227 / 544
第3章 大公選編
第224話 ありったけの殺意をお届けしに
しおりを挟む
脱走したエリザベス・フォン・レイフォードを追跡する捜索隊の最小構成単位は分隊。
4人以上で構成されたそれを、4つ集めると1個小隊になる。
メイソン制作の魔道具は、全部で15セット。
ドレイクが個人でそれを一つ所持していて、残るは14セット。
一つ当たりにどれくらいの人員が割り振られているのかはバラバラだが、ハルツがそれを一つ受け持っている。
彼の下についているのは、同じパーティーのレイン、ルーク、タリア、ジーン、それからノエル、リーゼなどの冒険者たち。
締めて34名が彼の指揮下にある。
そして、捜索中だった4月11日。
「……ルーク、ジーン、全員集合だ」
「「了解」」
ハルツは散開して被疑者を追跡中だったが、部下たちを招集してひとところに集めた。
そして、任務の終了が告げられる。
「みんな、任務終了だ。ターゲットは死亡した」
カナンから南側に向かっていた彼らは、今回特に何かすることが出来る位置に立っていなかった。
正直居てもいなくても、事態の趨勢には関係ない。
だが、手が届かなかったからと言って、参加者たちが割り切れる者たちばかりではない。
中にはレイフォード家やエリザベス個人に恩がある人間もいて、彼らは呆然と立ち尽くしたり、泣き崩れたり、とにかく、絶望した。
大公選の流れの中で彼女の黒い側面が表に噴出したことは事実で、それに関しては弁明の余地もない。
だからこそこのままでは処刑されると考えて、アラタは彼女を連れ出したのだから。
しかし、やり方はもっと別の方法があったかもしれないが、ウル帝国との融和路線を提唱した彼女についていく信奉者がそれなりの数、大公選で一時圧倒的優勢を誇っていたくらいには存在していた。
それほど、彼女の掲げた理想には価値があった。
夢があった、明るい未来があった。
張りぼての、虚飾の城だったとしても、一般大衆はそれに惹かれた。
夢を見させてもらった。
そんなもの無理だと、ウル帝国との平和路線など不可能だと、現実を見て出来る対処をするのがクレスト家なら、レイフォード家はそこから溢れた人たちの受け皿になっていたのだ。
これが、クレスト家当主シャノン・クレストがこの国を治めるにあたっての大きな課題と障害になるのだが、それはまだ先の話。
「人は脆いな」
馬上のハルツは隣を歩いているルークに話しかけた。
「歳か?」
「まあそれもあるが、国の行く末を決める大公選の結末としては、なんとも後味の悪いということだ」
「今回は特に、な」
「あぁ」
冒険者の中には乗馬経験が無い者もいて、相乗りしている騎馬がいくつかある。
急ぎでないのなら、彼らに速度を合わせる。
だから、馬の手綱を握りながら会話する余裕もあった。
「いずれにせよ、これから忙しくなるぞ」
「それはお前だけにしてくれよ。頼りにしてるぜ、リーダー」
「ほんに都合の良い男だな。まあ、冒険者業だけやっていればいい訳ではなくなるかもな」
「軍から招集があるのか?」
ハルツは首を横に振る。
「いや、まだそこまで性急な話でもない。可能性の話だ、忘れてくれ」
「そうなりゃ俺もついてってやるよ。寂しがり屋はクラーク家の家柄だからな」
茶化すルークを少しにらむと、ハルツは肩の力を抜いた。
馬の振動が体に伝わってきて、それをうまいこと受け流す。
彼くらい乗馬歴が長いと、一日中馬に乗っていてもそこまで疲れることもない。
まあ、別の理由で疲れることは多々あるのだが。
彼は後方をちらりと見て、後続がついてきているか確認する。
その中には、ノエルや姪のリーゼの姿もきちんとあった。
「家柄が移ってしまったのか。それとも元からああなのか」
「どういうこと?」
「まあ、もう少し俺の苦労が続きそうだということだ」
そう言った彼の笑みは乾いていた。
※※※※※※※※※※※※※※※
ハルツたちがドレイクからの魔道具信号を受け取る前日。
4月10日、カナン公国首都アトラ。
大公選に負け、不正の数々が明らかになったレイフォード家やその傘下の貴族家、組織は警邏機構による家宅捜索の真っ最中だった。
真っ最中にもいろいろあって、今はもう捜査員が家にやってくることは無い。
押収が必要だと判断された物品に関しては既に搬出が完了していて、残されたものに対した価値はない、とされている。
人に関しても同様で、参考人になりそうな人間は令状を出したり任意同行を求めたりして、大量の身柄を拘束している。
