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しおりを挟むさらに、俺はギルド長に質問を重ねていく。
「別に俺としてはこのほうが時間短縮になるからいいと思うのだが……そういえば、貴族たちはこう言ったことはしていなかったな。フェアリー族が作ったものを使ったらダメとかそんなルールがあるのか?」
「いえ、詳しくはわかりませんが……手書きの方が温かみがあるとか……私の前のギルド長は怒られ、クビになってしまった……そうです」
なので顔を青ざめている、と。彼の脳裏には、きっと守るべき家族たちの姿が浮かんでいることだろう。
俺は別に前世では独身だったので、そこまでの覚悟というものは分からないが……とても申し訳ない気持ちになってきた。
「そうか……例えば、フェアリー族の技術を使っていて問題があるとかはないのか?」
「それは、特にはないと思います。もう長い間ギルドでは魔道具を導入していますが、特にそういった問題は聞いていません。」
「そうか。あといくつか聞きたいんだが――」
そう言ってから、俺はギルド長に質問をしていく。
そうして分かったのは、どうやら貴族たちの頭が随分と固いというこだ。
まあでも、日本にいたときも聞いたことがある話だ。
日本で例えるなら、表計算ソフトの自動計算では信用できないから、電卓で計算しろとか、その少し前は電卓は信用ならないからそろばんで計算しろとか……。
とにかく、そういった最新技術に対しての嫌悪感というか不信感のようなものがあり、貴族の家ではフェアリー族の魔道具は導入されていないらしい。
馬鹿か。そのせいで、どんだけ計算ミスしてると思ってんだ。意図的なのかただの馬鹿なのかは分からないが、ざっと見ても税に関しては計算ミスが多いんだよな。まあ、ある程度は仕方ないらしいが、それにしたってだ。
……貴族への怒りはまたあとで本人たちにぶつければいい。
それにしても、フェアリー族というのはかなり優秀だな。
ゲームでもフェアリー族をスカウトすると内政のレベルが跳ね上がっていたが、こういう理由だったのかもしれない。
ゲームでは当たり前のように日本に近しい環境を維持するための魔道具が出ていて、ゲームだしそんなもんか、くらいに考えていたが……フェアリー族のおかげか。
フェアリー族におねがいすれば、業務をかなり改善できるかもしれないな。
「とりあえず、分かった。ダンジョンについての資料、感謝する」
「いえ、お役に立てたのであれば光栄です」
ほっとした様子でギルド長が頭を下げてくる。
よほど、フェアリー族に関して根掘り葉掘り聞いたことで緊張させてしまったようだ。
とりあえず、ダンジョンについてもそうだがフェアリー族についても気になるな。
とりあえず、現在あるダンジョンについての情報を確認してみたが……まあ、どれもハズレだな。
すでに長く放置されているからか、出現する魔物、装備、スキルに関してはすべて分かっているようだ。もちろん、どれもハズレ。
さっさとすべて攻略してしまい、新しいダンジョンを出現させたいところだ。
色々な魔物と戦えるわけだし、兵士たちの訓練にも悪くないだろう。
ダンジョン攻略を本格的に開始するため、兵士たちに集まってもらった。
イナーシアがその兵士たちをまとめる隊長だ。
現在、うちには実力の飛び抜けた兵士が何名かいる。
その人たちには兵士たちを任せる部隊長をお願いしているのだが、イナーシアは第四部隊の隊長だ。
「今日は、イナーシアたちにダンジョン攻略を行ってもらう。イナーシア、メンバーの選抜は終わっているな?」
「はい。あたし含めて、十名で行う予定です」
十名。まあ、問題はないだろう。
「了解だ。冒険者ギルドにお願いして、新人冒険者を荷物持ちとして派遣してもらっている。そちらの護衛も忘れないようにな」
「はい、分かっています」
まあ、事前にお互い打ち合わせはしている。イナーシアが丁寧にそう言ったのを確認したところで、俺は彼女の部隊メンバーをみる。
イナーシアの部隊は女性の使用人のみで構成されている。
彼女を含め、やる気のある人たちが兵士兼使用人として参加しているというわけだ。
早速俺は冒険者ギルドに向かって空間魔法を使用する。
ギルドの入り口に移動すると、そこにはギルド長とともに四名の冒険者がいた。
恐らく、今日同行する予定の新人冒険者たちだ。皆、まだまだ若々しさがあり、俺を見ると緊張した面持ちになっていた。
……緊張しているように見えるのは、俺の噂がまだ払拭されきっていないからか? それか、まあ貴族と向かい合っているからだろうか?
街を救った俺ではあるが、同時に悪名高いヴァリドー家の噂もまだ完全には消えていないからな。色々ごちゃ混ぜになってしまっているし、俺の評判がよくなるには今後の領地運営次第だろう。
時間が解決することを祈るばかりだ。
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