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第18話

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 私の魔法は凄まじいみたいだった。
 ヒールを使ってまわってみると、みんなに驚かれた。

「……こんなに回復できるなんて」
「……もしかしたらアルフェア様は聖女様なのかもしれないな」
「あれほどお美しく、それでいてこれほどの魔法を持っているなんて……とても素晴らしいお方なんだな」

 気づけば、騎士たちからは尊敬の眼差しを向けられていた。
 ……フェンリルのおかげもあるので、そこまでほめられるのはあんまりなれなかった。
 ルフェルとともに馬車へと戻ると、ルフェルが苦笑していた。

「少し頬が赤くなっているね、アルフェア」
「からかわないでくれる……?」

 ……どこいっても褒めちぎられるのだから、そうなっても仕方ないじゃない。
 私がじっとルフェルを睨むと、彼はくすくすと笑った。

「まあ、とにかく……楽しそうな笑顔が見られて良かったよ」
「ルフェル……そうね。ごめんね、気を遣わせちゃって」
「別に、キミのために気を遣うくらい、なんてことはないよ」

 そういったあと、ルフェルは少し照れ臭そうに頬をかいた。

「ルフェル、頬が少し赤いわ」
「……そんなことはないと思うがね」
「いえ、そんなことあるわ」

 先ほどの仕返しに、私はルフェルの頬の朱色を指摘してあげた。


 〇


 馬車は一つの街へと入っていく。
 公爵家の家紋があるためか、こちらに気付いた市民たちがお辞儀をしていく。
 それを窓から眺めながら街を見ていく。

「……綺麗な街」

 街の中央には、空へと真っすぐに伸びる滝があった。
 ……それは、神の恵みと呼ばれている滝だ。一体、どういう原理で水が流れているのかは分からない。
 
 とにかう、空か真っすぐにおちるその水が、この街の用水路を伝い、最後には川に流れついて、海へといきつく。

 馬車が一度止まり、ルフェルが外に出た。

「ゆっくり見ないか?」
「……はい」

 ルフェルとともに外へと出る。……間近でみる神の滝は、本当に綺麗だった。
 落ちる滝の隙間から、月明り、星々の光が見えた。……昼もきっと綺麗なのだろうけど、夜のほうが綺麗なんじゃないかな、と私は思った。

 そんな美しい水のきらめきを私が眺めていると、ルフェルが軽く微笑んだ。

「この街は、スプラッシュヒューマというんだ。あの神の滝は見たことはあった?」
「いえ……知識はありましたが、実物をみたのはこれが初めてでしたわ」
「そうか。それは良かった。当初の予定では、あの滝でも見て少しでも元気になってくれればと思って街に泊まる予定だったんだ」
「ふふ、ありがとう。まるで心が洗われるようだわ」
「それは、良かったよ。神様に感謝しないとね」

 本当に綺麗だった。それに、水の落ちる音がなんとも耳に心地よい。
 ルフェルとともにしばらくその滝を眺めてから、私たちの馬車が再び動き出した。
 まっすぐに向かった先は、屋敷だ。

「私の、ではないが……ここは公爵家の屋敷だ。ゆっくり、自由にしてくれていいからね」
「……ありがとう、ルフェル」
「それは私の言葉でもあるよ。……ようこそ、アルフェア」

 ルフェルは頬を緩め、それから私のほうに手を差し出してきた。



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