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第13話
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俺たちが街の外に出たところで、リアが軽く体を動かしていた。
準備運動だろうか。
アンナも同じように動いている。ナーフィは眠たそうに目を擦っていて……これからちょっと心配だ。
「……ねえ、シドー様。なんかあの食事にバフ効果とかってあるの?」
「……え? いや、特にそういうことはなかったと思うが」
「食事をしてから体が軽いのよね……今なら、普通に戦ってもゴブリンくらいなら倒せると思うわよ」
元々、亜人は力が強いらしい。人間の三倍くらいは力が強く、そして人間の十倍くらいの食欲らしい。
そんな彼女たちなら、確かにゴブリンだろうと素手でボコボコにできる可能性はあるが、バフ効果か……。
「……お腹いっぱいで力が湧き上がる、とかじゃないのか?」
「いや、確かにここまでの満足感は久しぶりだけど……そういうのじゃないのよ。アンナもナーフィも体軽くなってるんでしょ?」
「はい……いつもと違う感じ、です」
「んー」
ナーフィもこくこくと頷いている。
……バフ効果、か。
実際、俺が食ってもそんな気はしないが。
もしかしたら、異世界の人が食べるとバフがかかるとか?
「俺の魔法もまだ分かっていないことが多くてな。もしかしたら、何かしら強化する効果があるのかもしれない。まあ、不都合ないならいいんじゃないか?」
「そうね。特に問題はないわよ」
「なら、まあそういう可能性があるとは頭の片隅に入れておいてくれ」
「分かったわ」
街の外へと出た俺たちは、早速ゴブリン討伐へと向かう。
前にゴブリンを倒した辺りにまで行くと、ゴブリンを二体見つけた。
俺たちは近くの岩陰に身を潜め、その様子を伺う。
「ゴブリンいるわよ。どうするの?」
「とりあえず今は俺の戦闘を見ていてほしい。俺が使っている異世界の武器が使えそうなら、三人にもそれを用意しようと思っている」
「分かったわよ。無理するんじゃないわよ」
「は、はい……何かあれば、援護、しますから」
リアとアンナが優しく声をかけてくれる。
……一人で戦っていたときもそれはそれで黙々とノルマを達成していく感覚は悪くなかったが、この方が俺はいいな。
仲間たちの声かけに頷いていると、ナーフィも心配そうにこちらをみてくる。
「ん……」
……俺の心配、というより俺に何かあった後のことを考えているように見える。
まあそれでも心配してくれているのは確かだよな。
俺はアイテムボックスにしまっていたハンドガンを取り出す。もう何度か使っているので、準備は慣れたものだ。
ゴブリンへと向け、すかさず発砲する。びくり、とリアたちが体をすくませた。
俺の銃弾はゴブリンの足を貫き、悲鳴が上がる。遅れて、仲間たちがこちらに気づいて走ってくる。
だが俺はさらに引き金をひき、足を撃ち抜く。
銃声……そしてそれが悲鳴を生み出していく。
「うが!?」
ばたりと前にいたゴブリンが倒れる。それに巻き込まれる形で後ろにいたゴブリンも転がる。
俺は近づきながら二体の頭を撃ち抜いて、仕留めた。
弾丸9発で終わり、とりあえずリロードを行っておいた。
「これが、俺の異世界の武器でハンドガンって言うんだ。ゾンビとか倒すときはだいたいこれが初期武器でな。結構な威力だろ?」
