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しおりを挟む場所はゲームでも何度か訪れたことがあるので知っていた。
屋敷の地下から地下水路へと向かい、俺は魔力探知を行う。
隣ではフィーリア様が鼻を押さえながら、周囲を見ていた。
「レイスさん……臭いは大丈夫ですか?」
「臭いですが、我慢するしかありません」
「ですよね」
鼻をつまみながらフィーリア様が諦めるように肩を落とす。
俺は魔力ソナーの範囲を広げていき――
「いますね」
「……分かりますか?」
「ええ。わりと出口に近い場所にいます。急ぎましょう」
ここはダンジョンという扱いではあるが、魔物は出口付近に住み着いたボス以外は出現しない。
ただまあ、そのボスがかなり厄介なので、早めにスザクたちに合流したい。
「空間魔法で距離を詰めながら移動しますので、遅れないようについてきてください」
「ええ、分かりました」
道は覚えているので、俺は空間魔法を使い最短ルートで移動していく。
フィーリア様もそれなりのステータスをお持ちのようで、俺から遅れることなくついてきてくれる。
「見つけた」
「いましたね!」
本来よりかなりショートカットして進んだため、あっという間にスザクとセイリンの姿を発見する。
オレンジに近い赤髪の派手な髪型のスザクと水色に近いロングの髪を揺らすセイリン。
この場では、かなり目立つ二人。
セイリンの反応速度が早く、こちらに気づいている。
「おい、馬鹿弟、追手が来たぞ!」
強気な口調のセイリンに、スザクが驚いたような声をあげる。
「んな!? つーか、だからオレが兄貴だって!」
スザクとセイリンの聞き慣れた会話だ。
公式設定的には、スザクが兄でセイリンが妹なのだが、二人がそれを両親から伝えられることはなかったため、スザクもセイリンも自身が兄、姉を主張している。
……追手と誤解されているのはともかく、ようやく出会えたな。
様子を見るに、スザクは転生者……ではなさそうだな。
転生者だとしたら、俺とフィーリア様の登場にもっと焦るはずだ。
最後に一度空間魔法を展開した俺は、二人の先へと移動する。
「少し、待ってくれ」
俺が呼びかけるが、スザクは長剣を構え、セイリンはハンドガンを構える。……魔銃だ。
北の大陸では弓矢などはだんだんと排除され、魔銃が主な武器になっている。
スザクはわずかに躊躇いながら剣を構えていたが、セイリンは迷いなく俺の足を狙って射撃してきた。
「あ、あのちょっと待ってください!」
フィーリア様が叫ぶが、セイリンの敵意は向けられたままだ。
俺は小さくため息を吐きながら、攻撃を空間魔法で別空間に飛ばした。
「なんだ……今の魔法は……っ」
「よくわかんねぇけど、さっきもワープしてたし、たぶん攻撃をワープさせたんじゃないのか!?」
スザクの洞察力は、無駄に高いな。普段能天気でアホな発言の目立つ彼だが、戦闘面では優秀だ。
その能天気さも、このセイリンのルートではたくましいものだしな。
「あの! うちの貴族がご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした!」
フィーリア様は俺に隠れるような形で、声を張り上げる。
スザクとセイリンは困惑した様子で顔を見合わせる。
それから、フィーリア様は胸元のペンダントを彼らへと見せつける。
「そ、それは……なんだ!?」
「……馬鹿弟。あれ、この国の王族が持っているペンダントだろうが」
「ほえ? ってことは、もしかして……この人たち王族なのか!?」
「俺は違う……俺は、この街を管理している貴族と関係があってな。おまえたちに無実の罪を着せて、色々とやろうとしていたという情報を聞いて解放させるように指示を出したんだが……」
俺がそういうと、セイリンが驚いたように目を見開いた。
それに、スザクがセイリンを指差しながら叫んだ。
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