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第51話
しおりを挟むブリューナスとの戦いを終えた俺は、早々にあの場所から立ち去った。
……あのままあの場にいても、色々と面倒なことになりそうだったからな。
俺の今日の目的はすべて達成できていたので、屋敷へと向かう。
屋敷へ戻る道中、空が夕暮れの赤に染まっていくのを眺めつつ、俺は今日の出来事を考えていた。
……魔族の討伐。
やはり、原作通り、頭のおかしいほどの条件こそある負けイベントだろうと突破できる難易度のようだ。
今の俺の能力なら一撃で仕留められるかとも思っていたのだが、さすが負けイベというとkろおだ。
【ファイナルクエスト】のダメージ量でもあそこまで耐えてくるとは思わなかったな。
そんなことを考えていると、
『……ブリューナスがいなくなってどうなっちゃうんですか?』
不満そうに女神様が問いかけてきた。
……ゲーム本編において、ブリューナスはそれなりの役割をもらっている。
だから、ここで消えてしまえば今後様々な場所に影響が出てくることは予想できる。
『代行のやつが出てくるだけだろ。まあ、ブリューナスよりは能力も下がるだろうけどな』
それだけでも、俺としては喜ばしい状況だ。
原作開始時点の憤怒の魔王軍の能力が高いのは、ブリューナスがいたというのも大きい。
あいつがいなくなることで、魔王軍の力は確実に削がれる。
ナンバースリーについては、原作でも語られていないので、憤怒の魔王軍の最高戦力は魔王とブリューナスくらいだろう。
屋敷に戻ってくると、何やらバタバタとしていた。
兵士や使用人たちが走り回り、街のことについてあれこれと話をしている。
……ま、詳しい話はアイフィがするだろう。
ゴルシュも屋敷を離れているようだし、俺は自分の部屋で大人しくしていよう。
しばらくして、廊下を走る音が聞こえてきた。
それはまっすぐにこちらへと向かってきていて、バンッと扉が開かれた。
姿を見せたのは、ゴルシュだ。その隣には、サーシャもいた。
「る、ルーベスト! 少し聞きたいことがある! 書斎に来てもらえるか?」
「ええ、いいですよ」
興奮した様子のゴルシュたちとともに部屋を出て、書斎へと移動する。
そこにはアイフィもいて、こちらを見るとうっとりとした表情を向けてくる。
あれ、なんだかちょっとぞくりと背筋に嫌な気配を感じたが、きっと気のせいだろう。
アイフィは少し疲れているようにも見えたが、今は車椅子に座り、俺の一挙手一投足を見逃さないとこちらをみてくる。
役者が揃ったとばかりに、ゴルシュがこちらを見て問いかけてきた。
「……街に、ブリューナスを含めた魔族三名が現れたというのは知っているな?」
「ええ、はい」
「……それと戦った仮面の男とは……ルーベストのことで間違いないな?」
「はい」
すでに俺の能力を知っているゴルシュたちに隠すつもりはない。
俺が答えると、サーシャはじろりとこちらを見てきた。その表情は、落ち込んでいるように見える。
……自由行動をしていた時に魔族と戦ったことに対して、何か思うところがあるのかもしれない。
そちらはあとでフォローするとして、今はアイフィだ。
彼女はうっとりとして、熱の帯びた表情でこちらを見てくる。
「そうか……まあ、色々あったが……ひとまず、何もなくてよかった。アイフィも助けられたらしいしな」
「それは気にしないでください。問題はこのあとです。ブリューナスたちが人間界から戻らないとなれば、魔族たちも気にするかもしれません」
「……そう、だな」
俺としては、経験値がやってくる、くらいにしか思っていないがこの街の人たちからしたらそれらは脅威となりえるだろう。
……さっきのブリューナスから得られた経験値もかなりうまかったんだよな。
負けイベ扱いだから経験値も適当に設定されていたんだろう。
「ひとまず、しばらくは俺も警戒して街から離れるようなことはしないようにしたいと思っています。そちらも、警戒を怠らないよう、お願いします」
「……分かった」
俺の言葉にゴルシュは頷き、話し合いはそれで終了した。
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