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第1話
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この国には、聖女と呼ばれる存在がいる。
聖女というのは、とても強い魔法の力を持っている者だ。
ただし、この聖女になれるのは、この世界で一人だけ。一度聖女になった者が死ぬことで、新たな聖女が生まれるということになる。
この聖女へのなり方は簡単で、一つ前の聖女が死んだ次の日に、神の石像へと祈ることだ。
ただし……誰でも祈ればいいということではない。
聖女候補と呼ばれる人間だけが、聖女になるための権利を持っている。
聖女候補は、全部で4人いる。
そして私も……その候補の一人だった。
◆
「ほら、レベッカ! さっさと掃除しておきなさいよ!」
そういって、聖女候補の一人であるジャネットが私に向かってモップを投げつけてきた。他の聖女候補も笑うようにしてこちらにそれぞれの掃除道具を投げてくる。
「ああ! この辺はあんまり汚れていませんわね!」
「これでは、掃除のしがいがありませんね!」
そういって、彼女たちは唾を吐きかける。
そして、それは私の頬にもあたった。
「あら、すみません! 部屋と同じくらい汚れていたので、気づきませんでしたわ!」
「本当ですわね! そんなところにいるのが悪いんですよ?」
「ああ、汚れてしまいましたね、今綺麗にしてあげますから」
そういって彼女は、汚れた雑巾で私の頬を拭ってきた。
私は心を殺して、それに耐える。
……私は他の聖女候補にいじめられていた。
理由は簡単。
私以外はみんな貴族なのに、私だけ平民……それもスラム出身だったからだ。
私は必死に笑顔を浮かべ、ジャネットたちが去るのを見送ってから、部屋の掃除を始めた。
聖女候補は皆、神のお告げによる鍛錬を行っていく。神のお告げは、今の聖女が聞くことができるらしい。
いま私たちがしているこういった掃除はもちろん、魔法や剣術の修行などが主なものだ。
ジャネットたちは私に押し付けていく。
……私は心が折れそうだったけど、必死にやるしかない。
――自分が聖女に選ばれると信じて。
落ち込みそうな自分を必死に元気づけ、掃除を開始する。私が今掃除しているのは、神殿にある神の間だ。
そこには美しい神の石像が置かれている。……現在の聖女が死んだ日。
この石像に祈りをささげることで、新たな聖女が誕生するのだ。
うん、今日も綺麗にできたわ!
部屋の掃除を終えた私が、掃除用具を片付けにいくと……ケルズ王子を見つけた。
ケルズ王子の周りには、私に掃除を押し付けた3人の聖女候補がいた。
……私以外の四人は、王子と婚約関係にある。
というのも聖女が決まったとき、一人は正妻となり残りは側室となるのだ。……これは聖女の立場が王よりもえらいため、今のうちから囲っておこうというものらしい。
……私だけ、婚約関係にないのは、やはりスラム出身だからだ。
「おはようございます、ケルズ王子」
それでも、相手は王子だ。
私が挨拶をすると、ケルズ王子は顔をゆがめた。
「おい、近づくな。汚いから」
ケルズ王子の言葉に合わせるように、ジャネットが笑う。
「ほんと、そうよね。自分の立場わきまえなさいよね」
「ほんとよ!」
「あなたのようなスラムの人間が、万が一にも聖女に選ばれることなんてないんだから!」
「神様は正当な後継者として、必ずやジャネット様を選ぶでしょう! 聖女には、血筋だって大事なんですから!」
ひとしきり馬鹿にしていった彼らは、満足したのか去っていく。
悔しい。……でも、私は首を振る。
きっと神様は見てくれていると信じて、私は今日も与えられた仕事をこなしていくんだ。
私がこの城に来て十年。
私が十五歳になってから一ヵ月が過ぎた日――聖女が死んだ。
……いよいよ、新しい聖女が決まる日だ。
____________________________________________________
あとがき
愛想がないと王子に罵られた大聖女は、婚約破棄、国外追放される。 ~何もしていないと思われていた大聖女の私がいなくなったことで、国は崩壊寸前~
新作書きました! 気になる方は作者名をクリックして読んでくれたら嬉しいです!
