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第4話 あなたと休日を
7. 落日の貴婦人
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彼女の髪の色は、落日の陽の光に似ている。良く晴れた日の夕暮れに見る、湾の向こうの水平線のように。強く、赤くて。一日の終わりをイメージするせいか、不思議と少しもの悲しくて。
イケフクロ海浜公園の湾を臨む道を歩きながら、ケイはそんなことを思った。三歩ほど先を歩くウルスラが、時折くるりと回ってこちらを向く。その度に表情を変えながら。
「プラネタリウムって初めて観たよ。あれだね、人工の星々も悪くはないね」
「大海嘯の前は、星空ってあんな感じだったの?」
「そうさ。今でもブリタニアのストーンヘンジで観測できる場所がいくつかあるよ。いつか一緒に見たいね!」
笑ったり。
「でも、次に観た映画はいま一つだったかな。後半ぽっと出のヒロイン?が目立ち過ぎだよ」
「そうかな? 勇ましくて、僕はけっこうあの子、好きだけど」
「我が騎士、減点」
眉根を寄せてむっとしたり。
「え、なんで?」
「貴婦人をエスコート中に、他の女のことなんか誉めたらダメさ」
「お話の中の人物じゃないか」
「それでもさ。まあ巨大人型兵器のアクションは見ごたえあったし、塩の大地のラストシーンはボクも嫌いじゃないけどね」
USAのハンバーガーショップで軽食の後、ケイは予定どおりウルスラとプラネタリウムを鑑賞した。45分ほどのコースの内容は、大海嘯前に見ることができた星々と星座、それにまつわる神話物語だった。その後はゲームセンターで少し時間を潰して、映画館へ。上映していたのは、大海嘯前の小説作品を映画化したもの。作品そのものは発表当時、高評価と低評価が真っ二つに割れる異色作だったらしい。ケイは原作から好きだったのもあって、けっこう楽しめた。しかし同伴の小さな貴婦人には、どうやらイマイチだったようで。反省せねば、とケイは思う。その反省を次に生かせる機会が自分にあるのか。はなはだ疑問ではあったけれど。
これで今日の、ケイにとっては生まれて初めて女性を誘ったデートはほぼ終わり。やるべきことは、残すところ一つだけ。ケイはジャケットのポケットの中身を確認すると、ウルスラがこちらを向くのを待つ。
ウルスラは踊るような足取りで公園の手すりに手をかけると、赤く染まる空を臨んでからケイの方を向いた。
「あのさ……」
言いかけて、ケイは言葉を飲み込んだ。夕陽に溶け込みそうなウルスラが、一瞬、今とは違った姿に見えたのだ。
落日の陽射しのような赤い髪はそのままに。背丈がメイハと同じかやや高いくらいに伸びて。面立ちもややほっそりとした、琥珀色の瞳の美女が目の前にいた。湾を染める夕陽を背にした彼女の様は、さながら一枚の絵画のようで。
潮風が彼女の赤い髪をゆらす。ケイが瞬くと、ローティーンのいつものウルスラの姿が重なって見える。
そのことに気づいているのかいないのか。ウルスラは真っすぐにケイの瞳を見つめ、口を開いた。
「ねえケイ、キミさえよければ、ボクと……」
* * * * *
調べろって、言う方はラクよね言うだけだから。
内心で愚痴りながらも、戦術陰陽士の占部ユミはノート端末を叩く手を止めなかった。10日ほど前から始まった、新トウキョウ湾岸都市の異変。都市と市民を界獣の脅威から守る防衛システムは、呼応者による二度の襲撃を受けている。一度目はほぼすべてが破壊され、二度目は何とか限定的な破壊で収まった。三度目もあるだろうと考えるの当然だし、些細な異変も見逃したくないというのも、まあわかる。
「だからって、何もウチがあれこれ調べる必要ないじゃない」
