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しおりを挟む「……その子、レイス様のペット? 喋れる魔物って、珍しい……ですよね」
「ペット、というか友人みたいなものだ」
俺はルーフの体を抱き抱える。小さいと移動のたびに大量の魔力を使うらしいからな。
魔力消費が激しいと疲労感があるのは実体験ずみなので、その負担を少しでも和らげてやるというわけだ。
ヴィリアスが興味津々と言った様子でこちらを見てくるので、彼女のほうにルーフを差し出してみる。
ヴィリアスがぎゅっとルーフを抱き抱えると、嬉しそうに頭を撫でている。
ルーフがジトリとこちらを見てくるが、まあそれでも仕事はできるだろ?
俺が視線にそんな言葉を込めてみると、ルーフは短く息を吐いたがヴィリアスに抱き抱えられていた。
それから、ヴィリアスの部屋内を案内してもらう。
一階部分が工房になっているようで、さまざまな装備と素材が置かれていた。
「ここが、ヴィリアスの作った装備で買い取ってもいいものなのか?」
「……もふもふ」
「聞いてるか?」
「え? うん、大丈夫」
ヴィリアスは完全に気が抜けているようだ。初めは俺を見て震えそうなほどに警戒していたというのに。
さすが、将来は大物の鍛冶師になるわけだ。胆力が違うな。
ルーフのもふもふを楽しんでいるヴィリアスを邪魔しないようにしながら、商品を見ていく。
「それじゃあルーフ。スキルがついているものを選んでくれ」
「ああ。分かった」
ルーフは抱きかかえられながらも仕事をこなしていく。
可愛らしい前足を使って武器を選んでいく。
……ルーフの言葉に驚いたのは、装備のほとんどにスキルがついていたことだ。
武器自体は、そこまで高級な素材を使って作っていないので買い取れる値段でもある。
ヴィリアスに聞くと、市場の数倍安い金額を言ってくる。
「……結構安くないか?」
「まだ、満足できていない武器、だったですから」
それなら別に良いんだけどな?
俺は素材たちを売り払って作った金で装備品を購入していく。
全部で三十本の武器を購入した俺は、空間魔法にそれらをしまっていく。
「……それ、めちゃくちゃ便利ですね」
じっと見ていたヴィリアスが羨ましそうに声をかけてくる。
「まあな。それより、この残った剣はどうしているんだ?」
ゲームだと作った剣などは素材に分解することはできる。
この世界ではどうなのだろうか?
「打ち直しで、素材に戻す予定。ただ、その際に少し素材が減ってしまいますから、スキルの確認ができて助かりました」
……ゲームと仕様は同じようだな。
「それならよかった。また武器を作ったら教えてくれ。買取を行いたい」
「うん、分かった。あっ、わかりました」
ヴィリアスはまだ敬語に慣れないようで思わず口を手で隠していた。
苦笑しながら、俺はルーフを預かる。
「……もふもふ」
名残惜しそうに手を伸ばしている。
さすがにここにルーフを置いていくと、イナーシアたちが心配してしまうだろう。
「屋敷に来ればいつでも会えるから、会いたかったら来るといい」
「いいのですか……?」
「一応、仕事ってことになるから武器は一本以上持ってきてくれ」
「……それは、ちょっと大変ですね」
「屋敷内なら、ルーフも本来の姿に慣れるから背中にも乗ることができるぞ?」
「毎日、持っていきます」
ヴィリアスは目に火を出すような勢いでやる気満々の顔になった。
それとは対照的に、ルーフが疲れたような顔になる。
「レイス。オレは許可を出していないが」
「三人に同年代の友達ができるかもしれないぞ?」
「いくらでも乗せてやろう」
……こっちはこっちで、三人を人質にしたらあっさりと承諾してくれたな。
そんなこんなで、どっちも上手くやってくれそうだ。
ルーフたちとともに屋敷へ戻ってくると、三人の子たちがルーフを出迎えるように待っていた。
三人の名前は、イナーシア、アリアナ、ミーシーの三人だ。
ルーフはすでに元のサイズに戻っていて、三人に体を撫でられている。
……この後、スキルの入れ替えをお願いしたかったが、まあ今はいいか。
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