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第47話

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「ああ、済まない。三人ともダンジョンから戻ってきたばかりで疲れているだろう。こちらのことは私たちで対応するから、気にせず休んでいてくれ」

 俺たちは今すぐに何かできるわけではないため、それ以上は何も言わず、彼の書斎を後にした。
 廊下を歩きながら、俺はアイフィの顔を見た。彼女は何か考え込んでいるようだった。

「ルーベストさん。明日はわたくしは少し街を見ようと思いましたので、訓練には不参加でお願いしますわ……」

 恐らく、先ほどの件と関係しているんだろうな。
 ゲーム本編でも、アイフィに対する街の人々の信頼は高かった。
 彼女が街の人々の不安を和らげるために動こうとしているんだろうし、それを止めるつもりはない。

「わかった。それじゃあ、サーシャも明日は休憩にしよう」
「私は、大丈夫ですよ?」

 サーシャの声は露骨に元気がなくなったが、俺はそれを和らげるために微笑んだ。

「今日までずっと俺についてて休みもほとんどなかっただろ? 俺もリアナへのお土産を買わないといけないし、明日は一日自由に休んでくれ」
「……私にとっては、ルーベスト様の近くにいることこそが、私の休息なのですが」

 サーシャが呟くように言った。
 その言葉には彼女の深い思いが込められていて……重い重い重い。
 相変わらずのサーシャは寂しそうにこちらを見てきたが、俺は断固として距離をとる。

「とにかく、明日は一日休みにする。いいな?」
「……分かりました」

 サーシャは「くぅーん…………」という感じで承諾した。その姿に少し胸が痛んだが、これも彼女のためだと自分に言い聞かせた。
 ずっと一緒だとサーシャにも負担になると思うんだけどなぁ。


 翌朝、俺たちは昨日話していた通り、自由行動だ。
 俺が朝練をしている頃には、すでにアイフィは出発の準備を済ませ、屋敷の兵士たちと共に街へと繰り出していた。

 街の人々と交流し、魔族への恐怖を少しでも和らげたいんだろうな。
 原作でも街の人たちからかなり信頼されていたのは、こういった日頃の行動のおかげなんだろう。

 サーシャも街を見て回ると言っていたが、とても寂しそうな後ろ姿だた。
 その背中を見ていると声をかけたくなってしまったが、俺はぐっとこらえた。

 とりあえず俺は、朝の訓練でレベルを一つ上げた後、街へと繰り出した。
 もちろん、リアナへのお土産を買うためだ。

 アイフィと比べたら街へ出る理由が弱いかもしれないが、そんなことは関係ない。
 リアナへのお土産を何にしようかと考えながら歩いていると、市民たちの声が聞こえてきた。

「今朝、アイフィ様が街に来られてたのを知っているか?」
「ああ……相変わらず美しい姿だったな」
「それに、足が魔族にやられても、今もリハビリを続けているって話していたしな……」
「俺たちが、魔族なんかにビビっちゃいられないよな……!」

 アイフィはうまくやっているようだな。
 彼女のリハビリが成功すれば、今後は車椅子なしで動いても変な疑いをもたれることはないだろう。

 それが市民への最大の希望になる。魔族たちはそれを快く思わないかもしれないが、そういう魔族たちは俺が排除するから問題ない。

 それにしても、街の市場は活気に満ちており、色とりどりの品々が並んでいる。リアナが喜ぶ顔を思い浮かべながら、お土産を選んでいく。
 まずはお菓子。そして、その他、リアナが好きになりそうなぬいぐるみなども購入していく。

 ……ふっふっふっ。これだけあれば、きっとリアナもお兄ちゃんのこと大好きと言ってくれるだろう。

 ニヤニヤとしながら街を歩いていた時だった。
 何やら街の中が騒がしい。
 そちらへと視線を向けると、悲鳴のような声を上げながらこちらへと駆けてくる人の姿があった。
 逃げてきた人たちは血相を変えた表情をしており、俺は一番近くにいた男性へ声をかける。

「……どうしたんだ?」
「あ、あっちに魔族が現れたらしいんだよ! お、おまえも標的にされる前に逃げた方がいいぞ!」

 男性の言葉に、俺は思わず眉根を寄せた。

 逃げる市民たちに逆らうよう、俺は魔族が現れたという方へと歩き出す。

 街を駆け抜けるパニックに満ちた叫び声と慌ただしい足音が耳に響く中、俺は冷静に状況を把握していく。
 ……馬鹿でかい魔力がいくつか感じられる。正確な位置までは分からないが、大体の場所はわかる。

 主人公が、「何か、異様な力を感じる……!」みたいに語っていたことがあったが、これがそれなのかましれない。
 ただ、俺はその魔力に向かって、歩いていく。

 ……これは、チャンス、だからな。

 どこかで魔族を倒せるというのを証明する必要があったのだが、なかなかそのチャンスはなかった。
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