と、少し冗談を交えながらいうと、リアは感心したようにこちらをみてくる。
「……け、結構どころじゃないわよ。ゴブリンがこんなにあっさり倒せる遠距離攻撃なんて、魔法くらいしか聞いたことないわよ……。なるほどね。この武器があったから、ある程度誰でもいい、って話だったのね」
「そういうことだ。とりあえず、これを皆が使えるかどうか試してみようと思っていたんだけど……」
ナーフィはこちらに片手を差し出してきた。
またハンバーガーか? と思ってハンバーガーを出すとそれを受け取り、ぱくりと食べながら首を横に振る。
「ハンドガン、使ってみたいのか?」
「ん」
でも、ハンバーガも食べるのね……。
とりあえず渡すと、彼女は近くの木を指差した。
そして、俺がやっていたようにトリガーを引き、木に銃弾を放っていく。
……九発、すべて命中だ。
片手でハンバーガーを食べながら。
……亜人の筋力が強い、というのはこういうところでも影響しているのだろう。
まったく反動などを胃に介していないので、さすがだ。
「おお、凄いなナーフィ!」
「ん」
ちょっと、誇らしげである。食欲も凄まじいが、ここまで見事な腕をしているなら、問題ないだろう。
マガジンを渡すと、ナーフィはハンバーガーを飲み込むようにして、リロードをする。
……俺がやってみせた動きなら、すべて完璧に覚えているようだ。
天才だ……。
「ナーフィ、って結構戦闘センス凄いのよ……。あたしたちが食事に困ったときは、魔物とか狩ってきてくれたし」
「……そうなんだな」
ナーフィのことと彼女らの少し苦しい思い出を聞きつつ、リアが木に向けて銃弾を放つ。
全弾命中とはいかないが、こちらも俺よりもよく当たっている。
リアは少し不満そうにしていたが、それをアンナに渡した。
アンナも俺たちがやっていたのをみていたからか、的確に木を撃ち抜いていく。
……こちらも結構うまい。
ハンドガンの扱いの上手さは、ナーフィ、アンナ、リア、俺の順番だ。
「ハンドガンの扱い、皆大丈夫そうだな……」
ていうか、むしろ俺が一番下手である。
それにちょっと落ち込みつつ、俺はすぐにハンドガンの召喚準備に取り掛かる。
まずは、魔力を補給し、そしてハンドガンを召喚していく。
前よりは、楽になった。だが、それでも辛いことには変わりない。
準備運動だろうか。
アンナも同じように動いている。ナーフィは眠たそうに目を擦っていて……これからちょっと心配だ。
「……ねえ、シドー様。なんかあの食事にバフ効果とかってあるの?」
「……え? いや、特にそういうことはなかったと思うが」
「食事をしてから体が軽いのよね……今なら、普通に戦ってもゴブリンくらいなら倒せると思うわよ」
元々、亜人は力が強いらしい。人間の三倍くらいは力が強く、そして人間の十倍くらいの食欲らしい。
そんな彼女たちなら、確かにゴブリンだろうと素手でボコボコにできる可能性はあるが、バフ効果か……。
「……お腹いっぱいで力が湧き上がる、とかじゃないのか?」
「いや、確かにここまでの満足感は久しぶりだけど……そういうのじゃないのよ。アンナもナーフィも体軽くなってるんでしょ?」
「はい……いつもと違う感じ、です」
「んー」
ナーフィもこくこくと頷いている。
……バフ効果、か。
実際、俺が食ってもそんな気はしないが。
もしかしたら、異世界の人が食べるとバフがかかるとか?
