36 / 58
第36話
しおりを挟む
俺のカタナもそうだが、【ファイナルクエスト】だと店売りされているレベルの武器だ。
正直言って、魔石を消費してまで作るほど価値あるものではないのだが、この世界ではやはり最強武器だ。
出来上がったロングソードをみたサーシャの目の色が変わる。
「ま、まさか……それが私の剣、でしょうか?」
「ああ、そうだ。使ってみるか?」
彼女は二刀流ということなので、もう一つ作成し、二本の剣を渡す。
これで、集めていた魔石はなくなってしまったので、また集める必要がある。
さすがに今持っている剣まで含めると邪魔になるため、一度サーシャが持っていた剣は俺が受け取って、アイテムボックスにしまっておいた。
腰に差したサーシャは、それから両手に剣をもち、何度か振っていく。
空気を切る音が耳に届く。
すっと、溶け込むようなその音を聞いていると、サーシャの口元が緩んでいく。
「……凄い剣ですね。これほどのものを頂いてもいいのですか?」
「ああ。これから魔族との戦いも増えていくだろうし、サーシャにも力になって欲しいからな」
それに、順調にサーシャが強化されれば、魔族の露払いなどをお願いできるようになるかもしれない。
倒し切れなくても、魔族を怯ませるくらいの力を手にしてくれれば、俺としても任せられることが増えていく。
「……もちろんです。一度は死んだこの身です。すべてをルーベスト様に捧げるつもりでございます」
彼女は丁寧に腰を折り曲げてきたが、そこまで畏まらなくてもいいんだけどな。
試し切りを行うため、ウィンドオークを探して歩き出す。
しばらくして、見つけた。周囲を警戒するように歩いていたウィンドオークを見て、サーシャが今にも飛び出したそうにウズウズしていた。
……それでも、しっかりと待ってくれている。とはいえ、俺が一言でも言えば飛び出しそうだ。
「それじゃあ、今回の戦闘は任せていいか?」
「はい。任せてください!」
言い切る前に、すでに飛び出している。
穿たれた矢のように走り出したサーシャに、ウィンドオークは驚いた様子で振り返る。
……先制攻撃成功、といった感じか。遅れてウィンドオークの周囲に他の魔物たちも出現したが、先に出ていたウィンドオークへサーシャの剣が振り下ろされる。
一刀両断。一撃だ。
……やっぱり、【ファイナルクエスト】の装備品はずば抜けた性能をしているな。
周りに出現したオークたちが遅れて対応を開始するが、もとものサーシャの動きが速く、彼女の体を捉えるような攻撃はなかった。
舞うようにかわしたサーシャは、反撃の斬撃でウィンドオークたちを殲滅し、魔石を回収しこちらへと戻ってきた。
俺に手渡して喜び、胸を張る姿は無邪気さそのもので可愛らしい。
「やりました、ルーベスト様」
「見事な戦いだったな。剣は問題ないか?」
「はい。問題どころか切れ味が良すぎて、逆に困ってしまうほどですね」
……確かにそうだな。
俺のカタナだけでは判断できなかったが、どうやら武器の持つ攻撃力がそのまま切れ味ということで間違いないようだ。
他にも作れる可能性のある武器はいくつかある。例えば、どちらのゲームにもドラゴン、という名称の魔物がいて、ドラゴンの牙、ドラゴンの爪と素材名も同じものがある。
もし、同一のアイテムとして認識されれば、そういった武器も作れるかも知れない。
ただまあ、ドラゴン自体が珍しい魔物だからそう簡単に素材を集めることはできないだろう。
でも、そういった共通の素材をどこかで手に入れ、新しい武器を作ってみるのもありかもしれない。
迷宮での戦闘を終えた俺は、屋敷へと戻る。まだ夕食まで時間があったので、サーシャに稽古をつけてもらう。
お互い、カタナとロングソードを使った実戦形式だ。
万が一、大怪我を負っても最悪俺の回復魔法もあるしな。
稽古はそれほどしていなかったが、やはりサーシャの動きはどんどん良くなっている。
魔法禁止のルールでやっているのが、それだと何度か追い詰められてしまったので、やはり実戦での訓練をもっと積まないといけないだろう。
俺たちは夕食をいただくために食堂へと向かうと、車椅子に乗ったままのアイフィが出迎えてくれた。
「ルーベスト様とサーシャさんの戦い、見ていましたわ。とても、お強いのですね」
どうやら、どこかからか観戦していたようだ。屋敷の庭を貸してもらっていたので、廊下でも歩けばすぐにでも見下ろせるのだから当然か。
別に隠すつもりもなかったし、アイフィの賞賛を素直に受け取っておいた。
「まだまだ、もっと強くならないといけないんだ」
「そうですの? 今でも、わたくしからはとても計り知れない力でしたけれど」
そういって首を傾げるアイフィに、俺はぽつりと漏らした。
「……俺は、憤怒の魔王を倒して、この国を平和にしたいんだ」
アイフィにだけ聞こえるように、そっとそう伝える。
彼女は驚いたように目を丸くしている。
