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第22話
しおりを挟む私とルフェルは倒れこむようにしながら、地中から現れた魔物を睨む。 魔物はミミズのような見た目をしていて、少し不気味であった。
目はないように見えたが、こちらに誰かがいることをはっきりと認識しているようだった。
「ガァア!」
そうミミズが吠えてきたところで、ルフェルが剣を構えた。
私をかばうようにしながら、剣を向ける。ミミズの奥の方では、騎士たちが急いだ様子でこちらへと向かってきている。
「アルフェア、下がって」
「……ルフェル。私が精霊魔法を放つから、一瞬だけ時間を稼いでもらってもいい?」
「……攻撃魔法かな?」
「ええ、そうよ。その前に……『アタックプロテクション』『バリアプロテクション』」
騎士たちにもかけていた精霊魔法を使うと、ルフェルは驚いたように目を見開いた。
「凄いな……これは。まさかここまでの効果があったとはね……」
ルフェルは嬉しそうに剣を構えてから、ミミズを睨みつけていた。
私はすぐに精霊魔法の準備を開始する。
ミミズも、私に魔法を打たれたら危険だと思ったのか、こちらへと襲い掛かってきた。
けど、ルフェルがその体を切りさいた。ミミズの体に、彼の剣はすっと通った。
「ルフェル、準備できたわっ」
「ああ、わかったっ!」
すぐに彼はミミズから距離を置いた。それから私は片手をミミズに向け、フェンリルとともに魔法を放った。
……爆炎が、ミミズを飲み込んだ。
えっ――?
私の想像よりもはるかに威力の高くなった魔法が、ミミズを焼き払った。
「このくらいは、任せてよ」
フェンリルが得意げに胸を張っている。ちょ、ちょっとやりやすぎよっ。
その火を見ていた私が慌てて水魔法で消火していると、苦笑した様子でルフェルがこちらへとやってきた。
「すさまじい魔法だね」
「わ、私も想定外だったわ」
「いや……やっぱり、キミは凄いね」
ルフェルが口元を緩めながら、剣をしまう。
「……アルフェア様もルフェル様も、オレたちよりも強いんじゃないか?」
「ほ、本当ね。これ、私たち必要ないんじゃない?」
戻ってきた騎士たちも、口をそろえて言っていた。
「そ、そんなことありませんから!」
そんな人たちの言葉を否定するように私は騎士に向けて声をあげた。
そうすると、皆の間に穏やかな空気が生まれ、すぐに皆が馬車へと戻っていく。
「なんだか、魔物との交戦が多いわね」
「……そうだね。ここ最近は魔物自体の数が増えてきてしまっているんだ。その理由は分からないけれど、とりあえずここまで一人も死者を出さずに済んだのはキミのおかげだ。ありがとう」
「いえ、私にできることをしているだけよ」
それに、私がというよりはフェンリルのおかげとも思っている。
「でも、もうすぐ王都にも着くから安心してくればいいさ」
「はい、そうですね」
私は馬車が進んでいる先を見て、口元が緩んだ。
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