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しおりを挟む攻略は恐ろしいほどに順調だった。
……これで、Dランククランなんだもんな。
リーダーのベヨングは迷宮攻略についてかなり勉強しているようだ。
この迷宮は前回と同じく三層に分かれている。
敵が強くなる前ではきちんと休憩を挟んでいるし、途中で皆に話を聞き、疲労がないかの確認もしている。
なにより、戦闘での指示出しも見事だ。
彼は魔法系の職業であり、戦闘開始時には常に後ろから指示を出している。
仲間のステータスを強化するスキルもいくつか保有しているようで、Eランク冒険者をDランク冒険者程度まで引き上げられるようだ。
そのため、第二層に入っても、まったくといって苦戦している様子はなかった。
その時だった。仕留めたウルフから魔石とは違う石がドロップした。
あれは……スキルストーンだ!
スキルストーンの入手方法は、このようなドロップだ。
かなりの低確率なのだが、まさかこんなところで遭遇するとは。
「おっ、スキルストーンですね!」
ベヨングもどこか興奮した様子で、それに近づいて手に持った。
「……えーと、なにない【劣勢強化・速度】ですか? どんなスキルか知っている人いますか?」
ベヨングは皆に呼び掛けたが、皆首を振った。
スキルなんて千を超えるほどの量があるため、有名なスキル以外はあまり知らないことの方が多い。
しかし、俺は真っ先に反応した。
「そのスキルはHPの数値が一定以下になったときにステータスを強化するスキルだ」
「……HPの数値が、ですか。うーん、ちょっと使いにくいですね。よくご存じでしたね」
微笑んできたベヨングに首肯を返す。
「……俺はそのスキルが滅茶苦茶欲しくて探していたんだ」
「……HPの数値が一定以下……あっ、もしかしてレウニスさんのステータスだとこれ、発動するんですか?」
ベヨングも、事前に渡されたメンバー表で俺のステータスを確認していたのだろう。
すぐに反応したのはそれだけ印象に残りやすかったのかもしれない。
「ああ、そうなんだ」
「そうでしたか。それでは、この依頼が終わった後で買い取るといいですよ。迷宮内で手に入ったものに関しては通常よりも安く購入できますからね」
「……ああ、ありがとう」
「いえいえ。これは皆の権利ですからね。他に欲しい人がいた場合はジャンケンになってしまいますが……いないようですしね」
ベヨングが皆に確認すると、苦笑いとともに首を横に振っていた。
楽しみが一つできたな。
ベヨングから渡されたスキルストーンを、持っていた鞄にしまってそのままついていく。
「そういえば、オルエッタさんは占い師でしたっけ? もしかしたら、その効果かもしれませんね」
そういえば、事前にもらったメンバー表にそう書かれていたっけ。
占い師は基本的に外れ職業であるが、一応アイテムのドロップ率を上げるスキルも持っている。
……それが判明したのは、未来でのことであったが、もともと何かしらドロップ率に関係しているのではないか? とは言われていた。
そこまで積極的に調べられていないのは、占い師で獲得できるスキルが微妙なものが多いからだ。
……正しく理解していれば、かなり強い職業ではあるのだが。
「ふふ、もしもお役に立てているのなら嬉しい限りです」
ベヨングの言葉に、オルエッタは嬉しそうに笑っていた。
ただ、少し気になっていることがあった。
俺はちらと、キューダへと視線を向ける。
彼はFランク冒険者だと話していた。メンバー表のステータスを見ても、確かにステータスは低い。
しかし、だ。
彼の動きには違和感があった。
まるで、実力のない冒険者を演じるかのように。
……そんなことをする意味があるわけではない。
気のせい、で済ませたいが冒険者にとって迷宮内は危険地帯だからな。
魔物だけではなく、同じ冒険者だって敵になることはある。前回が、そうだったんだからな。
苦い思い出を払いながら、前へと進む。
迷宮内では何が起こるかわからない。油断せずに行こう。
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