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しおりを挟むスザクは魔王の力だ。……一時的に魔族の力を目覚めさせた変身状態で全てのステータスが跳ね上がるのだが、この状態だと見た目も魔族のようになるので人前で訓練するわけにはいかない。
セイリンは勇者の力であるが、これはこれで目立つんだよな……。もう勇者の血は絶えたとされているので、もしも勇者の力と発覚すれば……それはそれで大問題なんだよな。北の大陸に連れて行かれ、戦争に駆り出されるかもしれないし。
人間と魔族の間の争いが現在落ち着いているのは、どちらも代表的な力を持つ存在がいないからだ。
人間は勇者、魔族は魔王。
これらの力の象徴が手に入れば、手に入れた方が侵攻を開始するかもしれない。
二人の固有能力を鍛える場合は、すべての事情を知っている俺が付き添って見守るしかないよなぁ……。
あとは、他に誰か俺の情報を共有するくらいか。
そんなことを考えながら、俺は第五層に移動して恐竜系の魔物を狩っていく。
……この大陸の魔物なら、すでに俺には敵なしというくらいだ。
他の大陸に行けば、もっとレベルの高い魔物もいるのだが……その移動にかける時間がないからなぁ。
一度行けば、空間魔法で移動できるとはいえ、それまでの過程がなかなか大変だ。
とはいえ、隙をみて新しい狩場を見つけに行ったほうがいいのも確かだ。
ゲームだと街など何もない南の小さな島がレベル上げポイントだったんだよな。
ワールドマップを移動できるアイテムを手に入れた直後に降りると……大変なことになるのだが。
移動できるアイテム、か。
……この世界では、転移石があるためあまり移動技術は発達していないんだよな。
なのでワールドマップを移動するには、物語後半で仲間にできるドラゴンに乗る必要がある。
……スザクがドラゴンと話すことで仲間にできるのだが、それを狙うこともできなくはないんだよな。
ただ、ドラゴンには力を示す必要があるわけで……まあめちゃくちゃ大変だ。
主に俺が。
ドラゴンは味方にしなければならないわけで、俺が空間魔法で攻撃するわけにもいかない。
仲間にできても、体のどこかが欠損してしまったらダメだろう。
ひとまずは、この悪逆の森で狩り続けるしかないな。
ある程度戦闘を行っていった俺は、それからスザクたちと合流する。
「それじゃあ、しばらく俺が二人の面倒を見るからザンゲルとイナーシアは兵士たちの方を見てきてくれ」
「「分かりました」」
二人をさりげなくこの場から離したあとで、俺はスザクとセイリンを見る。
「……さて。二人には急いで強くなってもらう必要があるわけで……それぞれのもつ固有の力を強化していってもらいたいんだが」
「私たちの力というと……魔王の力?」
「俺は勇者の力……ってことか?」
「そうだ。それを表に出さないように、肉体を強化するためだけに使う訓練だ」
……ゲームでもやっていたからな。
第一段階の強化が、それぞれの固有の力を表に出さない程度に発動することだ。
そこまで大きな強化にはならないが、あるとないとでは難易度が一気に変わる。
ぶっちゃけ、低レベルで進行していくスザク&セイリン編ではこれがなければやっていられない。普通のストーリーでは、逆に過剰強化すぎて自ら縛らないとゲームがぬるくなるんだけど。
「魔王の力を見えないように肉体の強化に……」
そういいながら、セイリンが力を込めるとばさりと翼が広がる。
「出てるぞ翼」
「……むっ、難しいな」
「オレは……そもそも、勇者の力の使い方がよく分からないんだよな……」
……スザクはまだ勇者の力を自覚してないからな。
ただ、無意識のうちに何度か発動しているはずだ。
「スザクは……セイリンと出会った時はどんな感じだったんだ?」
「えーと、セイリン服がはだけてたな……あだ!?」
「余計なことを言うな!」
……まあセイリンは翼を使って大陸を渡ってきたからな。色々大変だったんだろう。
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