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第57話
しおりを挟む魔王ゾルドラの死。それは、このゾルドラ王国にとっては、大きな転機となるだろう。
まあ、ゾルドラが死んだからといって、国が崩れるようなことはない。
もともと、この国には王家の人間がいて、ゾルドラの命令を受けながら国を任されていたんだしな。
ゾルドラがいなくなったとはいえ、別にこれまで通りに国を管理していけばいいだろう。
ただ、問題は残っている魔族たちだ。
魔王ゾルドラが死んだとしても、ゾルドラが管理していた憤怒の魔王軍はまだ残っている。
……問題があるとすれば、そこだ。
今後、魔族たちが人間界にやってきて、報復のような行為にでないとも限らない。
ゲームでは憤怒の魔王を倒したあとは別の魔王と同盟を結び、この国も魔王の庇護下に置いてもらっていた。
ゲームでもそうしていたので、次に俺が取るべき行動は勇者の代行として、魔王と交渉を行うことだ。
人間に友好的な怠惰の国か色欲の国に行き、支援を求める必要がある。
ゲームでもルートは二つあったが、どっちの魔王も魅力的ではある。怠惰の魔王はダウナー系のロリ魔王、色欲の魔王はスタイル抜群でビキニのような際どい格好をしている。
俺は後者の方が興味ある。
『うわ、下心丸出しですね……』
女神様の声が頭の中で響く。うっさい。
こちとら望んでいなかった世界に転生させられたのだから、好きなキャラクターにくらいは会っておきたい。
聖地巡礼のようなものだ。
そういうわけで、俺はその内容を色々と誤魔化しつつ、父に話をしたのだが、父は迷っている様子だった。
「……それは、理解した。確かに、魔王の庇護下にいた方が良いというのは分かっているし、今言っていた色欲の国の魔王にかんしては、確かに人間に対して友好的なのは知っているが……」
それでも、父は渋っている。いや、父がというよりは俺の立場が原因だ。
勇者は魔王を倒したあと、王都に行ったことを報告し、次の旅先を決めるのだが、特にしぶられることはなかった。
それは、勇者が特別な存在だからだ。
俺は……違う。魔王を倒したといはえ、あくまで一貴族の息子だからな。
勇者ほど、説得力のある立場ではないのだ。
「……とにかく、魔王ゾルドラを倒したことは事実だ。このことは国にも報告をしてはいるが、その後の動きに関しては……どうなるか分からない。まずは、宮廷の判断を仰ぐ形になる」
「分かりました」
「いずれ、王都から招聘されるだろう。その時までは……ゆっくり休んでいなさい」
父はにこりと微笑み、俺は頷いて返した。
……王都、か。
俺としてはそういった細かいイベントに関してはすっ飛ばして、目的だけを達成していきたいのだが、そういうわけにはいかないようだ。
ため息を吐きながら部屋を出ると、廊下にはサーシャとアイフィの姿があった。
「どうでしたか?」
サーシャの問いかけに、俺は小さく頷いた。
「とりあえず、王都から返事がくるまでは待機だそうだ」
「そうですか」
「王都でしたら、わたくしも何度か行ったことがありますわ。ご案内しますわね」
「……ん? あれ、サーシャもアイフィもついてくるのか?」
サーシャはともかく、アイフィまで?
俺が首を傾げていると、二人はこくりと頷いた。
「はい。私はあなたの剣として、あなたとともにいると決めましたから」
「わたくしも似たようなものですわ。もっと力をつけて、あなたの負担を少しでも減らしてみせますわね」
まあ、いいか……。
二人は確実に強くなっているわけだし、この調子で成長すれば面倒な雑魚の相手をしなくて済むだろう。
とにかく、妹が勇者として覚醒する前に、なんとしても物語を終わらせないとな。
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