上 下
29 / 50

第29話

しおりを挟む

 もうハンドガンの反動は気にならないくらい体も強くなっていたが、ショットガンを余裕で扱えるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 念の為、ポンプアクションを行い、弾の装填を行う。
 ウッドマンへ構えながら近づいたが、ウッドマンの体が霧のようなものを出し、体の先のほうから消滅していった。

 間違いなく、倒した……でいいだろう。
 ふうと息を吐いていると、三人がこちらにやってきて笑顔を浮かべた。

「やったわねシドー様。かなりの威力だったわね」
「その分、音も反動も凄かったけどな。ちょっと肩痛いし」

 反動で肩にぶつかってしまった。
 俺の使い方を見ていたナーフィが片手を差し出してきたので、ショットガンを渡す。
 彼女はすっと構え、すぐに放つ。反動などは特に気にせず、ポンプアクションを合わせ、連射していく。
 もう、コツを掴んだようだ。

「ん」
「……おう。次からはナーフィが使ってくれ」
「あたしも、ちょっと試してみたいわね」
「……わ、私も使えるように練習しますね」
「……ああ、分かった」

 これもまた、人数分用意する必要があるかもしれない。
 ……い、いやそこはまた俺の魔力に余裕が出てからでもいいか。

 とりあえず、ショットガンを召喚するかについてはまた後で考えるとして、ウッドマンがドロップしたアイテムを確認する。

「魔石、少し大きいな」

 いくつかのウッドマンの素材とともに大きめの魔石がドロップしていた。
 回収を手伝ってくれたナーフィにお礼を伝えると、頭を撫でるように向けてきたので軽く撫でる。

「ありがとな、いつも」
「ん」

 ナーフィは満足気に頷き、リアが口を開いた。

「魔石が大きいのは、ボスモンスターのものだからね。これなら、銀貨一枚くらいで買い取ってもらえるかもしれないわ」
「それなら、ひたすらボスモンスターを狩ってたほうが効率いいな。再出現するんだよな?」

 ショットガン一発ぶち込めば、おそらく体力の大半は削れるだろう。下手をすれば一発かもしれない。
 それなら、スモールウッドマンよりこっちと戦っていた方がいいだろう。
 闇雲に探すよりは断然そのほうがお得だ、とか呑気に考えていると、リアが考えるように顎に手をやる。

「再出現は時間経過でするけど……確かに、そうね。普通、こんな簡単にはいかないんだけど……ショットガンのおかげもあってすっごい楽に攻略できそうね」
「……ショットガン、召喚して良かったな」
「ボスモンスターって結構強くて、色々なアイテムを駆使して戦うのが普通で、倒し切っても銀貨一枚分くらいの消耗しちゃうのが普通だけど……消耗品も全部召喚できちゃうし……これが最高率なのは確かだと思うわ」

 なるほどな。確かにゲームとかでもそうだが、ボス戦となればある程度アイテムを使うこともあるだろう。
 もちろん、レベルに余裕があればそんなことはないのだが、ギリギリならば回復アイテムをたくさん使って乗り切るものだ。

 そういった諸経費がかからないのが、この召喚魔法の何よりも強い部分かもしれない。

「じゃあ、あちこち歩き回るのも疲れるし、ここで待機してウッドマン狩りでもしていくか」
「シドー様がそれでいいって言うなら、あたし達も同意見よ。ボスモンスターもすぐに復活するわけじゃないから……どっちがいいかは分からないけどね」
「それなら、ストップウォッチで測ってみるか」

 スマホの時計を取り出し、そこからストップウォッチのボタンを押す。
 倒してからすでに時間が経ってしまっているので、多少の誤差はあるが。 

「……スマホで時間も測れるの?」
「まあな。どのぐらいの時間で復活するか……それまで何か食べてるか?」

 俺がそう言うと、三人はぴくりとエルフの耳を少し動かした。
 ……わかりやすいやつらだ。

「そ、そうね。ボス戦もあるんだし……またおやつにしましょうか」
「それじゃあ、適当におやつ出していくぞ」

 手当たり次第に、思いつくお菓子を召喚していく。
 チョコ、クッキーなどなど。俺はポテチが食べたかったので、コンソメ味のポテチを召喚して食べ始めた。
 すぐにナーフィに取られてしまい、皆でお菓子タイムを楽しみつつ、ボスが復活するのを待っていった。

