上 下
101 / 107

102

しおりを挟む

 スザクは魔王の力だ。……一時的に魔族の力を目覚めさせた変身状態で全てのステータスが跳ね上がるのだが、この状態だと見た目も魔族のようになるので人前で訓練するわけにはいかない。

 セイリンは勇者の力であるが、これはこれで目立つんだよな……。もう勇者の血は絶えたとされているので、もしも勇者の力と発覚すれば……それはそれで大問題なんだよな。北の大陸に連れて行かれ、戦争に駆り出されるかもしれないし。

 人間と魔族の間の争いが現在落ち着いているのは、どちらも代表的な力を持つ存在がいないからだ。
 人間は勇者、魔族は魔王。
 これらの力の象徴が手に入れば、手に入れた方が侵攻を開始するかもしれない。

 二人の固有能力を鍛える場合は、すべての事情を知っている俺が付き添って見守るしかないよなぁ……。
 あとは、他に誰か俺の情報を共有するくらいか。

 そんなことを考えながら、俺は第五層に移動して恐竜系の魔物を狩っていく。
 ……この大陸の魔物なら、すでに俺には敵なしというくらいだ。
 他の大陸に行けば、もっとレベルの高い魔物もいるのだが……その移動にかける時間がないからなぁ。
 一度行けば、空間魔法で移動できるとはいえ、それまでの過程がなかなか大変だ。

 とはいえ、隙をみて新しい狩場を見つけに行ったほうがいいのも確かだ。
 ゲームだと街など何もない南の小さな島がレベル上げポイントだったんだよな。
 ワールドマップを移動できるアイテムを手に入れた直後に降りると……大変なことになるのだが。

 移動できるアイテム、か。
 ……この世界では、転移石があるためあまり移動技術は発達していないんだよな。
 なのでワールドマップを移動するには、物語後半で仲間にできるドラゴンに乗る必要がある。

 ……スザクがドラゴンと話すことで仲間にできるのだが、それを狙うこともできなくはないんだよな。
 ただ、ドラゴンには力を示す必要があるわけで……まあめちゃくちゃ大変だ。
 主に俺が。

 ドラゴンは味方にしなければならないわけで、俺が空間魔法で攻撃するわけにもいかない。
 仲間にできても、体のどこかが欠損してしまったらダメだろう。
 ひとまずは、この悪逆の森で狩り続けるしかないな。

 ある程度戦闘を行っていった俺は、それからスザクたちと合流する。

「それじゃあ、しばらく俺が二人の面倒を見るからザンゲルとイナーシアは兵士たちの方を見てきてくれ」
「「分かりました」」

 二人をさりげなくこの場から離したあとで、俺はスザクとセイリンを見る。

「……さて。二人には急いで強くなってもらう必要があるわけで……それぞれのもつ固有の力を強化していってもらいたいんだが」
「私たちの力というと……魔王の力?」
「俺は勇者の力……ってことか?」
「そうだ。それを表に出さないように、肉体を強化するためだけに使う訓練だ」

 ……ゲームでもやっていたからな。
 第一段階の強化が、それぞれの固有の力を表に出さない程度に発動することだ。
 そこまで大きな強化にはならないが、あるとないとでは難易度が一気に変わる。
 ぶっちゃけ、低レベルで進行していくスザク&セイリン編ではこれがなければやっていられない。普通のストーリーでは、逆に過剰強化すぎて自ら縛らないとゲームがぬるくなるんだけど。

「魔王の力を見えないように肉体の強化に……」

 そういいながら、セイリンが力を込めるとばさりと翼が広がる。

「出てるぞ翼」
「……むっ、難しいな」
「オレは……そもそも、勇者の力の使い方がよく分からないんだよな……」

 ……スザクはまだ勇者の力を自覚してないからな。
 ただ、無意識のうちに何度か発動しているはずだ。

「スザクは……セイリンと出会った時はどんな感じだったんだ?」
「えーと、セイリン服がはだけてたな……あだ!?」
「余計なことを言うな!」

 ……まあセイリンは翼を使って大陸を渡ってきたからな。色々大変だったんだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

処理中です...