がると、雷属性魔術の難易度も下がる。
 イメージ的には冬に静電気が発生しやすいのと同じだが、厳密な物理法則は少し違うのだろう。
 アラタはその辺の説明を師匠のアラン・ドレイクから受けたことがあるが、難しすぎて理解を諦めた。
 とにかく、彼の手元でけたたましく鳴り響く雷は、帝国兵の警戒心をMAXまで引き上げる。
 そしてアラタは性格が悪い。

「ばっ、下! 下だ!」

 ドロリと沈み込むような感触。
 ようなというより、実際に沈んでいる。
 土属性魔術、泥沼。
 水属性との複合行使で威力を増す種類の魔術で、難易度としては中の下くらい。
 敵が虚を突かれたのには別の理由がある。
 まず、これ見よがしに構えてみせた雷槍。
 次にこれだけの密集状態に対して魔術をねじ込む隙間なんてないだろうと言う常識に近い先入観。
 彼らは口先でやれ銀星だ、やれBランク冒険者だと警戒しておきながら、その辺に関する認識が未だに甘い。
 未だにというのは、死ぬ間際なのにという意味である。

 余人にはできないようなことをやってのけるから、アラタは銀星十字勲章を受勲したのだ。
 他の人より遥かに優れているからBランクなのだ。
 ずば抜けた戦闘力があるから、多少抜けてても許されるのだ。
 敵の防御壁に僅かな綻びが奔る。
 そこからなら、耐魔術処理を施した盾を潜り抜けて敵を射殺すことも出来そうだ。

「くらえ」

 青白い稲妻が空間を斬り裂いた。

※※※※※※※※※※※※※※※

 今日も何とか生き残った。
 下がりつつ敵と戦い、近づいてきた敵を追い返して、突き放して自分たちも逃げる。
 アラタの働きもあり、敵はそこそこ損害を出したところで一時撤退した。
 24時間張り付かれる日もあったのだのだから、今日は上出来と言える。
 意気揚々とまではいかなくても、それなりに軽い気持ちで帰陣したアラタを待っていたのは、暗い顔をしたルークとタリアだった。

「ルークさん、どこ行ってたんですか」

「まあな。今日はすまん」

「撃退できたからいいですけど。で、次は誰なんです?」

「……来い」

 アラタの言葉を否定しない以上、当たっているのだろう。
 また誰かが死ぬという彼の予測が当たっているのだろう。
 下がりながらで時間と人手に余裕が無くても、手術用のテントくらいは立てる文明らしさを残している公国軍。
 そのうちの1つ、まだこんなに綺麗な布地があったのかと驚かされるほど白い天幕をくぐると、奥まったところに安置されたベッドと、それを取り囲む兵士たちの姿があった。

「冒険者ルーク、タリア、アラタ、ただいま参りました」

 テントの広さは普通、つまり中に入れば大抵の場所は見渡せる。
 入った時点で、臥せっているのが誰か分かる。

「ベルサリオ少尉ですか」

 アラタの声は小さかったが、聞こえたらしく本人が答える。

「そうだ、私だ。疲れているのに呼びつけてすまない」

「いえ、問題ないです」

「ふっ、そうか」

 アラタ、ルーク、タリアの3人はフェリックス・ベルサリオ少尉から見て左下の辺りに立った。
 ベッドの横、足の辺りだ。
 治癒魔術師のタリアが治癒魔術師として動いていない時点で、アラタは全てを察した。
 もう間に合わないと、無理なのだと悟った。
 自分たちは何か役に立つから呼ばれたのではなく、彼の今際の際を看取る為に呼びつけられたのだ。

「ここにいた人たちとはひと通り話をしてね。あとは君くらいだなと思ったんだ」

「そうですか」

「あれだ……私はもうすぐ死ぬ」

 そう断言した男の左腕は、上腕付近から下が無く、右手は手首から下が消えていた。
 止血したのだろうが、包帯もなく布を使って縛り上げていて、そこにはどす黒い真っ黒な血がこれでもかと染みついている。
 肌も土色をしていてすこぶる悪く、唇も乾燥していた。

「君くらい近くにいたかった」

「はい?」

「リーゼの傍にだよ。正直、士官学校にいた間は羨ましくて仕方がなかった」

 少尉はアラタに話しかけているつもりらしいが、その実独り言を呟いているようにも聞こえた。

「手紙にも君のことが書かれていた。面白い人を拾ったとね。それから手がかかるとも」

「そうですか」

「頼りになる仲間だから、戦場でもきっと助けてくれると言っていた。君は期待を裏切らなかった」

「どうも」

「一応聞いておくけど、リーゼに手を出してはいないだろうね?」

「許嫁がいるのにそんなことするわけないでしょ。俺信用なさすぎじゃないですか?」

 ふっ、とベルサリオが笑った。

「アラタ君、リーゼは君に任せるよ」

「無理ですよ。自分で何とかして下さい」

「頼む。一生に一度の頼みだ」

「……卑怯すぎる。でも……分かりました」

「やっぱり期待を裏切らないいい男だ」

「俺は——」

 そんなに信頼される人生を送っていない。
 そう言おうとしたが先にベルサリオに遮られる。

「君に託す」

 そう言われると、アラタは断れない。

「分かった。どんな形になっても、リーゼは必ず幸せにします」

「フフッ、あと、弟のことも出来れば頼みたい」

「弟?」

「レオ、レオナルドという。君と面識があると聞いたよ?」

 そう言われて急いで記憶の海を探したが、どうにも思い浮かばない。
 大公選前、1年以上前に彼が学校に通っていた際に知り合った少年のことを指しているのだが、この時は繋がらなかった。

「まあいい。公国に栄光あれ。戦友たちよ、一足さ…………」

 フェリックス・ベルサリオ少尉は、眠るように息を引き取った。
 まだ若く、士官学校を今年卒業したばかりの新卒だった。
 毎日のように味方が、知り合いが、友人が、親友が死んでいく。
 アラタは天幕を後にすると、感情を隠すように黒装束とセットになっている白い仮面をつけてどこかへと歩いていった。
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