そこから溢れた人間は、今回の事件に対して関わっていなかったと判断された下っ端ばかり。
彼らは、機能不全に陥った屋敷に戻ることも許されず、実家や自宅で謹慎していた。
だが、ここに一部例外がある。
警邏機構、もっと言えばそこから派生した特務警邏は、もとはと言えばレイフォード家派閥寄りだ。
特務警邏局長ダスター・レイフォードがドレイクの下僕で、転じてクレスト家派閥に引き入れられていたのは驚愕ものだったが、組織全体を見ればまだ敵派閥の色は濃い。
つまり、局長の制御から外れてしまった跳ねっ返り共の中に、レイフォード家に忠誠を誓い続けている構成員がいることも予想できた。
ダスターはそう言った人間に対しても令状を用意して拘束していたが、いかんせん全部というわけにはいかない。
そうして、その手の人間が行動することで例外が生まれる。
例えば、今回の最重要参考人であるレイフォード家相談役の5人など。
彼女たちは、レイフォード家本邸、その離れの地下にある隠し部屋でいつものように集まっていた。
杜撰というか、よく隠したというか、この部屋に捜査の手は入っていない。
それは少し問題な気もするが、何事にも例外はつきものだ。
「あの女、最後の最後でしくじりおったのぉ。また一からやり直しか」
円を描くように明かりを囲んでいる彼女たちの中で、リーダー格とみられる女性が茶をすする。
彼女の名前はソフィア・フォン・レイフォード。
血縁上はエリザベス・フォン・レイフォードの祖母だ。
当然、アラタがエリーと呼ぶ異世界人との血縁関係は無い。
死亡したエリザベスの祖母であり、先代当主を息子に持つことから、この中で最も発言権が大きい。
しわだらけの手は、欠陥が浮き出ていて、青白くて、枯れ木のように細い。
少し強く握っただけで折れてしまいそうなくらいか細いのだが、ゆらゆらと火に照らされて不気味だ。
「時間に関しては気にする必要がなくなったのじゃから、まずはそれを祝おうとはならんか?」
ソフィアに向かい合っている席のカーミラ・フォン・レイフォードは、彼女に比べて随分と楽観的な性格をしているらしい。
一から、時間、気にする必要が無いとは何のことか、部外者では理解に苦しむが、彼女たちにとってこの状況はそこまで絶望的なものではない。
そんな趣旨の発言は、他の3名の同意を得る。
「然り。当初の目的は2年以上前に達成しておる。大公の座など今更じゃよ」
「それもそうか」
見た目は完全に魔女の茶会といった様子で、非常におどろおどろしい。
別に必要以上に委縮する必要なんてなくて、彼女たちも小さい子供がここを訪ねたりすれば飴の一つや二つくれて可愛がってくれるだろう。
ここに子供が来たことなんてほとんどないが。
そんな相談役たちは、エリザベスが死亡したことをすでに知っている。
まだ国内では捜索隊が必死に活動しているが、彼らをあざ笑うように情報はすり抜けていく。
それもこれも、ここ数年ある男が当家に出入りするようになってからもたらされたものなのだが。
「さてと。そろそろ留置場に戻るとするかね」
よっこらせ、とグレース・フォン・レイフォードが腰を上げた。
腰を上げても、元から曲がっているせいか杖が手放せない。
お迎えも時間の問題な気がするが、これで時間的な問題は解決したらしい。
元より自分の世代で完成させようとしていないのかもしれない。
「猟犬は手強い。ステラ、警備の強化は済んでおるな?」
「勿論じゃよ。ほとぼりが冷めるまで、留置場ほど安全な場所はそうあるまい」
ははは、と笑う彼女たちは、まだ知らない。
首都を除いた、レイフォード家と深い関係にある各都市の首長たちの居場所で何が起こっているのか。
そして、自分たちがこれからどうなるのか。
「おとなしく箱の中にいるべきだったな。尤も、私がそうなるように仕向けたわけだが」
「貴様は!? イサ——」
※※※※※※※※※※※※※※※
アトラに向かっている間、ずっと考えていた。
俺は、何の為にこの世界にやって来たのか。
正確には、何故この世界に連れてこられたのか。
魂が本当にあったとして、俺の魂が半分になったとして、じゃあ遥香の魂が小さいころに半分になったことは偶然だったのか。
正直そこに関しては重要じゃない。
それらが事実だとして、俺の魂が半分になったこと、これが偶然だったのかどうかってことが大事なんだ。
こんなに人の魂は半分に割れるものなのか?