聖女というのは、とても強い魔法の力を持っている者だ。
ただし、この聖女になれるのは、この世界で一人だけ。一度聖女になった者が死ぬことで、新たな聖女が生まれるということになる。
この聖女へのなり方は簡単で、一つ前の聖女が死んだ次の日に、神の石像へと祈ることだ。
ただし……誰でも祈ればいいということではない。
聖女候補と呼ばれる人間だけが、聖女になるための権利を持っている。
聖女候補は、全部で4人いる。
そして私も……その候補の一人だった。
◆
「ほら、レベッカ! さっさと掃除しておきなさいよ!」
そういって、聖女候補の一人であるジャネットが私に向かってモップを投げつけてきた。他の聖女候補も笑うようにしてこちらにそれぞれの掃除道具を投げてくる。
「ああ! この辺はあんまり汚れていませんわね!」
「これでは、掃除のしがいがありませんね!」
そういって、彼女たちは唾を吐きかける。
そして、それは私の頬にもあたった。
「あら、すみません! 部屋と同じくらい汚れていたので、気づきませんでしたわ!」
「本当ですわね! そんなところにいるのが悪いんですよ?」
「ああ、汚れてしまいましたね、今綺麗にしてあげますから」
そういって彼女は、汚れた雑巾で私の頬を拭ってきた。
私は心を殺して、それに耐える。
……私は他の聖女候補にいじめられていた。
理由は簡単。
私以外はみんな貴族なのに、私だけ平民……それもスラム出身だったからだ。
私は必死に笑顔を浮かべ、ジャネットたちが去るのを見送ってから、部屋の掃除を始めた。
聖女候補は皆、神のお告げによる鍛錬を行っていく。神のお告げは、今の聖女が聞くことができるらしい。
いま私たちがしているこういった掃除はもちろん、魔法や剣術の修行などが主なものだ。
ジャネットたちは私に押し付けていく。
……私は心が折れそうだったけど、必死にやるしかない。
――自分が聖女に選ばれると信じて。
落ち込みそうな自分を必死に元気づけ、掃除を開始する。私が今掃除しているのは、神殿にある神の間だ。
そこには美しい神の石像が置かれている。……現在の聖女が死んだ日。
この石像に祈りをささげることで、新たな聖女が誕生するのだ。
うん、今日も綺麗にできたわ!
部屋の掃除を終えた私が、掃除用具を片付けにいくと……ケルズ王子を見つけた。
ケルズ王子の周りには、私に掃除を押し付けた3人の聖女候補がいた。
……私以外の四人は、王子と婚約関係にある。
というのも聖女が決まったとき、一人は正妻となり残りは側室となるのだ。……これは聖女の立場が王よりもえらいため、今のうちから囲っておこうというものらしい。
……私だけ、婚約関係にないのは、やはりスラム出身だからだ。
「おはようございます、ケルズ王子」
それでも、相手は王子だ。
私が挨拶をすると、ケルズ王子は顔をゆがめた。
「おい、近づくな。汚いから」
ケルズ王子の言葉に合わせるように、ジャネットが笑う。
「ほんと、そうよね。自分の立場わきまえなさいよね」
「ほんとよ!」
「あなたのようなスラムの人間が、万が一にも聖女に選ばれることなんてないんだから!」
「神様は正当な後継者として、必ずやジャネット様を選ぶでしょう! 聖女には、血筋だって大事なんですから!」
ひとしきり馬鹿にしていった彼らは、満足したのか去っていく。
悔しい。……でも、私は首を振る。
きっと神様は見てくれていると信じて、私は今日も与えられた仕事をこなしていくんだ。
私がこの城に来て十年。
私が十五歳になってから一ヵ月が過ぎた日――聖女が死んだ。
……いよいよ、新しい聖女が決まる日だ。
____________________________________________________
あとがき
愛想がないと王子に罵られた大聖女は、婚約破棄、国外追放される。 ~何もしていないと思われていた大聖女の私がいなくなったことで、国は崩壊寸前~
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