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第8話
しおりを挟む首が地面を転がっていく。
私を斬ったのは騎士の一人だ。『スロウ』を自力で解除して、私への攻撃機会をうかがっていたようだ。
自分にかけられた悪い状態異常魔法っていうのは魔力で跳ね返すことができるから、それできっと解除したんだろうね。
なるほどなるほど。私を見下ろしたジャネットが嬉しそうに笑っていた。
「ざまあみなさい!」
「えーと、これだけですか?」
「……え?」
私が口を動かすと、ジャネットと騎士が驚愕した様子でこちらを見ていた。
私はすぐに体を動かして首をくっつける。斬りかかってきた騎士の剣を片手でとめて、デコピンで吹き飛ばした。
「な、なんで……なんで死なないのよ!!」
「あの、聖女の基礎基本も知らないんですか?」
「え? ……ま、まさか――」
「聖女は寿命以外では死にませんよ?」
私がにこりと微笑んでいうと、ジャネットは狂ったように笑いだした。
……壊れてしまったようだ。
私は毎日、三人と王子にいじめられていても耐えて来たのに、このくらいで壊れるなんて弱すぎる。
さっきの騎士の一撃がよっぽど効いたみたいね
ていうか、私だって騎士の攻撃が近づいているのはとっくに気づいていた。
でも、私があえてああしたのは、ジャネットに絶望を与えるため。
ちょっと過激すぎたかな?
小さくため息を吐いてから、私は改めてジャネットを見た。
このまま壊れたように笑い続けるのは可哀想だ。
彼女の心を治してあげないと。私、聖女だからね!
私はすぐに聖女としての癒しの力を使い、ジャネットの壊れた心を癒してあげた。
壊れたように笑っていた彼女は、それからすぐに復活した。
「……何を、したの! 何をしたの!」
「私からのプレゼントです。心は限界までいっても壊れないように、そして癒しをあげました。そしてもう一つ、最後のプレゼントです」
「やめて! やめて! もう何もいらない!」
彼女が発狂した様子で叫ぶが、もちろん私はやめるつもりなんてない。
ジャネットの体にそっと触れて、その体に魔法をかけた。
『カーズ:変化 Gの姿』。
そう願い、ジャネットに魔法を使用すると、手のひらサイズの大きなGとなった。
「ツヴァイと同じくらいの大きさにしてあげましたから、四人でこれからも仲良く暮らしてくださいね」
私はにこりと微笑んでから、神の間を見る。
そこには、未だ、スロウにかかったままの貴族たちがいた。
――ここにいる者たちは皆私をいじめていた者たちだ。
まあ、でも、だいぶすっきりしたし、私も温情でせめて人型にしてあげようか。
「……『カーズ:変化』」
私はそういって、この場にいた全員をある姿へと変えてやった。
そうそれは――猿だ。
全員の『スロウ』を解除すると、それはもう阿鼻叫喚だった。皆が悲鳴をあげ、涙を流す。
……まるで動物園ね。ロクな動物はいないけれど。
逃げる私を追いかけてこれるような余裕を持った人はいなかった。
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