それなら半分になった人の魂がさらに半分になる事件とかもあって、4つの世界に4つの魂みたいなことになっていてもおかしくない。
まあそれはいい。
エリーが言っていた、あの子のせいで俺がこの世界に連れてこられたって話。
正直……その可能性は高いと思う。
清水遥香改め、エリザベス・フォン・レイフォード。
その人生の中に、アラタ・チバって存在が必要だった。
だから事件が起こって、俺はこの世界に来た。
その方がしっくりくる。
俺は、遥香、エリーの人生の脇役として、この世界に来た。
じゃあ、あの子が死んで、この話にケリがついた後は?
俺は、俺の生きる意味って何だ?
神は、きっとそんなことまで考えていない。
そこまでケアしてくれるとは元から思っていない。
ただ、まだエピローグは残っている。
まだ、エリーの話は終わっちゃいない。
その最後に、俺が出ても、いいよな。
本気で潜入しようとした彼らを止める術は、カナンには無い。
あるとすれば他国、ウル帝国の検査システムが考えられるが、この田舎の小国にそんなものがあるわけがない。
八咫烏として動くのなら、【気配遮断】を使えないリャンのことを考える必要があったが、今はもう彼はいない。
彼らにとって開かれている城塞都市の門など、家の玄関と変わらない。
影のように這いより、暗闇の中に沈める。
「特殊配達課、最後の仕事だ。準備はいいな」
「勿論。ぬかるなよアラタ」
「あぁ。弔い合戦だ」
4人以上で構成されたそれを、4つ集めると1個小隊になる。
メイソン制作の魔道具は、全部で15セット。
ドレイクが個人でそれを一つ所持していて、残るは14セット。
一つ当たりにどれくらいの人員が割り振られているのかはバラバラだが、ハルツがそれを一つ受け持っている。
彼の下についているのは、同じパーティーのレイン、ルーク、タリア、ジーン、それからノエル、リーゼなどの冒険者たち。
締めて34名が彼の指揮下にある。
そして、捜索中だった4月11日。
「……ルーク、ジーン、全員集合だ」
「「了解」」
ハルツは散開して被疑者を追跡中だったが、部下たちを招集してひとところに集めた。
そして、任務の終了が告げられる。
「みんな、任務終了だ。ターゲットは死亡した」
カナンから南側に向かっていた彼らは、今回特に何かすることが出来る位置に立っていなかった。
正直居てもいなくても、事態の趨勢には関係ない。
だが、手が届かなかったからと言って、参加者たちが割り切れる者たちばかりではない。
中にはレイフォード家やエリザベス個人に恩がある人間もいて、彼らは呆然と立ち尽くしたり、泣き崩れたり、とにかく、絶望した。
大公選の流れの中で彼女の黒い側面が表に噴出したことは事実で、それに関しては弁明の余地もない。
だからこそこのままでは処刑されると考えて、アラタは彼女を連れ出したのだから。
しかし、やり方はもっと別の方法があったかもしれないが、ウル帝国との融和路線を提唱した彼女についていく信奉者がそれなりの数、大公選で一時圧倒的優勢を誇っていたくらいには存在していた。
それほど、彼女の掲げた理想には価値があった。
夢があった、明るい未来があった。
張りぼての、虚飾の城だったとしても、一般大衆はそれに惹かれた。
夢を見させてもらった。
そんなもの無理だと、ウル帝国との平和路線など不可能だと、現実を見て出来る対処をするのがクレスト家なら、レイフォード家はそこから溢れた人たちの受け皿になっていたのだ。
これが、クレスト家当主シャノン・クレストがこの国を治めるにあたっての大きな課題と障害になるのだが、それはまだ先の話。
「人は脆いな」
馬上のハルツは隣を歩いているルークに話しかけた。
「歳か?」
「まあそれもあるが、国の行く末を決める大公選の結末としては、なんとも後味の悪いということだ」
「今回は特に、な」
「あぁ」
冒険者の中には乗馬経験が無い者もいて、相乗りしている騎馬がいくつかある。