思わず口に出てしまう。10日前から遡って三ヶ月間の、新トウキョウ湾で観測されたD類個体の数と移動パターンを調べ、それ以前との相違点を探れ。顕著な相違が見出されなければ、更に時間を遡れ。ついでに5日前のW類の唐突な消失についても、使鬼の観測情報をまとめておいてくれ。夜勤明け間際に命じられた時には、割と本気でこの隊長に殺意が芽生えた。W類の消失についてはもう報告書を上げたじゃない。これ以上何を調べろってのよ。そんなんだから嫁き遅れんのよ。私、知ってんのよ。海浜警備大時代からの彼に浮気されて、あれこれトラブって第三管区に飛ばされてきたの。
海浜警備隊第三管区ネリマ保安部の観測室で、ユミはコーヒーに手を伸ばした。紙カップごしの温度はもう冷めきっている。膨大なデータをまとめながら、平行して使鬼による警戒網のチェックもしなければならない。観測室中央に置かれた水盤は、今のところ何の警報も発していない。眠い。ああもう兎にも角にも人手が足りない。戦術陰陽士が少なすぎるのよちくしょー。ネリマ保安部に私とアズサとイスズの三人だけってどういうことよ。そもそもこんな調査仕事、第三管区本部でとっくにやってるでしょうに。
ユミが脱線する思考を野放しにしていると、甘い香りが漂ってきた。その方向を振り仰いで見ると
「お疲れ様、占部さん」伊勢一等警士が、カップを二つ持って立っていた。「陣中見舞い、かな」
「ありがとうございます。伊勢警士」
キーを叩く手を止めて、ユミが受け取ったのはホットココアだった。口をつけると、その温かさと甘さが心地よい。
「別に期限を設けられた仕事じゃないんだろ? 適当なところで切り上げればいいのに」
「そうも言ってられないんです。私にも予定があるんで」ユミが眠気と戦いながらもこの仕事を進めるのは、それが理由だった。「変に頭に引っかかることを残して、彼に会いたくないんですよ」
海浜警備隊という仕事柄、取れる休みも不定期だ。ユミは彼と会える貴重な時間を、頭に気がかりな仕事を留め置いて過ごしたくはなかった。
「もうすぐ結納だっけ?」
「はい。来月の予定なんですが」そのことを考えると、ユミは少し思案してしまう。「有休、申請してるんですけどね……」
これまでの警備任務が継続するならまだしも、都市を脅かす異変が続いている中で、海浜警備隊員が休暇を取得できるかどうかはかなり怪しい。
「結納、結婚か……」伊勢がぼんやり視線を宙にさ迷わせる。「俺らみたいな仕事してると、なかなか大変だよな」
「そういう伊勢さんはどうなんです? あまり浮いた話は聞きませんけど」
「彼女いるように見える?」伊勢はおどけて、空いた左手をひらひらと動かした。「前線勤務について7年目さ。そんな暇ないって」
それを言ったら、私も似たようなものなんだけど……ユミは思う。まあ確かに時間のやりくりは大変で、彼も自分もマメな性分だから関係が続いて、ここまで漕ぎつけたのは確かだろう。
この二つ年上の同僚も、それなりにマメで気配りが上手いほうだ。こうして差し入れにもやってくるし。能力はあるのだろうがちょっとアレな隊長の元、第一小隊が比較的高水準で機能しているのは、見えない彼の力によるところが大きい。伊勢にその自覚はないようだけれど。トウカなどわかり易いくらい彼に懐いてる。男女のそれと言うより、大型犬がご主人について回るのに近い気もするが。
「この間の、W類と会敵しそうになった時のことなんだけどさ」伊勢は唐突に切り出した。「何か、気づいたことはない?」
「何かって……報告書に挙げたとおりで、私にも何が」
なんだか、と言いかけて、ユミは強烈な悪寒と吐き気に襲われた。せり上がってくる胃液と内容物を抑え込もうと、咄嗟に両手で口を覆う。気持ち悪さに体が屈んで縮こまり、椅子から転げ落ちかけたところを伊勢に支えられた。ユミの頭の中で、新トウキョウ湾を飛ぶ使鬼たちが一斉に啼き始める。
メヲサマシタ、メヲサマシタ、メヲサマシタ
ユミは吐き気をこらえ、涙が滲む目で観測室中央の水盤を見た。新トウキョウ湾を模した図を覆う水の中で、青い粒子が混沌の渦と化して荒れ狂っている。ものの数秒で渦は治まり、無数の青い粒子塊が湾岸に沿って顕れた。その数、百に留まらず。
