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しおりを挟む「俺もどっちかっていうと、ルファンと同じ感じかな? 小遣い稼ぎ程度で、もしもステータスがめちゃくちゃ上がったら何かするかも、ってくらいだ」
無難な回答だろう。
ルファンが頷きながら柔らかく微笑んだ。
「そうなんだねぇ。まだ若いんだし、何が起こるか分からないし、二人とも頑張ってね」
ルファンの笑みには人柄の良さがよく出ている。
結婚しているといっていたが、この人の性格なら当然だろうな、と思えた。
「あー、私も早く稼げる冒険者になりたいなぁ……。冒険者って稼げる職業なのに成人の儀で大きく二分されるのって酷いよね」
ミーナが同意を求めるような調子で言ってきたので、とりあえず頷いておいた。
冒険者は稼げる、か。
実際のところ、冒険者はかなり厳しい職業だ。
あくまで稼げるのは、一部の上澄みくらいだ。
それに、稼げる仕事は死の危険とも隣り合わせ。
一瞬にして大怪我を負って一生稼げなくなる可能性もあるんだしな。
多少の怪我でも、今までと感覚がズレてしまい、そのまま引退することも出てくるらしいし。
ある程度楽に稼げるのなんて、A、Sランク級の冒険者くらいだ。
本当に少数のみに許される華やかな世界。それが冒険者だ。
B、Cランクでもそこそこ稼げる可能性はあるのだが……彼らは自分のランクと同じ難易度の迷宮に挑み続けるというリスクが伴う。
Aランクならば、例えばBランク迷宮にいけば安全だけど、B、Cランクはなかなかそうはいかない。
危険な世界であるが、それらを国が教えることは少ない。だって、迷宮から得られる素材は国の発展に欠かせないものだからだ。
死を恐れて冒険者のなりてが減ってしまえば、国にとっては大損だからな。
ルファンは別に本業を持っていて、あくまで冒険者は副業と言っているように、この世界で安全に暮らすのならそれが一番だと思う。
そもそも、冒険者である程度の実績を残した人は、だいたい迷宮に入るのをやめ、指導者や貴族の私兵になることが多い。
迷宮に入らずとも多少給料は下がったとしても安定した収入と、死との隣合わせの生活からサヨナラしたい人が多いんだと思う。
俺だって、友人の死がなければこの人生でも司書を選んでいたかもしれないしな。少なくとも、ここまでレベル上げに全振りはしていなかっただろう。
「よし、着いたな。おい、荷物持ち! さっさとしろ! もう行くぞ!」
Gランク迷宮に到着したところで、イソルベが声を荒らげた。
俺たちは少し速足になって攻略班と合流し、迷宮へとおりていった。
前を攻略班が歩き、俺たちはその後ろをついていく。
だが、先程からルファンが不安そうにちらちらと前に視線を向けている。
その理由は簡単だ。
……俺たちを守る人がいないのだ。
本来、荷物持ち班の後ろに二名くらいはつけるものなのだが……イソルベがそのような指示を出すことはない。
一応、ギルド職員も言っていたと思うんだけどな。
忘れているのだろうか?
まあ、いざとなれば俺は戦えるからいいんだけど、ルファンたちは不安を抱えたままになるだろう。
一度でもゴブリンと交戦して俺が自衛程度はできると分かれば、ルファンたちの不安も払拭してやれるかもしれない。
……一番は、攻略班の人たちが気付いてくれることなのだがイソルベにお願いするつもりはない。彼のように自尊心が高い人間に指摘をすると、面倒なことになりかねないし。
第一、後ろについた人もぶつぶつ文句言ってきそうだしな。
集団はどんどんと進んでいき、ギルドが定めた第二層区域に突入する。
途中何度かゴブリンとの交戦もあったが、攻略班がぼこぼこにしてくれたので問題なかった。
そんなことを考えながら歩いていたとき、再び魔物が出現してきた。
第一層とは違い、ゴブリンは六体も出現した。その内の二体が俺たちの背後へと現れた。
第一層はゴブリンも一~三体程度しか出てこないが、ここからは三~六体ほどで出てくる。
「い、イソルベさん! こっちにも魔物が!」
ルファンが悲痛な叫びをあげ、助けを求めたが、
「ああ!? 自分の身くらいは守れよ!」
……ええ。
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