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第40話
しおりを挟む「そうだ。ここで待っている人たちも皆同じ依頼を受けているのか?」
「そうだよ。……ていうか、君が連れているエルフの人、なんだか可愛い人たちだね。いい奴隷だね」
そういえば、この世界の人たちは奴隷をすぐに判断できるんだったか。
「まあ、そうだな。大切な仲間だよ」
リアたちは、前以上に人目を集めることが増えている。
この前の休日なんかは、街中で声をかけられることもあった、とリアは話していたしな。
確かに、最近の三人は前よりも可愛くなっているように見える。
食生活が改善し、シャンプーやリンス、化粧水とかを使っているからかもしれない?
こうしてみると、なんだかリアたちの周りだけ輝いて見えるな。
……その光に巻き込まれると、ご主人様の俺が見えなくなりそうだ。
リアたちが褒められるのは、ご主人様として誇らしい気分ではあるんだけど。
そんなことを考えながら、リアとともに待っていると、何やら皆が興奮した様子で話を始める。
「今回参加してくれるCランク冒険者がいるって聞いていたけど、まじなんだな……!」
「Cランク冒険者のジェニスさんだよな?」
「これなら、今回の依頼は簡単そうだなぁ」
Cランク冒険者も参加するんだな。
それって……ギルドは思っているよりも事態を重く受け止めているのか?
それとも、たまたま彼が暇だったから受けてくれたのだろうか?
事前に聞いていた話では、今回参加する冒険者は
E、Dランクが多くいるとは聞いていたが。
視線を向けると190センチくらいの大柄な男性がいた。結構渋い顔をしていて、大剣を背負っている。
鎧と盾をみるに、パーティーのタンク的な立場の人なのだろうか?
Cランク冒険者、といってもランクとしてみれば一つしか違わないのだが、皆の反応は随分と違う。
「CとDってそんなに違うものなのか?」
声を抑えるようにしててリアに問いかけると、小さく頷いた。
「まあね。Cランクに上がるには、昇格試験を受ける必要があるって言ったでしょ? つまりまあ、ギルドにちゃんと実力が認められる必要があるってことなのよ」
「……だから、あんなに注目されているんだな」
「Dランクまではすんなり上がれても、Cランクにはなかなか上がれない人が多くいるのよ」
冒険者になった人たちの多くは、最高ランクを目指したいと思っているのかもしれないが、その最初の関門を突破したのがCランク冒険者ということか。
ただ、俺としてはそんな人がこの依頼に参加しているというのが少し不安だ。
Cランク冒険者が、せめて一人はいないとダメなような依頼なのだろうか?
所詮はゴブリンだろう? と思っていたが、もしかしたら、進化しているゴブリンの個体が結構いるとかじゃないだろうな……。
さらに少しして、参加予定のメンバー全員が集まった。
Cランク冒険者1名、Dランク冒険者10名、Eランク冒険者14名だそうだ。
……思っていたよりも、大人数だ。
あれ? 俺の想像よりも大変な依頼なのでは?
「今回の最高ランクはオレだから……リーダーはオレが務める。それで、サブリーダーは……誰に任せるか……」
基本的に、こういった場合のリーダーはランクの高い人が受けるようだ。
そして、そのリーダーがサブリーダーを指名する、というようだ。
リーダーとかそういうのはあまり好きじゃないので、俺たちは視線を外すようにしていたのだが、ジェニスがちらと俺の方を見てくる。
そして、微笑を浮かべた。
「君、どうだ? やらないか?」
おい、目を逸らしてんだろ。
向こうでやりたがっているDランクの人がいるんだからそっちにお願いしてくれればいいのに。
ただ、リアたちはどこか期待するような視線を向けてくる。
……こ、断りにくい。情けないご主人様の姿は見せたくない。
「……えーと、基本はジェニスが色々やってくれるのか?」
「ああ、そうだ。万が一がなければ何もすることはないから気にしないでくれ」
そういうフラグたてるのやめてもらっていいか?
「分かった。少しくらい報酬は増えるのか?」
「ああ。気持ち程度だがな。それじゃあ、お願いする。名前は?」
「シドーだ」
「分かった。それじゃあ、オレ……ジェニスがリーダーで、シドーがサブリーダー。そういうわけで、出発だ」
ジェニスが改めて全員にそういって、俺たちは歩き出した。
とりあえず、南門近くにある馬車へと向かうらしい。
やりたがっていたDランク冒険者ががっくりと肩を落としていた。
それを見ながら、俺はジェニスの隣に並んで声をかけた。
「……俺より、向こうでやりたがっている奴がいたんだけど、見えなかったのか?」
「見えていたから、君にしたんだ」
「もしかして……意地悪なのか?」
「そうじゃなくてな。……あいつ。オレに憧れているように見えたんだよ」
……確かに、そうだな。
ジェニスのことを知っていたのか、あるいはCランク冒険者だからかは分からないが、かなり熱量のある表情をしていた。
「そういうやつをサブリーダーにすると、何かオレがおかしな判断をしたとしても指摘してくれない可能性があるだろ? オレがリーダーを務めるときは、自分の意見に合わなそうな奴にするんだ」
にこりと微笑んできたが、それってつまり俺と息は合わないってことだろ?
確かに、彼のような堂々としたタイプは苦手なので、ジェニスの言うことは正しいかもしれない。
「思ったことがあれば、すぐにいってくれ」
とん、と大きな手で背中を叩かれ、俺はとりあえず頷いておいた。
ただまあ、確かにジェニスの言うことは正しいな。
俺は歩くペースを変え、スタスタとリアの横に並ぶ。
「……というわけで、リアも何かあったら奴隷とか関係なく言ってくれよ」
「あたしは普通に言うから大丈夫よ」
「お、お手柔らかにな?」
「それは知らないわよー」
……あんまり心に突き刺さることを言われると、それはそれでメンタルに響くんだよな。
リアは揶揄うように笑っていた。
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