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第20話

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 まだ魔石は残っているので、すべて注ぎこんでカタナを強化する。
 この武器を最大まで強化した場合、攻撃力のプラスが500くらいだったな。
 ちなみに、こっちの世界で最強の装備が150+だ。

 最強装備が勇者の剣であり、魔王相手には2倍のダメージが出せるので、単純計算で300と換算してもこのカタナの方が強いというわけだ。
 まだまだ、序盤武器なんだけどな……。
 最終武器なんて作れたら、そこらの兵士に渡しても魔王を討伐できるようになるかもしれん。

 アイテムボックスから取り出したカタナを軽く振るう。
 ゲームみたいに装備したからって強くなるわけではない。ここからは、この武器を使っての訓練も必要になってくる。
 普通のロングソードもあったが、俺はカタナにした。
 なぜか? かっこいいから。

 テンション上がってきたので、早速迷宮へ試し切りに向かう。

 最近、ゴブリンの迷宮では難易度が簡単すぎるので、別の迷宮に行っている。
 ゴーレムが出現する迷宮だ。難易度は、恐らくゴブリン迷宮の倍くらいだ。

 もちろん、魔法で一撃で倒せるし、剣で一撃だった。
 ただし、剣の攻撃は斬る、ではなく殴り飛ばすという感じだった。
 果たして、カタナになったら変わるのだろうか?

 早速、迷宮内を歩いていくとゴーレムを見つけた。
 近づくと、さらにもう一体が出現して、威嚇するように両手をあげてくる。

 試し切りには、申し分ない相手だ。
 すぐに俺は地面を蹴り、まだ攻撃態勢に入っていないゴーレムの体を切り裂いた。

 ……おお!?
 余裕で切れるな。
 それこそ、紙でも斬るかのようにぬるっと言った。

 感動のあまり、もう一体のゴーレムに攻撃をされる。
 ここは、ダメージを頂いておこう。対してHPは削られないが、あとでヒールでの回復の足しになる。

 それに、防御のステータスを上げるための基礎訓練にもなるからな。
 もう一体のゴーレムに刀を振り下ろすと、ゴーレムは受けようとしたのか腕を交差させたが、あっさりと両断した。

 ……うん。まったく問題ないな。
 
 とりあえず切れ味は確認できたので、次の戦闘へと向かう。
 発見したゴーレムへと近づいていく。
 こちらに気づいたゴーレムが威嚇するように睨んできたので、俺は刀を鞘へと戻し、腰にあてる。

 居合……の見様見真似。
 これがやってみたくて、カタナを作ったんだ。
 俺がじっとゴーレムを見ると、こちらへとゆっくりと迫ってきた。

 そいつが俺の間合いに入った瞬間、刀を思い切り振り抜いた。
 居合切り――! ステータスが高いからか、脳内でやりたいと思った行動を実践することは容易だった。
 すぱっと、ゴーレムの腕を切り落とし、俺は鞘へと刀をしまった。

 うん、刀にして正解だ。魔石集めの作業として淡々としていた戦闘が少し楽しくなってきたな。

 結構満足していたが、ゲームの武器だからかそこまで剣と使い方は変わらず使えている。
 まあ、あまりにも使いにくかったら武器を変えるつもりであったが、これならメイン武器にしてもいいだろう。

 刀での戦闘を繰り返していき、だんだんと実戦での動きを覚えようとしていたのだが、いまいち、手応えが感じられない。
 ……というのも、俺が強すぎる。
 一生懸命技術的な練習や、戦闘勘を鍛えようと思っても、どれも一撃で仕留められてしまうのでなかなか練習にならない。

『なんか……それだけ聞くと嫌なやつみたいですね』
『実際、ステータスに差がありすぎるんだから、仕方なくないか?』

 女神様が苦笑を漏らしていたが、誰のせいでこんなことになっているのかと。
 俺のすべてのステータスが、恐らくそこらの人よりかなり高いんだよな。
 そして、それは毎日必死に鍛えている騎士たちよりもずっと上だ。

 屋敷にいる騎士たちと模擬戦を行っていたのだが、俺より動きのいい人というのはいなかった。
 だから、ついついステータスに物を言わせた戦闘を行いがちになってしまう。
 具体的に言うと、騎士たちに連続で攻撃を仕掛けられたときに思い切り木刀を振って弾きとばすような攻撃だ。

 ……ダメだ、とは分かっているのだが、打てる手を打たないというのもそれはそれでなぁ。
 自分のステータスに制限をかけるように動いても、制限をかけた状態での動きを覚えるだけだろう。

 このままでは、魔王級と戦う前に実戦でのひりひり感というか、緊張感が得られないかもしれない。
 ……まあ、仕方ない。ぶっつけ本番で鍛えていくしかないだろう。
 そんなことをぼんやりと考えていたある日。

 訓練場に父がやってきた。
 視線を向けると、父だけではなく一人の女性もいた。

 ……あれ?
 見覚えのある面影だ。隻眼、隻腕、そして赤色の髪。髪は肩の辺りまで伸びたボブのようなスタイル彼女は、原作でも見たことがあるキャラクターだ。
 俺は騎士たちとの訓練を一時中断すると、こちらへとやってきた父が笑みを浮かべた。

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