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第10話

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 城内では人が慌ただしく移動をしていく。
 緊急会議が開かれるようだ。国の重鎮たちが集められるそうだ。

 あの神の間での会議に参加していなかった人物もいるので、私もその様子を確認しに向かうことにした。

 すたすたと歩き、会議室へと向かう。
 皆が都合よく私を誤認してくれているようで、私もその場に一緒になることができた。

 ……会議室に集められたのは――猿が8匹、カエルが1匹、人間が3人だった。
 まるで動物園ね。人間が3人だけいるというのが、飼育員みたいでちょうどよかった。

 私は用意されていた席に腰かけると、ちょうど扉が閉まり、会議が始まった。

「それではこれより、緊急会議を開く」

 ケルズ王子がそういって、ゲコ、と最後に一鳴きする。
 ……それは抑えられなかったようで、その音に人間3人が表情をひきつらせていた。
 たぶん、笑いをこらえていたのだろう。
 そのうちの一人が、すっと前にやってきて一礼をした。

「まず、王子。状況を確認したい」
「……ああ、分かっている。短く言うのならば、レベッカが国を裏切り、オレたちをこんな姿に変えたんだ」

 あら、好き勝手言ってくれるわね。
 ていうか、今ここにいるけどまったく気づけていないのによくもまあそんなことが言えるわね。
 それに対して、貴族の一人が眉間を寄せた。

「レベッカ様が……でしょうか?」

 私のことをきちんと丁寧に呼んでくれる人は、そうはいない。
 彼の顔を見ると、彼は確かロベルト家の遣いの人だった。
 ケルズ王子は、そんな彼を睨みつける。カエルなので、いつもよりは威圧感がなかった。

「ああ、そうだ。奴に様をつけるなといつも言っているだろう?」
「で、ですが……聖女にもなったのでしょう?」
「黙れ。奴をどうにかして従わせ、この屈辱の何倍にしても味わわせてやるんだ。様など不要だ」
「で、ですが……」
「おまえの主がどうなってもいいのか?」

 その言葉に、彼は顔を顰めてからこくりと頷いた。

「……はい、もうしわけございません」

 すっと彼は頭を下げる。
 ロベルト家。
 それは、先代の王の弟が当主を務めている。

 ケルズ王子の父――前の国王は、すでに亡くなっていてケルズ王子が即位するはずだったのだが、それをロベルト家が止めた。

 というのも、ケルズ王子の父が残した手紙が原因だ。
 『我が甥、アシュート・ロベルトの判断を持って、ケルズの即位を認める』、と。

 ……そんな内容だった。
 そして、アシュート・ロベルトはケルズ王子の即位を認めなかった。

 理由は……あまりにもわがままがすぎるからだ。甘やかされて育った彼では、国を任せられないと判断したアシュート・ロべルトが即位を拒否した。

 それに腹を立てたケルズ王子は、アシュート・ロベルトを牢獄へとぶち込んだ。重罪人が送り込まれる、もっとも最奥の牢獄にだ。

 ……ロベルト家。
 今のケルズ王子への不満は随分と溜まっている。少し刺激すれば、反乱がおきるんじゃないかな?

 そのリーダーとして、アシュート様が協力してくれれば――。 
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