 ウッドマンが再出現したのは、それから約十分後だ。
 ストップウォッチでの表示は九分くらいだったが、記録を始めたのが遅かったからな。

 おおよそ、十分だ。
 俺たちがボス階層を歩いていると、ウッドマンが姿を見せた。

「ん」

 すぐに動き出したのは、ナーフィだ。彼女の手にはショットガンが握られている。
 ナーフィがそれまで使っていたハンドガンは、アンナが二丁拳銃となっている。
 彼女は慣れた手つきで両手のハンドガンを連射していく。

 ……亜人の身体能力があるからだろうか。彼女はまったく上体がブレることなく、すべてをウッドマンにぶつけていく。
 そうなれば、ウッドマンの注意はアンナへと集まる。
 攻撃を仕掛けてくるが、アンナはバックステップで距離を取る。

 ナーフィほどではないが、アンナも動きのキレはいい。
 しなやかな細い体というのもあって、動きやすいんだろう。

 ……ていうか、ナーフィはあんな大きな胸を揺らしながらで痛くはないのだろうか?
 この世界にも下着という概念はあるようで、俺が適当に突っ込んでおいた下着類を彼女らは身につけていた。

 ……ナーフィとリアのブラジャーは結構大きかったんだよな。おそらく一番はナーフィだろう。
 いかん。変なことを考えている場合ではない。
 そのナーフィにも、攻撃が向けられるが、リアとアンナの援護もあってナーフィには当たらない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

ハズレスキル《創造》と《操作》を持つ俺はくそみたいな理由で殺されかけたので復讐します〜元家族と金髪三人衆よ!フルボッコにしてやる!~

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
 ハルドン伯爵家の三男として生まれた俺、カインは千万人に一人と言われている二つのスキルを持って生まれてきた。だが、その二つのスキルは〈創造〉と〈操作〉というハズレスキルだった。  そんな俺は、ある日、俺を蔑み、いじめていたやつらの策略によって洞窟の奥底に落とされてしまう。 「何で俺がこんな目に……」  毎日努力し続けてきたのに、俺は殺されそうになった。そんな俺は、復讐を決意した。    だが、その矢先…… 「ど、ドラゴン……」  俺の命は早々に消えそうなのであった。

エロゲー世界のただのモブに転生した俺に、ヒロインたちが押し寄せてきます

木嶋隆太
ファンタジー
主人公の滝川は気付けば、エロゲーの世界に転生していた。好きだった物語、好きだったキャラクターを間近で見るため、ゲームの舞台に転校した滝川はモブだというのに事件に巻き込まれ、メインヒロインたちにもなぜか気に入られまくってしまう。それから、ゲーム知識を活用して賢く立ち回っていた彼は――大量のヒロインたちの心を救い、信者のように慕われるようになっていく。

天才ですが何か?~異世界召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレと放逐されてしまう~いずれ彼らは知るだろう。逃がした魚が竜だった事を

榊与一
ファンタジー
俺の名は御剣那由多(みつるぎなゆた)。 16歳。 ある日目覚めたらそこは異世界で、しかも召喚した奴らは俺のクラスが勇者じゃないからとハズレ扱いしてきた。 しかも元の世界に戻す事無く、小銭だけ渡して異世界に適当に放棄されるしまつ。 まったくふざけた話である。 まあだが別にいいさ。 何故なら―― 俺は超学習能力が高い天才だから。 異世界だろうが何だろうが、この才能で適応して生き延びてやる。 そして自分の力で元の世界に帰ってやろうじゃないか。 これはハズレ召喚だと思われた御剣那由多が、持ち前の才能を生かして異世界で無双する物語。

ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。

いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。 成宮暁彦は独身、サラリーマンだった アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。 なにぶん、素人が書くお話なので 疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。 あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。

勇者召喚に巻き込まれた俺はのんびりと生活したいがいろいろと巻き込まれていった

九曜
ファンタジー
俺は勇者召喚に巻き込まれた 勇者ではなかった俺は王国からお金だけを貰って他の国に行った だが、俺には特別なスキルを授かったがそのお陰かいろいろな事件に巻き込まれといった この物語は主人公がほのぼのと生活するがいろいろと巻き込まれていく物語

処理中です...