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しおりを挟む屋敷に戻ってきた俺は、それからの自分の立場について伝えられていく。
とりあえず、家からは追放される。
追放する上で、貴族の場合は子どもに対して支度金を支払う必要があるそうだ。なんか昔色々あってそうなったらしい。 簡単に言うなら、親が子どもを無責任に追放してはいない、とするためのものだそうだ。
それらの説明と、契約書を渡された俺は、トドメとばかりに支度金と最低限の衣服が入った鞄を渡され、屋敷の前に放り出された。
俺は鞄を抱きかかえながら、屋敷の門をボケーっと眺めていた。
ここまでおおよそ三時間ほどの出来事だ。ユシー家は一刻も早く俺との縁を切りたいようだ。
ボケーと眺めていると、門の近くに兄がやってきた。
門越しではあるが俺へと近づいてきた兄のバルーダは、にやりと笑みを浮かべる。
「よお、落ちこぼれ。なんかお前ステータスはゴミで職業はカスだったんだろ? マジウケるな」
俺は兄の馬鹿にした言葉を、「はあ、そうですか……」という気分で流していた。昔は、そう言われて反抗的な態度を見せたものだが、今はさっさと夢が覚めないかということばかりを考えていた。
一言も話せていなかった俺の反応を、どうやら兄は落ち込んでいると勘違いしたらしい。
舌を出し、さらに馬鹿にしたように笑ってきた。
「いい気味だな。さっさと野垂れ死んでしまいな、カスが」
兄はそう言って、屋敷へと戻っていった。
わざわざ俺にマウントを取るためだけにここへ来たのだろうか。
そんな暇があるのなら、剣の鍛錬でもしていればいいのに。
兄があそこまで俺を憎んでいたのは、ステータスをもらう前の時点では少なくとも俺の方が優秀だったからだ。
剣や勉学で、俺は兄よりも優れていた。だから、兄は俺を憎んでいたのだろう。
俺は立ち上がり、鞄を肩に乗せて歩き出す。
それにしても、いつまで夢は続くんだろうな。
そんな思考の後、俺はため息を吐く。
……さすがに、これが夢ではないんじゃないか? という思考は出始めている。
長い。長すぎる。そして、あまりにも本物らしさがあった。
大きな焦りと驚き、そして僅かな興奮が湧き上がる。
……もしかして、これは夢じゃないのか? いやいや、夢じゃなかったらなんだよ?
俺の意識が過去の俺に憑依したとでもいうのか?
本などで読んだことがあるな……。確か、タイムリープっていうんだったか?
その本は娯楽小説のようなもので、主人公が過去に戻って最悪の未来を回避するというものだったはずだ。
本当にタイムリープしたのか?
いやいや……。
俺は、自分の最後の記憶を思い出していく。
図書館で司書の仕事をして、そして意識を失って……その後は何も覚えていない。
「おい。レウニス」
まったく思いだせないが……酒を飲んだのなら、きっとどこかで酔いつぶれて寝たはずだ。
ということは、やっぱりここは夢、なのか?
「レウニス。聞こえているのか?」
「なんだよ! 今考え中なの! 静かにしていてくれ――」
俺は振り返り、そこにいた男に目を見開く。
少し表情は険しいが、彼を美男子と認めないものはいないだろう。
「ら、ラグロフ」
彼の名を呟く。
……俺がもっとも大切だった友人の名。
もう、二度と話すことはできないと思っていた人が目の前にいた。
「なんだ……? そんな死者にでも遭遇したかのような顔は……」
ラグロフは美しい金髪を揺らし、切れ長の冷たい瞳でじっとこちらを見ていた。怪訝そうな目つきをしていた。
しかし、俺はそんなものお構いなしに感情を爆発させた。
「ラグロフ!」
俺は抱きつこうと飛びついていた。
湧き上がる喜びの感情を抑えることができなかった。
しかし、ラグロフは持ち前の身体能力と、入手したであろうステータスの力を持って、俺をつき飛ばした。
衝撃に地面を転がった俺は、何とか体を起こすと、ラグロフは腕を組みながらこちらをじっと見てきた。
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