「何なんだよ、これ!?」
同じものを見て、伊勢が言った。震える声音に滲むのは驚愕と、それ以上の恐怖。
青い粒子塊は、使鬼が観測したD類特種害獣の位置と数を示していた。
イケフクロ海浜公園の湾を臨む道を歩きながら、ケイはそんなことを思った。三歩ほど先を歩くウルスラが、時折くるりと回ってこちらを向く。その度に表情を変えながら。
「プラネタリウムって初めて観たよ。あれだね、人工の星々も悪くはないね」
「大海嘯の前は、星空ってあんな感じだったの?」
「そうさ。今でもブリタニアのストーンヘンジで観測できる場所がいくつかあるよ。いつか一緒に見たいね!」
笑ったり。
「でも、次に観た映画はいま一つだったかな。後半ぽっと出のヒロイン?が目立ち過ぎだよ」
「そうかな? 勇ましくて、僕はけっこうあの子、好きだけど」
「我が騎士、減点」
眉根を寄せてむっとしたり。
「え、なんで?」
「貴婦人をエスコート中に、他の女のことなんか誉めたらダメさ」
「お話の中の人物じゃないか」
「それでもさ。まあ巨大人型兵器のアクションは見ごたえあったし、塩の大地のラストシーンはボクも嫌いじゃないけどね」
USAのハンバーガーショップで軽食の後、ケイは予定どおりウルスラとプラネタリウムを鑑賞した。45分ほどのコースの内容は、大海嘯前に見ることができた星々と星座、それにまつわる神話物語だった。その後はゲームセンターで少し時間を潰して、映画館へ。上映していたのは、大海嘯前の小説作品を映画化したもの。作品そのものは発表当時、高評価と低評価が真っ二つに割れる異色作だったらしい。ケイは原作から好きだったのもあって、けっこう楽しめた。しかし同伴の小さな貴婦人には、どうやらイマイチだったようで。反省せねば、とケイは思う。その反省を次に生かせる機会が自分にあるのか。はなはだ疑問ではあったけれど。
これで今日の、ケイにとっては生まれて初めて女性を誘ったデートはほぼ終わり。やるべきことは、残すところ一つだけ。ケイはジャケットのポケットの中身を確認すると、ウルスラがこちらを向くのを待つ。
ウルスラは踊るような足取りで公園の手すりに手をかけると、赤く染まる空を臨んでからケイの方を向いた。
「あのさ……」
言いかけて、ケイは言葉を飲み込んだ。夕陽に溶け込みそうなウルスラが、一瞬、今とは違った姿に見えたのだ。
落日の陽射しのような赤い髪はそのままに。背丈がメイハと同じかやや高いくらいに伸びて。面立ちもややほっそりとした、琥珀色の瞳の美女が目の前にいた。湾を染める夕陽を背にした彼女の様は、さながら一枚の絵画のようで。
潮風が彼女の赤い髪をゆらす。ケイが瞬くと、ローティーンのいつものウルスラの姿が重なって見える。
そのことに気づいているのかいないのか。ウルスラは真っすぐにケイの瞳を見つめ、口を開いた。
「ねえケイ、キミさえよければ、ボクと……」
* * * * *
調べろって、言う方はラクよね言うだけだから。
内心で愚痴りながらも、戦術陰陽士の占部ユミはノート端末を叩く手を止めなかった。10日ほど前から始まった、新トウキョウ湾岸都市の異変。都市と市民を界獣の脅威から守る防衛システムは、呼応者による二度の襲撃を受けている。一度目はほぼすべてが破壊され、二度目は何とか限定的な破壊で収まった。三度目もあるだろうと考えるの当然だし、些細な異変も見逃したくないというのも、まあわかる。
「だからって、何もウチがあれこれ調べる必要ないじゃない」
思わず口に出てしまう。10日前から遡って三ヶ月間の、新トウキョウ湾で観測されたD類個体の数と移動パターンを調べ、それ以前との相違点を探れ。顕著な相違が見出されなければ、更に時間を遡れ。ついでに5日前のW類の唐突な消失についても、使鬼の観測情報をまとめておいてくれ。夜勤明け間際に命じられた時には、割と本気でこの隊長に殺意が芽生えた。W類の消失についてはもう報告書を上げたじゃない。これ以上何を調べろってのよ。そんなんだから嫁き遅れんのよ。私、知ってんのよ。海浜警備大時代からの彼に浮気されて、あれこれトラブって第三管区に飛ばされてきたの。
