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契約結婚の終わり
38. 伝えたい想い★
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フラットに帰ってきてシャワーで長旅の汗を流してしまうと、ヒカリはリビングで待つ隼の元へと足早に駆け寄った。彼の胸元に額を押し付け甘えると、優しく問われる。
「疲れてない?」
ぶんぶんと首を横に振ると、彼は小さく笑った。
「良かった」
そのまま彼の寝室へと連れて行かれる。もう見慣れてしまった彼の部屋。ここには戻って来ないなんてどうして思うことができたんだろう。こんなに居心地の良い場所は世界にまたとないのに。
「ヒカリ……」
優しく名前を呼ばれながら、ベッドにそっと沈められる。見上げると、愛しくて堪らないと言わんばかりの瞳に捉えられた。
彼はヒカリの髪を指に絡ませ、そっと唇にキスを落とす。ちゅ、と湿った音が部屋の中に響く。
「ヒカリも名前呼んで」
甘く強請られ、ヒカリは熱に浮かされたようにその名を口に出す。
「隼さん……」
「ん、」
彼は嬉しげにふわりと笑うと、慈しむように頬を撫でてくれた。そしてまたキス。唇に、頬に、耳たぶに。
柔らかい唇の感触がくすぐったくて身をよじると、彼は耳を丹念に愛で始めた。何度も繰り返し唇を押し付け、時折優しく食み、そっと舌で舐め、そして囁く。
「ヒカリ、愛してる」
「ひゃっ」
甘い声が頭の中で飽和してしまい、ヒカリは沸騰しそうになる。
「ヒカリ、顔真っ赤。かわいい」
「……っ」
触られてもいないのに足の間が潤い始めていることに気付き、ヒカリは慌てる。彼がそこに手を伸ばしたら気付かれてしまう。内心焦るが、彼の手は下方へ降りてくることはない。その代わり大切な宝物を扱うかのような手付きで、丁寧に一枚一枚服を脱がしてくれる。ヒカリから全ての衣服を取り去ると、彼も手早く服を脱ぎ下穿き一枚となってしまう。
オレンジ色の間接照明が部屋を仄かに照らす中、彼の唇がヒカリの肌に触れる音が繰り返し響く。彼は今日はとことんヒカリを甘やかし蕩けさせると決めているらしく、ヒカリの全身に隈なく口づけを落としていく。穏やかでただひたすらに甘い時間――。
唇が肌を辿る度にそこが熱を持ち、ヒカリの心を甘く震わせる。首筋に舌を這わされ、鎖骨を甘く食まれ、そして脇の下を舐められる。
「んっ……そんなとこ……」
「だめだった?」
「は、恥ずかし……」
「恥ずかしがるヒカリもかわいい」
彼は小さく笑うが、ヒカリはそれどころではない。
羞恥がまた新たな快楽を生み、足の間の秘めた泉が潤いを一層増してしまうのだ。もじもじと両足を擦り合わせながら、ヒカリは悶える。この泥濘が彼に知られてしまったら恥ずかしい。だけどそれでもいいから触って欲しい。もうそろそろ触ってくれるのではないか――そんな期待に腰が揺れてしまう。
彼が胸の先をじっくりと可愛がり始めた時、ヒカリは耐えかねて声を上げた。
「ね、ねぇっ先輩……」
「名前」
「……し、隼さんっ」
「ん」
よく出来ましたとばかりに唇に優しくキスをされる。嬉しいけど、嬉しくない。
「も、もっと違うところ……」
「うん?」
白い肌の上から顔を上げた彼と目が合い、ヒカリは真っ赤になる。
――自分は今何を言おうとした?
うっかり浅ましいお願いを口にしそうになったことに気付き、慌てて口を噤む。だけど彼は聞き流してくれなかった。
「違うところがいいの?」
そう言うと彼はおもむろに下の方へ移動する。そして丁寧な手付きでヒカリの足に手を掛けると、その指を一本ずつ舐り始めた。
「や、やぁっ……なんでっ」
ヒカリは驚き声を上げた。「違うところ」がどうしてそこになってしまうのか。
そんなヒカリの内心の叫びはいざ知らず、彼は大切な宝物に触れるように丹念に足への愛撫を施していく。
「ヒカリ、好きだよ。頭のてっぺんから足の先まで愛してる」
「んっ……」
彼の口付けはだんだんと這い上がってくる。ふくらはぎに唇を押し付け、膝の上を通り、内腿へ――。
彼の舌が足の付け根へと限りなく近付いた時、彼は感心したようなため息を漏らした。
「ヒカリ?」
「な、なに?」
「ここ、とろっとろだよ。まだ触ってないのにどうしたの?」
「だ、だって……」
ヒカリは耳の先まで熱が回るのを感じた。恥ずかしくて堪らない。
「ヒカリって本当にかわいいね。キスだけで気持ち良くなっちゃったんだ?」
あれはどう考えてもキスだけじゃない――そう抗議をしようと口を開くが、発することができたのは言葉にならないため息だった。
「はぁっ……」
足の間の泥濘に彼の指が入り込んで来たのである。彼の長い指が、中を探るような動きをしながら少しずつ奥へ入ってくる。待ち望んでいた刺激に、ヒカリはうっとりと酔いしれた。
ふと下へと目を遣ると、立てた両足の間からこちらの反応を窺うような眼差しに捉えられる。大好きな人が、自分のあられもない姿をつぶさに観察している――そう意識すると堪らない気持ちでいっぱいになった。
彼の指は蜜を絡め取りながら中をゆるゆると動く。間違いなく気持ちいい。だけど、足りない。その細い指では全然足りない。もっとその圧倒的な質量のもので一思いに貫いて欲しい――焦がれるほどの渇望に、ヒカリは目に涙を浮かべる。
「隼、さん……」
「うん?」
「しないの……?」
「してるよ?」
「そうじゃなくて……」
何で分かってくれないんだろう。困惑しながら彼の顔を見ると、こちらを食い入るように見つめる彼の瞳と目が合った。
(あ……)
その瞳の奥底の輝きを目にした時、ヒカリは初めて理解した。彼はヒカリに求められたいのだ、と――。
彼はいつだって溢れるほどの愛情を言葉と態度で示してくれたけど、ヒカリはそれにただひたすらに甘えてきただけだった。それで良しとされてきたのがこれまでの二人の関係だった。だけど今ここに来て、彼はヒカリに対して少し欲を見せている。
その思いに応えたいと思った。自分が何よりも欲しいのはあなたなのだと分かってもらいたいと思った。
ヒカリは意を決して身体を起こす。足の間の蜜が零れシーツを汚すが、気にしている場合ではない。
急にヒカリが起き上がったので隼は戸惑った様子を見せた。しかしヒカリは構わず彼の下穿きに手を掛けてそのままずりずりと脱がしてしまう。
「ヒカリ……?」
彼は完全に当惑してしまっていた。今日に至るまでベッドの上では常に受け身だったヒカリが急に行動に出たのだから無理もない。彼は怪訝な表情を浮かべ、下腹部の屹立を晒したまま両膝を左右に開いて座っている。
「……隼さんは、そのままで」
ヒカリは頬を染めながら、彼の足の間に身を入れる。自分の足を彼の足の向こうへと交差させ、後ろ手をついて腰を浮かせる。
そのまま、足の間の泥濘を彼の屹立にこすりつける。何度かそれを繰り返した後、ゆっくりと腰を下ろしていく。熱くて硬い雄芯がヒカリの足の間の泥濘にぬぷぬぷと音を立てて飲み込まれていく。
「はぁ……」
ずっと欲しくてたまらなかった質量をようやく手に入れ、ヒカリは大きく息を吐いた。
彼は胡坐に組んだ足でヒカリの身体を受け止め、両手で腰を支えてくれる。熱っぽい眼差しでこちらを見つめながら、恍惚としたため息をついた。
「……急にどうしちゃったの」
「だって……なかなか挿れてくれないから」
「きみが強請ってくれたらいいなと思って焦らしてみたんだ。だけど、まさか、こんな……」
彼が期待したのはせいぜいヒカリが挿入を懇願するくらいのことだったのかもしれない。だけど、ヒカリの気持ちはその程度のことでは収まらないのだ。
ヒカリは隼の肩に両手を回すと、そのままぎゅうっと抱き着いた。
「わたしだってあなたが欲しいんです。――隼さん、好き。大好き」
そして彼の唇に自分のものを押し付ける。そのまま舌を彼の口の中へ差し入れ、ねっとりと彼のものと絡める。唾液の音をさせながら深い口づけを続けていると、腹の中に収めた彼の屹立がその質量を増したような気がした。
そのまま足と腹筋を使って腰を前後に動かし、恥骨を彼の下腹部にゆっくりと擦り付けていく。亀裂の上の蕾が彼の腹と擦れ、快感が走る。
「……っんっ……っんんっ……」
瞬ぎもせずこちらを見つめる熱い眼差しに、ヒカリの身体は火照っていく。羞恥に頬を染めながら、ゆっくりゆっくりと腰を動かす。流れ出る蜜が増し、くちゅりくちゅりと隠微な水音が部屋の中を満たしていく。
ベッドの上で自分からこんなにも動いたのは初めてのことで、恥ずかしくてたまらない。彼に淫乱な女だと思われたらどうしようという不安もある。――だけど。そんなことよりも。
