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第12話

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 私に対しての愚痴を言いだした彼らは、徐々にそれがエスカレートしていく。
 ……楽しそうね、みんな。

 もっと酷い変化をさせてあげてもいいんだけど、今は暇つぶし程度に聞き流しておいた。

 私が考えているのはロベルト家について。

 アシュート様をどうにかして助けられれば、アシュート対ケルズ王子の構図は出来上がるかもしれない。

 私はアシュート様を助けるためにまだこの城に残っていた。

 アシュート様は、私も何度かお会いしたことがある人だ。

 彼は実力主義を訴えるだけあり、差別意識のない人だった。
 ケルズ王子が私をいじめていた時は、やってきて注意をしてくれた。「それが王子としてのふるまいか」とあくまで彼はケルズ王子を思って、そう注意していたのだろう。
 
 ……まあ、ケルズ王子はうざい親戚、程度にしか思っていなかったようだけど。
 結局、アシュート様は無実の罪で牢獄にぶち込まれたのだから、それだけケルズ王子が嫌っていたのがわかる。

 私は……ケルズ王子が治めるこの国を破壊したい。
 
 つまりは――新たな王を擁立したいということ。

 そのために、アシュート様という人間は完璧な人材なのよね。

 私の中で計画している反乱を実行させるため、というだけではなく純粋な気持ちで私が助けたいと思える数少ない人だった。

 ……ただ助けるだけではダメね。
 アシュート様が外に出たときに安全に生活できる環境を整える必要がある。

 まずは彼の側近に近づき、詳しい話を聞いてみないと……。
 私だって、たくさん勉強はしたけど、内政に関してはそこまで詳しくない。
 ……ひとまず会議室をあとにした私は向かいからやってきた豚とイモムシを見つける。
 豚であるアインの背中に、ツヴァイが乗る形で移動していた。

「ツヴァイっ! 気持ち悪いから体動かさないでくれますか!?」
「う、うるさい……っ! 私だって嫌なのよ!」

 ……どうしたのだろう?
 二人はすでにショック自体からは立ち直っているようで、アインは不慣れな四足歩行で歩いている。
 二人は会議室の方へと向かっていた。……うーん、ちょっときになるから戻ろうかな?

 私が会議室に戻ると、王子とちょうど対面していた。

「お、おまえたちは……アインとツヴァイ……か?」

 王子がひきつったように笑っていた。

「ケルズ王子、ジャネット様が目を覚まされました」
「……なんだと? 分かった、いますぐ向かおう。騎士よ、オレの体を運べ」
「は、はい」

 騎士が言われた通りにケルズ王子の体を持ち上げ、歩いていく。
 ……ジャネット、目を覚ましたんだ。
 ちょっと気になるし、見に行こうかな。


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