急ぎでないのなら、彼らに速度を合わせる。
だから、馬の手綱を握りながら会話する余裕もあった。
「いずれにせよ、これから忙しくなるぞ」
「それはお前だけにしてくれよ。頼りにしてるぜ、リーダー」
「ほんに都合の良い男だな。まあ、冒険者業だけやっていればいい訳ではなくなるかもな」
「軍から招集があるのか?」
ハルツは首を横に振る。
「いや、まだそこまで性急な話でもない。可能性の話だ、忘れてくれ」
「そうなりゃ俺もついてってやるよ。寂しがり屋はクラーク家の家柄だからな」
茶化すルークを少しにらむと、ハルツは肩の力を抜いた。
馬の振動が体に伝わってきて、それをうまいこと受け流す。
彼くらい乗馬歴が長いと、一日中馬に乗っていてもそこまで疲れることもない。
まあ、別の理由で疲れることは多々あるのだが。
彼は後方をちらりと見て、後続がついてきているか確認する。
その中には、ノエルや姪のリーゼの姿もきちんとあった。
「家柄が移ってしまったのか。それとも元からああなのか」
「どういうこと?」
「まあ、もう少し俺の苦労が続きそうだということだ」
そう言った彼の笑みは乾いていた。
※※※※※※※※※※※※※※※
ハルツたちがドレイクからの魔道具信号を受け取る前日。
4月10日、カナン公国首都アトラ。
大公選に負け、不正の数々が明らかになったレイフォード家やその傘下の貴族家、組織は警邏機構による家宅捜索の真っ最中だった。
真っ最中にもいろいろあって、今はもう捜査員が家にやってくることは無い。
押収が必要だと判断された物品に関しては既に搬出が完了していて、残されたものに対した価値はない、とされている。
人に関しても同様で、参考人になりそうな人間は令状を出したり任意同行を求めたりして、大量の身柄を拘束している。
そこから溢れた人間は、今回の事件に対して関わっていなかったと判断された下っ端ばかり。
彼らは、機能不全に陥った屋敷に戻ることも許されず、実家や自宅で謹慎していた。
だが、ここに一部例外がある。
警邏機構、もっと言えばそこから派生した特務警邏は、もとはと言えばレイフォード家派閥寄りだ。
特務警邏局長ダスター・レイフォードがドレイクの下僕で、転じてクレスト家派閥に引き入れられていたのは驚愕ものだったが、組織全体を見ればまだ敵派閥の色は濃い。
つまり、局長の制御から外れてしまった跳ねっ返り共の中に、レイフォード家に忠誠を誓い続けている構成員がいることも予想できた。
ダスターはそう言った人間に対しても令状を用意して拘束していたが、いかんせん全部というわけにはいかない。
そうして、その手の人間が行動することで例外が生まれる。
例えば、今回の最重要参考人であるレイフォード家相談役の5人など。
彼女たちは、レイフォード家本邸、その離れの地下にある隠し部屋でいつものように集まっていた。
杜撰というか、よく隠したというか、この部屋に捜査の手は入っていない。
それは少し問題な気もするが、何事にも例外はつきものだ。
「あの女、最後の最後でしくじりおったのぉ。また一からやり直しか」
円を描くように明かりを囲んでいる彼女たちの中で、リーダー格とみられる女性が茶をすする。
彼女の名前はソフィア・フォン・レイフォード。
血縁上はエリザベス・フォン・レイフォードの祖母だ。
当然、アラタがエリーと呼ぶ異世界人との血縁関係は無い。
死亡したエリザベスの祖母であり、先代当主を息子に持つことから、この中で最も発言権が大きい。
しわだらけの手は、欠陥が浮き出ていて、青白くて、枯れ木のように細い。
少し強く握っただけで折れてしまいそうなくらいか細いのだが、ゆらゆらと火に照らされて不気味だ。
「時間に関しては気にする必要がなくなったのじゃから、まずはそれを祝おうとはならんか?」
ソフィアに向かい合っている席のカーミラ・フォン・レイフォードは、彼女に比べて随分と楽観的な性格をしているらしい。
