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第43話

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 ゲーム会社が同じで、ゲームシステムの基本的な部分が同じだから、スキルポイントも共通なものとして処理されてしまっている、か。
 色々と、いいことを聞けたな。

 ……あれ? ってことは、俺よりもチートでは?
 い、いやまあ。俺の場合は初期能力や成長のすべてが【ファイナルクエスト】基準だからな。
 生まれた瞬間からの戦闘民族なわけで、その部分では負けていないはずだ。
 早速、試してみようか。
 俺は戦闘を終えたばかりのアイフィへと近づく。

「アイフィは、他に使えるようになったら嬉しい属性魔法はあるか?」
「……そうですわね。火属性魔法は土には相性がいいですけれど、水には弱いですし……その水を使ってくる相手を押し除けられるような風属性魔法、かしら?」
「氷魔法とかはどうだ? 火と氷、使えたらかっこよくないか?」
「かっこいいですね……!」

 乗ってきたのはサーシャだ。目をキラキラと輝かせている。
 アイフィは首を傾げている。どうやら、この魅力が分からないようだ。

「特には……。それに氷魔法というのは水魔法のようなものでしたわよね? わたくし、水魔法への適性はありませんのよ」
「いや……もしかしたら俺の治療を受けたから、使えるようになってるかもしれないんだ。……試しに、アイスショットの魔法を使いたい、って思ってくれないか?」

 俺がスキルを取得するときはそうやっている。
 アイフィは相当な疑問を抱きながらも、こくりと頷いた。

「分かりましたわ……アイスショット…………はい思ってみましたわよ?」
「それじゃあ。普段魔法を使うように、アイスショットを使ってみてくれないか?」
「……はい。アイスショット……きゃ!?」

 アイフィがそういった次の瞬間。
 氷の矢が放たれ、近くの壁へと当たった。
 ……彼女が先ほど放ったフレイムロードと同じくらいの威力があり、アイフィは驚いたように自分の体を見ていた。

「え!?」

 ……明らかに、威力が数倍は高いんだから、そりゃあビビるだろうな。

「……こ、これ……結構MP使いますわね」
「ああ、悪い。消費量も多いから気をつけてくれ」
「……は、はい」
 
 【ファイナルクエスト】と【ドラゴニックファンタジー】では、MPの消費量もまるで違うので、まだ成長しきっていないアイフィでは辛いだろう。

「とりあえず、今後はアイスショットの練習もしてもらいたいけど……これも足と同じで内密にな」
「……そうですわよね。明らかに、異常な力ですものね」
「今後、さらに氷魔法を強化していきたいから、新しい火魔法を習得しようともしないでくれ」
「分かりましたわ。……これも、あなたのおかげですの?」
「そう、みたいなんだよな。俺の回復魔法が異常すぎて、色々とおかしくなってるみたいだ。……嫌だったか?」
「……いえ、そんなことありませんわ。むしろ……あなたに与えていただいたこの力、大事にしたいと思いますわ」

 うっとりとした様子でそう呟く彼女は、どうやら氷魔法の魅力に気づいてくれたようだな。
 ……たぶん、まだスキルポイントはあるし、もうちょっとMPに余裕が出てきたら次の魔法も覚えさせようか。
 俺とアイフィが話していると、後ろで待機していたサーシャがちょっと頬を膨らませた後、片手を上げてぴょんぴょん跳ねた。

「わ、私も何か覚えられるのでしょうか?」
「サーシャは、何か使ってみたいものはあるか?」
「ま、魔法とか、使ってみたいです! 雷とか、かっこいいですし!」

 ……俺と属性被るからできれば別のにしたい。
 ていうか、そもそもアイフィはMPがほとんどない脳筋ファイターだ。
 彼女に下手な魔法を覚えさせても、魔法攻撃力も低いので無意味だ。

「魔法は、サーシャには合ってないと思うんだ」
「……そ、そうでしょうか……」
「それなら、斬撃を飛ばすのはどうだ?」
「ざ、斬撃……? なんですかその魅力ある言葉は……っ」

 とても、目を輝かせている。
 サーシャの基本的な部分は小学生男子と考えてもいいのかもしれない。
 とりあえず、そっちに期待したようなのでスキルを獲得していってもらう。

 剣士系スキルをいくつかとって行ってもらい、斬撃を飛ばして攻撃するためのスキルを、獲得してもらう。
 ステータスの補正も多少増えただろうし、これでよりサーシャが近接戦闘で強くなっただろう。

「それじゃあ、さっき言った通り疾風斬だ。分かったな?」
「はい……疾風斬!」

 そう言ってサーシャは剣を振り抜いた。
 生まれた風の刃が、迷宮の壁を破壊する。
 楽しくなってきたのか、サーシャはカッコつけるようにしながら何度も叫んで、MPが切れた。

 ……まあ、こっちも訓練していけば強くなるだろう。

「あと、剛強術も肉体の強化に役立つからうまく使ってみてくれ」
「わ、分かりました……」

 MP切れの経験が少ないサーシャは慣れない様子で剣を支えに歩いていく。
 とりあえず、こんなところか。

 サーシャはスキルをほぼ使わない、ステータスでごり押しするキャラクターだったから、これで一気にできることが増えたな。

 今後の成長次第では、さらに戦えるようになるだろうし、楽しみだ。
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