「俺の魔法もまだ分かっていないことが多くてな。もしかしたら、何かしら強化する効果があるのかもしれない。まあ、不都合ないならいいんじゃないか?」
「そうね。特に問題はないわよ」
「なら、まあそういう可能性があるとは頭の片隅に入れておいてくれ」
「分かったわ」
街の外へと出た俺たちは、早速ゴブリン討伐へと向かう。
前にゴブリンを倒した辺りにまで行くと、ゴブリンを二体見つけた。
俺たちは近くの岩陰に身を潜め、その様子を伺う。
「ゴブリンいるわよ。どうするの?」
「とりあえず今は俺の戦闘を見ていてほしい。俺が使っている異世界の武器が使えそうなら、三人にもそれを用意しようと思っている」
「分かったわよ。無理するんじゃないわよ」
「は、はい……何かあれば、援護、しますから」
リアとアンナが優しく声をかけてくれる。
……一人で戦っていたときもそれはそれで黙々とノルマを達成していく感覚は悪くなかったが、この方が俺はいいな。
仲間たちの声かけに頷いていると、ナーフィも心配そうにこちらをみてくる。
「ん……」
……俺の心配、というより俺に何かあった後のことを考えているように見える。
まあそれでも心配してくれているのは確かだよな。
俺はアイテムボックスにしまっていたハンドガンを取り出す。もう何度か使っているので、準備は慣れたものだ。
ゴブリンへと向け、すかさず発砲する。びくり、とリアたちが体をすくませた。
俺の銃弾はゴブリンの足を貫き、悲鳴が上がる。遅れて、仲間たちがこちらに気づいて走ってくる。
だが俺はさらに引き金をひき、足を撃ち抜く。
銃声……そしてそれが悲鳴を生み出していく。
「うが!?」
ばたりと前にいたゴブリンが倒れる。それに巻き込まれる形で後ろにいたゴブリンも転がる。
俺は近づきながら二体の頭を撃ち抜いて、仕留めた。
弾丸9発で終わり、とりあえずリロードを行っておいた。
「これが、俺の異世界の武器でハンドガンって言うんだ。ゾンビとか倒すときはだいたいこれが初期武器でな。結構な威力だろ?」
と、少し冗談を交えながらいうと、リアは感心したようにこちらをみてくる。
「……け、結構どころじゃないわよ。ゴブリンがこんなにあっさり倒せる遠距離攻撃なんて、魔法くらいしか聞いたことないわよ……。なるほどね。この武器があったから、ある程度誰でもいい、って話だったのね」
「そういうことだ。とりあえず、これを皆が使えるかどうか試してみようと思っていたんだけど……」
ナーフィはこちらに片手を差し出してきた。
またハンバーガーか? と思ってハンバーガーを出すとそれを受け取り、ぱくりと食べながら首を横に振る。
「ハンドガン、使ってみたいのか?」
「ん」
でも、ハンバーガも食べるのね……。
とりあえず渡すと、彼女は近くの木を指差した。
そして、俺がやっていたようにトリガーを引き、木に銃弾を放っていく。
……九発、すべて命中だ。
片手でハンバーガーを食べながら。
……亜人の筋力が強い、というのはこういうところでも影響しているのだろう。
まったく反動などを胃に介していないので、さすがだ。
「おお、凄いなナーフィ!」
「ん」
ちょっと、誇らしげである。食欲も凄まじいが、ここまで見事な腕をしているなら、問題ないだろう。
マガジンを渡すと、ナーフィはハンバーガーを飲み込むようにして、リロードをする。
……俺がやってみせた動きなら、すべて完璧に覚えているようだ。
天才だ……。
「ナーフィ、って結構戦闘センス凄いのよ……。あたしたちが食事に困ったときは、魔物とか狩ってきてくれたし」
「……そうなんだな」
ナーフィのことと彼女らの少し苦しい思い出を聞きつつ、リアが木に向けて銃弾を放つ。
全弾命中とはいかないが、こちらも俺よりもよく当たっている。
リアは少し不満そうにしていたが、それをアンナに渡した。
アンナも俺たちがやっていたのをみていたからか、的確に木を撃ち抜いていく。
……こちらも結構うまい。
ハンドガンの扱いの上手さは、ナーフィ、アンナ、リア、俺の順番だ。
「ハンドガンの扱い、皆大丈夫そうだな……」
ていうか、むしろ俺が一番下手である。
それにちょっと落ち込みつつ、俺はすぐにハンドガンの召喚準備に取り掛かる。
まずは、魔力を補給し、そしてハンドガンを召喚していく。
前よりは、楽になった。だが、それでも辛いことには変わりない。
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