一から、時間、気にする必要が無いとは何のことか、部外者では理解に苦しむが、彼女たちにとってこの状況はそこまで絶望的なものではない。
そんな趣旨の発言は、他の3名の同意を得る。
「然り。当初の目的は2年以上前に達成しておる。大公の座など今更じゃよ」
「それもそうか」
見た目は完全に魔女の茶会といった様子で、非常におどろおどろしい。
別に必要以上に委縮する必要なんてなくて、彼女たちも小さい子供がここを訪ねたりすれば飴の一つや二つくれて可愛がってくれるだろう。
ここに子供が来たことなんてほとんどないが。
そんな相談役たちは、エリザベスが死亡したことをすでに知っている。
まだ国内では捜索隊が必死に活動しているが、彼らをあざ笑うように情報はすり抜けていく。
それもこれも、ここ数年ある男が当家に出入りするようになってからもたらされたものなのだが。
「さてと。そろそろ留置場に戻るとするかね」
よっこらせ、とグレース・フォン・レイフォードが腰を上げた。
腰を上げても、元から曲がっているせいか杖が手放せない。
お迎えも時間の問題な気がするが、これで時間的な問題は解決したらしい。
元より自分の世代で完成させようとしていないのかもしれない。
「猟犬は手強い。ステラ、警備の強化は済んでおるな?」
「勿論じゃよ。ほとぼりが冷めるまで、留置場ほど安全な場所はそうあるまい」
ははは、と笑う彼女たちは、まだ知らない。
首都を除いた、レイフォード家と深い関係にある各都市の首長たちの居場所で何が起こっているのか。
そして、自分たちがこれからどうなるのか。
「おとなしく箱の中にいるべきだったな。尤も、私がそうなるように仕向けたわけだが」
「貴様は!? イサ——」
※※※※※※※※※※※※※※※
アトラに向かっている間、ずっと考えていた。
俺は、何の為にこの世界にやって来たのか。
正確には、何故この世界に連れてこられたのか。
魂が本当にあったとして、俺の魂が半分になったとして、じゃあ遥香の魂が小さいころに半分になったことは偶然だったのか。
正直そこに関しては重要じゃない。
それらが事実だとして、俺の魂が半分になったこと、これが偶然だったのかどうかってことが大事なんだ。
こんなに人の魂は半分に割れるものなのか?
それなら半分になった人の魂がさらに半分になる事件とかもあって、4つの世界に4つの魂みたいなことになっていてもおかしくない。
まあそれはいい。
エリーが言っていた、あの子のせいで俺がこの世界に連れてこられたって話。
正直……その可能性は高いと思う。
清水遥香改め、エリザベス・フォン・レイフォード。
その人生の中に、アラタ・チバって存在が必要だった。
だから事件が起こって、俺はこの世界に来た。
その方がしっくりくる。
俺は、遥香、エリーの人生の脇役として、この世界に来た。
じゃあ、あの子が死んで、この話にケリがついた後は?
俺は、俺の生きる意味って何だ?
神は、きっとそんなことまで考えていない。
そこまでケアしてくれるとは元から思っていない。
ただ、まだエピローグは残っている。
まだ、エリーの話は終わっちゃいない。
その最後に、俺が出ても、いいよな。
本気で潜入しようとした彼らを止める術は、カナンには無い。
あるとすれば他国、ウル帝国の検査システムが考えられるが、この田舎の小国にそんなものがあるわけがない。
八咫烏として動くのなら、【気配遮断】を使えないリャンのことを考える必要があったが、今はもう彼はいない。
彼らにとって開かれている城塞都市の門など、家の玄関と変わらない。
影のように這いより、暗闇の中に沈める。
「特殊配達課、最後の仕事だ。準備はいいな」
「勿論。ぬかるなよアラタ」
「あぁ。弔い合戦だ」
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる