上 下
37 / 37

第37話

しおりを挟む


「オレ……ずっと一緒にやってきたお前たちが急にいなくなってさ。……そんなわけない、どこかで冒険者として活動しているんだって……頑張っていればまたどこかの試練迷宮で合流して、またお互いバカなこと言い合ってさ……そんな日々がまた来るんだって思ってたんだよ。なのに、どんなに頑張っても、お前たちはいなくてさ……この世界からお前たちだけが消えたみたいで……」

 ……ボルドルの原動力は色々あったのかもしれないが、俺たちとの再会を望み、彼は冒険者として成長していったのだろう。
 ボルドルは、二十歳までは活動していなかった。全盛期が早く終わったのだとおもっていたが、もしかしたら……緊張の糸が切れてしまったのかもしれない。

「……ギルド職員になって、色々ミスってさ。オレ、バカで要領悪かったからな。仕方ないんだけどさ……それで、ここのギルドに飛ばされたと思ったら、お前がいるんだ……。活動履歴を調べたら、冒険者を途中でやめて日本に戻っていたとかなんとか書いてあってさ……頭きて」

 それが、普段の俺への態度なんだろう。
 確かに、彼の視点から見てみれば、一言もなくいきなり冒険者をやめたんだ。
 ……それまで、一緒に励まし合っていたのはなんだったんだ、って話だろう。

「でも……そんな風に、逃げるやつだったら……今みたいに本気でアイフィに向き合うことなんて、できないと思うんだよ。さっきの言葉だって、オレ、絶対反発したと思うのに……でも、全部すとんって頭に入ってきたんだよ。……なにより、逃げるようなやつじゃ。絶対にアイフィに気に入られるわけがない……」
「……」
「オレは今だって……お前たちが逃げたなんて思っちゃいないんだよ。何が、あったんだよ?」

 ボルドルの問いかけに対して、俺は体を翻す。

「……悪いな」

 その話を、今さらしたって仕方ないだろう。
 ボルドルに話さないのは……別に信頼していないからではない。
 むしろ、彼のことは信頼している。

 ……昔から、口が軽いからな。

 別に、それを責めるつもりではない。裏表がないのが、彼の美徳でもあると思っている。

 だからこそ、ボルドルまでも巻き込みたくはないので、俺は彼には話さない。
 ……また、そういう意味ではボルドルを孤独にさせてしまっているのかもしれないが、他に手段は思いつかない。

 昔の友人だからこそ……余計にな。

 俺は急いで待ち合わせ場所へと向かうと、アイフィがすでに待っていた。
 日本に繋がるゲート前にいたアイフィは、こちらに気づくと少し頬を膨らませていた。

「遅いですよー。放置プレイ、好きなんですか?」

 アイフィは、相変わらずだな。
 そのおかげもあって、少しだけ陰鬱な気持ちも晴れていった。

「……悪い悪い。それで、焼肉でいいんだな?」
「はい。今日は頑張ったんですから、たくさん注文しますね」
「りょ、了解だ」

 彼女とともに日本へと向かいながら、俺はそういえば……色々あっていうタイミングを逃していたな、と思っていた言葉を口にする。

「アイフィ、そういえば、まだ言ってなかったな?」
「……愛の告白ですか?」
「違う馬鹿」
「……それなら、性癖の開示でしょうか?」

 なぜちょっと考えたあとの問いがそれなんだよ。
 俺は小さく息を吐いてから、彼女に笑顔を向ける。

「今日から、アイフィは正式にGランク冒険者だ。ようこそ、冒険者の世界へ」

 俺がそういうと、アイフィは一度きょとんと目を丸くしてから、笑顔とともに頷いた。

「……はい。Sランク冒険者まで、よろしくお願いしますね」
「ああ、もちろんだ」

 ……ボルドルにあそこまでいった以上。
 俺も情けない姿は見せられない。
 アイフィの本気に、俺も本気で向き合っていかなければいけないだろう。
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

A・l・m
2024.05.28 A・l・m

……何故、担当にする。

道場主みたいな地上指導員でもさせればいいのに……。

……魔人バレ? 魔人バレか?!

解除
A・l・m
2024.05.25 A・l・m

どうなんだろう?
こういうのって逆サイド入れた方が良いんだろうか……。

あほ元気と思わせて激重だったりしそうで見ない方が良いのかも知れない……。

解除
A・l・m
2024.05.19 A・l・m

才能はあるだろうけど、あっという間に出来るようになるよりは、無理やり吸収して吸い出してもらうのがふつうによいのではなかろうか。

解除

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ゲームの悪役に転生した俺が、影の英雄ムーブを楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった

木嶋隆太
ファンタジー
ブラック企業の社畜だった俺は気が付けば異世界に転生していた。それも大好きだったゲームの悪役に……。このままでは将来主人公に殺されるという破滅の未来を迎えてしまうため、全力で強くなるための行動を開始する。ゲーム内知識を活かしながら、とにかく、筋トレ! 領民に嫌われたままも嫌なので、優しく! そんなことをしていると、俺の評価がどんどん上がっていっていき、気づけばどこに行っても褒められるような人間へとなっていた。そして、正体隠してあちこちで魔物を狩っていたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまい……おや? 様子がおかしいぞ?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。