上 下
3 / 107

3

しおりを挟む


 というのも、このアクセサリーたちは、レベルアップ時にステータスを通常よりも強化してくれる隠し効果がある。
 ゲームでは低レベル攻略でこの『ヴァリドール』に到達しないと、すべてのステータスをマックスまで強化することができない。

 ……まあ、この世界だとゲームのような効果があるのかは分からないということだけは、不安だが……それなら、別のゲーム知識を使ってみるだけだしな。

 俺が最強キャラになるために、なんでもやっていくつもりだ。
 装備品を持って家へと帰宅すると、ちょうど長男のライフ・ヴァリドーと鉢合わせになる。

 豪華な服に身を包んでいることから、もしかしたらどこかの街で社交界にでも参加する予定なのかもしれない。

 そんなライフは、俺を見て……露骨に嫌そうな目になる。

「ちっ、落ちこぼれの能無しじゃねぇか」
「兄さん、お久しぶりです」
「喋んなよ、クズが」

 そういって、ライフは舌打ちを残して去っていった。
 ……家族の俺への当たりは、こんな感じで強い。
 それは、俺が持って生まれた魔法が原因だ。

 俺の持つ魔法は、空間魔法だ。
 空間に干渉する魔法で、例えば異空間に物をしまったり、異空間同士をつなげて移動したりできる。

 ……これだけ聞くと、凄い魔法だと思うだろうが、燃費がとても悪い。
 少なくとも、人を移動させる様なのは……今の俺では使えないんだよな。

 第一、異空間に物をしまうというのも、この世界ではアイテムボックスという代用品があり、異空間同士をつなげて移動するというのも……転移石と呼ばれるものが各街にあるため、別にそこまで便利な代物ではない。

 家族全員が攻撃的な魔法の才能を持って生まれてきたのに、俺だけ使えない能力だったために……家族からの評価はあまりにも低い。
 親の愛情を受けることができなかったこともあり、レイスくんの性格は酷く歪んでしまったのかもしれない。

 まあ、前世の俺は上司にもっと詰められていたので、あのくらい別に気にもならない。
 ちゃんと寝れて、食事が取れるだけで今の環境は最高。というか、睡眠時間が自由に取れるだけで、お釣りが返ってくるレベル。

 異世界転生、大感謝だ。転生先も、中世ヨーロッパ風なだけで、魔法技術により細かい部分は発展している。
 エアコンのようなものもあれば、冷蔵庫のようなものもあるしな。

 前世の社畜生活より、何倍もいい。
 ひとまず……訓練開始だな。

 訓練? 何をするって?
 筋トレだ!



 装備品を手に入れてからの一日のルーティンは簡単だ。
 まずは、魔法の訓練。
 これに関してはヴァリドー家が雇っている家庭教師がいるので、その人に毎日指導をしてもらい、技術の向上を図っていく。

 魔法。こいつは使用するまでに手こずるかと思ったが、そんなことなかった。転生したときに、この体で得た経験もすべて俺に引き継がれているようで難なく使用できた。
 ゲームのレイスくんが使っていた空間魔法は、剣先だけを空間魔法に入れて使うとかだった。
 なぜ瞬間移動とかしないのだろう? と思っていたが、恐らく燃費が悪くて使えなかったんだろうな。
 ただ、その燃費に関しては毎日の訓練を続けていけばいくらでも補強できそうだ。

 主人公のハイスペックさには劣るが、この空間魔法一本でも、ステータスが整えば問題なく戦えるだろう。
 
 次に行ったのは短剣の訓練だ。
 もともとレイスくんは剣を使っていたが、俺は短剣を使うことにした。ゲームでは、特に装備品などの縛りはなかったので、問題はないだろう。

 短剣を選んだ理由は、ゲームで性能的にずば抜けているものが多かったからだ。
 家庭教師の指導が終われば、その後は自主トレだ。やりすぎは禁物ではあるが、余裕があるわけでもないからな。

 ゲームと違ってステータスが見えないので断定はできないが、この世界はあくまで現実世界。
 こういったトレーニングで体を鍛えていくことも大事だろう。
 ゲームのように、装備した瞬間に剣が使えるようにならなかったし、経験というのは自分で身につけていくしかないんだと思う。

「レイス様。間食に焼いた鶏肉を持ってきましたが……」
「ああ、そこに置いておいてくれ」

 訓練の合間合間に、鶏肉を食べてしっかりタンパク質を補給。
 筋肉をつけるために、タンパク質は必須だ。
 ……まあ、鶏の魔物の肉なので、俺の知っている鶏肉とは少し違うのかもしれないが。
 食事もしっかりと摂って、一日のおおよそのタンパク質などを脳内で計算しながら、俺は日々を過ごしていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...