正直言って、魔石を消費してまで作るほど価値あるものではないのだが、この世界ではやはり最強武器だ。
出来上がったロングソードをみたサーシャの目の色が変わる。
「ま、まさか……それが私の剣、でしょうか?」
「ああ、そうだ。使ってみるか?」
彼女は二刀流ということなので、もう一つ作成し、二本の剣を渡す。
これで、集めていた魔石はなくなってしまったので、また集める必要がある。
さすがに今持っている剣まで含めると邪魔になるため、一度サーシャが持っていた剣は俺が受け取って、アイテムボックスにしまっておいた。
腰に差したサーシャは、それから両手に剣をもち、何度か振っていく。
空気を切る音が耳に届く。
すっと、溶け込むようなその音を聞いていると、サーシャの口元が緩んでいく。
「……凄い剣ですね。これほどのものを頂いてもいいのですか?」
「ああ。これから魔族との戦いも増えていくだろうし、サーシャにも力になって欲しいからな」
それに、順調にサーシャが強化されれば、魔族の露払いなどをお願いできるようになるかもしれない。
倒し切れなくても、魔族を怯ませるくらいの力を手にしてくれれば、俺としても任せられることが増えていく。
「……もちろんです。一度は死んだこの身です。すべてをルーベスト様に捧げるつもりでございます」
彼女は丁寧に腰を折り曲げてきたが、そこまで畏まらなくてもいいんだけどな。
試し切りを行うため、ウィンドオークを探して歩き出す。
しばらくして、見つけた。周囲を警戒するように歩いていたウィンドオークを見て、サーシャが今にも飛び出したそうにウズウズしていた。
……それでも、しっかりと待ってくれている。とはいえ、俺が一言でも言えば飛び出しそうだ。
「それじゃあ、今回の戦闘は任せていいか?」
「はい。任せてください!」
言い切る前に、すでに飛び出している。
穿たれた矢のように走り出したサーシャに、ウィンドオークは驚いた様子で振り返る。
……先制攻撃成功、といった感じか。遅れてウィンドオークの周囲に他の魔物たちも出現したが、先に出ていたウィンドオークへサーシャの剣が振り下ろされる。
一刀両断。一撃だ。
……やっぱり、【ファイナルクエスト】の装備品はずば抜けた性能をしているな。
周りに出現したオークたちが遅れて対応を開始するが、もとものサーシャの動きが速く、彼女の体を捉えるような攻撃はなかった。
舞うようにかわしたサーシャは、反撃の斬撃でウィンドオークたちを殲滅し、魔石を回収しこちらへと戻ってきた。
俺に手渡して喜び、胸を張る姿は無邪気さそのもので可愛らしい。
「やりました、ルーベスト様」
「見事な戦いだったな。剣は問題ないか?」
「はい。問題どころか切れ味が良すぎて、逆に困ってしまうほどですね」
……確かにそうだな。
俺のカタナだけでは判断できなかったが、どうやら武器の持つ攻撃力がそのまま切れ味ということで間違いないようだ。
他にも作れる可能性のある武器はいくつかある。例えば、どちらのゲームにもドラゴン、という名称の魔物がいて、ドラゴンの牙、ドラゴンの爪と素材名も同じものがある。
もし、同一のアイテムとして認識されれば、そういった武器も作れるかも知れない。
ただまあ、ドラゴン自体が珍しい魔物だからそう簡単に素材を集めることはできないだろう。
でも、そういった共通の素材をどこかで手に入れ、新しい武器を作ってみるのもありかもしれない。
迷宮での戦闘を終えた俺は、屋敷へと戻る。まだ夕食まで時間があったので、サーシャに稽古をつけてもらう。
お互い、カタナとロングソードを使った実戦形式だ。
万が一、大怪我を負っても最悪俺の回復魔法もあるしな。
稽古はそれほどしていなかったが、やはりサーシャの動きはどんどん良くなっている。
魔法禁止のルールでやっているのが、それだと何度か追い詰められてしまったので、やはり実戦での訓練をもっと積まないといけないだろう。
俺たちは夕食をいただくために食堂へと向かうと、車椅子に乗ったままのアイフィが出迎えてくれた。
「ルーベスト様とサーシャさんの戦い、見ていましたわ。とても、お強いのですね」
どうやら、どこかからか観戦していたようだ。屋敷の庭を貸してもらっていたので、廊下でも歩けばすぐにでも見下ろせるのだから当然か。
別に隠すつもりもなかったし、アイフィの賞賛を素直に受け取っておいた。
「まだまだ、もっと強くならないといけないんだ」
「そうですの? 今でも、わたくしからはとても計り知れない力でしたけれど」
そういって首を傾げるアイフィに、俺はぽつりと漏らした。
「……俺は、憤怒の魔王を倒して、この国を平和にしたいんだ」
アイフィにだけ聞こえるように、そっとそう伝える。
彼女は驚いたように目を丸くしている。
179
お気に入りに追加
480
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる