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再び、惑う②

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「俺だって颯ちゃんの事、好きだよ?」
「ならその嘘っぽい顔、やめれば良いのに」

 琥陽の精一杯の意地は見破られやすいらしい。
 一刀両断され、それでも意地を突き通そうとする琥陽に流河は「まぁいいけど」とどうでも良さそうに囁いた。

「卯田、たまに君の事切なそうに見つめてる時あるよ? 早くゴーサインを出さないと、理性の糸が切れちゃうかもね」

 怖い事を呟き、流河はページを再び捲る。
 颯珠からの気持ちはもう十分すぎるほど伝わっている。問題は琥陽の気持ちの方で、どんな選択をしたとしても後悔する気がしてならない。
 そしてその選択の時は、すぐそこまで迫っている。これ以上は、琥陽の気持ち的にも引き延ばせない。
 その事を、きっと颯珠も感じているはずだ。

(この人は……今どこで、何をしてるんだろう?)

 シートで隠れている噛み跡を撫で、自身の番について思考を馳せる。
 どんなに探しても手がかりの見つからないこの噛み跡の主は、一体琥陽の事をどう思っているのか、あの出来事をなかったことにしてやいないか。
 いつも感じる不安と共に、思い浮かぶ顔が颯珠と重なる。
 あの時の相手は颯珠ではない。
 実際に颯珠の口からそう聞いたはずなのに、一度そうなのではないかと思うと颯珠と番を重ねてしまう自分がいた。
 それは心の内から漏れた期待が見せている幻影なのだろう。
 分かってはいても、考えずにいられない。

(颯ちゃん……今頃結果、受け取ったころかな?)

 窓の外に目を向けた琥陽は、どうしようもない不安を抑え、ただじっと颯珠のいる方向へ目を向けた。






 談話室で二時間ほど過ごし部屋に戻ると、颯珠はもう帰ってきていた。だらりとベッドに足を投げくつろぎ、「おかえり」と呑気に手を上げる。

「颯ちゃん……結果、どうだった?」

 尋ねると、颯珠は一枚の紙を取り出し琥陽に手渡した。それを受け取った琥陽は、その紙に目を通す。

「これで分かった? 琥陽の番が、オレじゃないって」
「……うん」

 そこには、颯珠がアルファである事と共に颯珠のフェロモンと相性の良いオメガについての情報が記されていた。
 その紙に書かれているオメガの情報は数人、多くて三人ほどで、後は学校側に問い合わせなければ開示されない。変動するフェロモンを定期的に調べる事で少しずつ情報を開示し、フェロモンによる先入観をできるだけ減らそうという学校側の策略だった。
 そしてフェロモンによる相性の良い相手が記されているという事は、颯珠に番がいない事を示している。
 颯珠の言動から予測していたけれど突きつけられた現実に震える手を握りしめ、琥陽は覚悟を決め顔を上げた。
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