悪役令嬢と神父

トハ

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処刑

第十話

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 私が大きな間違いを犯したことに気付いたのは、薬が切れた三日後だった。
(大変だわ、大変だわ、大変だわ)
 取る物も取り敢えず、ただひたすらに神殿へ急ぐ。
 ノックもせずにドアを開ければ、そこには見覚えのある人が居た。
「おや、もう愛しのボーイフレンドは帰ったんですか?」
「わ、わ、わ、わたくし、わたくし…操られていたんです!」
「操られていた?」
「鏡を…鏡を奪われて…!!このままでは、ゲームが始まってしまう!」
 私は彼の胸倉を掴み、わなわなと震えた。
「落ち着いて下さい」
 神父様は、興奮しきった私の肩に手を置き、懺悔室に案内した。

 神父様に会えたことですこし冷静さを取り戻すと、自分がどれほどみすぼらしい格好をしているかに気が付いた。
 ドレスはほとんど面積がないし、髪も情事の後のようにぼさぼさである。事実としては、情事も何も無かったが、元令嬢としては許されざる姿である。
 きゅうに居たたまれなくなってしまったが、神父様はもう私の目の前に座ってしまっていた。
 どうか、お化粧だけは崩れていませんようにと願った。
「それで、ゲームとは?」
「はい。神父様は――転生を信じますか?」
 私はすべてを彼に話した。
 私が転生者であること、ナターシャとして何度も人生を体験した事があること。
 そして先日、女王の部下アフルに薬を飲まされ、『魔法の鏡』を奪われてしまったこと。
「『魔法の鏡』は、知りたいことなら何でも教えてくれるのです」
「それを魔王――いや、女王が手にすると、どうなるのです?」
「『この世で一番美しい者』として、鏡はナターシャの名前を挙げ、女王はそれに嫉妬して、ナターシャに毒を盛るのです」
「それだけ? 世界の滅亡が早まるとかではないのですか」
「逆です。ナターシャを通りがかった隣国の王子が救い、そこから戦争になります。そして魔王は討伐され、世界は平和を取り戻し――娘の私は処刑される」
 そのとき、外から怒号がした。
「探せ! ここに逃げ込んだはずだ。魔女アデリアを捕らえろ! それから――神父クロスを!」
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