海浜警備隊第三管区ネリマ保安部の観測室で、ユミはコーヒーに手を伸ばした。紙カップごしの温度はもう冷めきっている。膨大なデータをまとめながら、平行して使鬼による警戒網のチェックもしなければならない。観測室中央に置かれた水盤は、今のところ何の警報も発していない。眠い。ああもう兎にも角にも人手が足りない。戦術陰陽士が少なすぎるのよちくしょー。ネリマ保安部に私とアズサとイスズの三人だけってどういうことよ。そもそもこんな調査仕事、第三管区本部でとっくにやってるでしょうに。
ユミが脱線する思考を野放しにしていると、甘い香りが漂ってきた。その方向を振り仰いで見ると
「お疲れ様、占部さん」伊勢一等警士が、カップを二つ持って立っていた。「陣中見舞い、かな」
「ありがとうございます。伊勢警士」
キーを叩く手を止めて、ユミが受け取ったのはホットココアだった。口をつけると、その温かさと甘さが心地よい。
「別に期限を設けられた仕事じゃないんだろ? 適当なところで切り上げればいいのに」
「そうも言ってられないんです。私にも予定があるんで」ユミが眠気と戦いながらもこの仕事を進めるのは、それが理由だった。「変に頭に引っかかることを残して、彼に会いたくないんですよ」
海浜警備隊という仕事柄、取れる休みも不定期だ。ユミは彼と会える貴重な時間を、頭に気がかりな仕事を留め置いて過ごしたくはなかった。
「もうすぐ結納だっけ?」
「はい。来月の予定なんですが」そのことを考えると、ユミは少し思案してしまう。「有休、申請してるんですけどね……」
これまでの警備任務が継続するならまだしも、都市を脅かす異変が続いている中で、海浜警備隊員が休暇を取得できるかどうかはかなり怪しい。
「結納、結婚か……」伊勢がぼんやり視線を宙にさ迷わせる。「俺らみたいな仕事してると、なかなか大変だよな」
「そういう伊勢さんはどうなんです? あまり浮いた話は聞きませんけど」
「彼女いるように見える?」伊勢はおどけて、空いた左手をひらひらと動かした。「前線勤務について7年目さ。そんな暇ないって」
それを言ったら、私も似たようなものなんだけど……ユミは思う。まあ確かに時間のやりくりは大変で、彼も自分もマメな性分だから関係が続いて、ここまで漕ぎつけたのは確かだろう。
この二つ年上の同僚も、それなりにマメで気配りが上手いほうだ。こうして差し入れにもやってくるし。能力はあるのだろうがちょっとアレな隊長の元、第一小隊が比較的高水準で機能しているのは、見えない彼の力によるところが大きい。伊勢にその自覚はないようだけれど。トウカなどわかり易いくらい彼に懐いてる。男女のそれと言うより、大型犬がご主人について回るのに近い気もするが。
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なんだか、と言いかけて、ユミは強烈な悪寒と吐き気に襲われた。せり上がってくる胃液と内容物を抑え込もうと、咄嗟に両手で口を覆う。気持ち悪さに体が屈んで縮こまり、椅子から転げ落ちかけたところを伊勢に支えられた。ユミの頭の中で、新トウキョウ湾を飛ぶ使鬼たちが一斉に啼き始める。
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ユミは吐き気をこらえ、涙が滲む目で観測室中央の水盤を見た。新トウキョウ湾を模した図を覆う水の中で、青い粒子が混沌の渦と化して荒れ狂っている。ものの数秒で渦は治まり、無数の青い粒子塊が湾岸に沿って顕れた。その数、百に留まらず。
「何なんだよ、これ!?」
同じものを見て、伊勢が言った。震える声音に滲むのは驚愕と、それ以上の恐怖。
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