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しおりを挟む「ああ。……あんまり具体的には話せないが。それらのために、俺は俺にできることをしたいんだ」
俺は努めて真剣にヴィリアスに伝えたが、それでも話している内容は具体的な言葉がない。
断られるかもしれないと思ったが、ヴィリアスはゆっくりと頷いた。
「分かりました。私の力が役に立つのであれば、協力、します」
「いいのか?」
「……うん。私は、自分で戦う力はない。でも、私の作った武器を使って、どこかで誰かが……誰かを助けてくれることに使ってほしいから、鍛冶師になりたいと思いましたから」
確かヴィリアスは、昔魔物によって両親を殺されてしまったんだよな。
だが、彼女自体はそれほど戦闘能力はなく、魔物を倒す力はない。
……その時、たまたま拾ってくれた人が亡くなった師匠であり、そこで鍛冶師という仕事に出会った、という話があったな。
「ありがとう。ただまあその……あんまり報酬は用意できないから、その月に一本とかで……お願いしたい」
俺が苦笑しながらいうと、向こうは笑顔で頷いた。
「そこは、気にしないでください。多少は安くしてあげる……あげますから」
まあ、報酬に関しては俺が獲得した素材を売るくらいしかないからな。
ひとまずは、武器庫に放置されてしまっている品々のメンテナンスから始めてもらおうか……。
ヴィリアスとの会話を終え、早速俺は武器を試したくて悪逆の森へ行く準備をしに部屋へと向かうと、その途中で付き添っていた兵士長のザンゲルが問いかけてきた。
「……レイス様が話していた混乱、というのはもしかして、ここ最近悪逆の森の魔物たちが外に出てくることが増えているのと関係しているのでしょうか?」
ザンゲルの純粋な問いかけに、何のこと? と一瞬思ってしまう。
それから、ヴィリアスとの会話でそんな表現を使ったなぁ、と思っていたが……まあいいか。
「ああ、まあそれもあるな。ここ最近、悪逆の森に入って訓練しているがどうにも不穏な空気があってな」
「……そう、なんですね。守りたい大事な人というのは……誰でしょうか?」
俺だ。まさか、ここまでザンゲルに突っ込まれるとは思っていなかったので、正直に答えるかどうか迷ってしまう。
……恥ずかしいので、俺は小さく答える。
「周りの人たち、だな」
その気持ちも、嘘ではない。
このヴァリドー家は、ゲーム本編が始まるまでの繋ぎの場所だと考えていた。
ただ、このヴァリドー家に暮らす人はもちろん、街の人たちは……そこに確かに存在する命だ。
将来、悪逆の森から魔物が出てくる回数が増えるのは確かだ。その頃には、もうヴァリドー家はなくなっているのかもしれないが、そこにいる人たちが消えるわけではない。
彼らが、生活を守れるために俺は今の俺にできる範囲で彼らを守るための種を蒔こうと思っていた。
それが、鍛冶師との交流や戦力の底上げだ。
だからまあ、周りの人たちを守りたいという気持ちも、嘘ではなかった。
悪逆の森へと移動した俺は、早速第三層へと移動する。
ここからは、魔物の種類が変わってくる。この第三層に出現するのはウルフ系の魔物だ。
ハイウルフ、ウルフビースト、ヘルバウンド。
この三種類が出現する。ハイウルフとは、以前対面したことがあるな。
あの時と違って、今度はイカサマしなくても戦えるようにはなっているはずだ。
まずは一番弱いハイウルフを探して森を移動する。
……いたいた。
ハイウルフを発見した俺は、早速短剣を握る。
今日から使うのはグラディウスとミスリルナイフの二本だ。
ミスリルナイフを握りしめると、体が軽くなるような感覚が生まれる。
何かしらのスキルがついているんだろうな。調べる手段はないが。
……さて、やるとするか。
俺は早速、ハイウルフへと先制攻撃を仕掛ける。
空間魔法を使用した一撃だ。
俺の手元とハイウルフの近くに空間魔法を展開し、短剣を振り抜く。
遠距離近接攻撃という矛盾した一撃。短剣を移動させる程度なら、魔力もそう消費しないので先制攻撃としてこれは便利なのだが、俺の魔力に反応してハイウルフは飛び退いてかわした。
……完全に不意打ちだったのだが、まさかこんなあっさりかわされるなんて。
まだ木の陰に隠れていたにも関わらず、ハイウルフは俺にもう気づいていて、突っ込んできている。
仕方ない。正面からやり合おうか。
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