(わたしだってあなたが欲しくてたまらないことを、知って欲しい)
「隼さ、んっ……好きっ……大好きっ……」
下腹部を繋げ、胸と胸を擦り合わせ、ぎゅうぎゅう抱きつきながら何度も囁く。
しばらくすると、彼は堪りかねたように切羽詰まった声を上げた。
「ヒカリ……俺、もう……っ」
彼はそのままヒカリを掻き抱くと、狂ったようにがつがつと下から突き上げ始めた。
「え!? っあっあっあぁっ……んん~っ!」
彼のなりふり構わぬ腰の動きに、ヒカリはあっという間に達してしまった。脳裏を白い閃光が走り、つま先から頭の先まで快感が駆け抜けていくのを震えながら耐える。
きゅうきゅうと収縮する膣癖が彼のものを噛み締め、今まさに自分の中に彼が入り込んでいるのだとまざまざと感じさせられてしまう。彼の屹立もまた同時にヒカリの中で震えた。
「はぁっ……はぁっ……」
肩で呼吸を繰り返しながら、ヒカリはぐったりと彼にもたれかかる。彼も呼吸を乱していたが、それでもヒカリのことをしっかりと抱き留めてくれた。その胸の中で、ヒカリは思う。
――ああ、この人が好き。
気だるい沈黙がしばらくの間続いた後、隼はヒカリの顔に掛かった髪を優しい手付きで除けてくれた。そして掠れた声で囁く。
「なに今の。めちゃくちゃエロかった……」
「……エロいわたしは駄目ですか」
「まさか。最高だよ」
彼はヒカリを抱き留める手を更に強めた。そしてポツリと呟く。
「……なんか物凄く愛されているような気がして幸せだった」
「……だって、物凄く愛してますから」
「……そっか」
どこか嬉しそうな声である。彼はヒカリのことをぎゅうぎゅうときつく抱きしめると、万感の思いがこもったような震えた声で囁く。
「ヒカリ、もう離さないから。ずっと一緒にいて」
「わたしももう勝手に帰ったりしません。……添い遂げましょうね」
ヒカリは右手で彼の手を探り出す。少しゴツゴツして分厚いその手の内側に自分の手を潜り込ませ、指と指を絡ませる。
――この人が好き。この手をずっと掴んでいたい。
握り返してくれた手から彼の温もりが伝わってきて、ヒカリは胸がいっぱいになった。なぜだか分からないけれど無性に泣きたい気分になってしまい、涙がぽろぽろと零れ落ちてしまう。濡れた頬を彼がそっと拭ってくれた。
「愛してるよ、ヒカリ」
優しく抱き締められながら、愛し愛される喜びがひたひたとヒカリの心を満たしていく。
――幸福を噛み締めるような夜だった。
「疲れてない?」
ぶんぶんと首を横に振ると、彼は小さく笑った。
「良かった」
そのまま彼の寝室へと連れて行かれる。もう見慣れてしまった彼の部屋。ここには戻って来ないなんてどうして思うことができたんだろう。こんなに居心地の良い場所は世界にまたとないのに。
「ヒカリ……」
優しく名前を呼ばれながら、ベッドにそっと沈められる。見上げると、愛しくて堪らないと言わんばかりの瞳に捉えられた。
彼はヒカリの髪を指に絡ませ、そっと唇にキスを落とす。ちゅ、と湿った音が部屋の中に響く。
「ヒカリも名前呼んで」
甘く強請られ、ヒカリは熱に浮かされたようにその名を口に出す。
「隼さん……」
「ん、」
彼は嬉しげにふわりと笑うと、慈しむように頬を撫でてくれた。そしてまたキス。唇に、頬に、耳たぶに。
柔らかい唇の感触がくすぐったくて身をよじると、彼は耳を丹念に愛で始めた。何度も繰り返し唇を押し付け、時折優しく食み、そっと舌で舐め、そして囁く。
「ヒカリ、愛してる」
「ひゃっ」
甘い声が頭の中で飽和してしまい、ヒカリは沸騰しそうになる。
「ヒカリ、顔真っ赤。かわいい」
「……っ」
触られてもいないのに足の間が潤い始めていることに気付き、ヒカリは慌てる。彼がそこに手を伸ばしたら気付かれてしまう。内心焦るが、彼の手は下方へ降りてくることはない。その代わり大切な宝物を扱うかのような手付きで、丁寧に一枚一枚服を脱がしてくれる。ヒカリから全ての衣服を取り去ると、彼も手早く服を脱ぎ下穿き一枚となってしまう。
オレンジ色の間接照明が部屋を仄かに照らす中、彼の唇がヒカリの肌に触れる音が繰り返し響く。彼は今日はとことんヒカリを甘やかし蕩けさせると決めているらしく、ヒカリの全身に隈なく口づけを落としていく。穏やかでただひたすらに甘い時間――。
唇が肌を辿る度にそこが熱を持ち、ヒカリの心を甘く震わせる。首筋に舌を這わされ、鎖骨を甘く食まれ、そして脇の下を舐められる。
「んっ……そんなとこ……」
「だめだった?」
「は、恥ずかし……」
「恥ずかしがるヒカリもかわいい」
彼は小さく笑うが、ヒカリはそれどころではない。
羞恥がまた新たな快楽を生み、足の間の秘めた泉が潤いを一層増してしまうのだ。もじもじと両足を擦り合わせながら、ヒカリは悶える。この泥濘が彼に知られてしまったら恥ずかしい。だけどそれでもいいから触って欲しい。もうそろそろ触ってくれるのではないか――そんな期待に腰が揺れてしまう。
彼が胸の先をじっくりと可愛がり始めた時、ヒカリは耐えかねて声を上げた。
「ね、ねぇっ先輩……」
「名前」
「……し、隼さんっ」
「ん」
よく出来ましたとばかりに唇に優しくキスをされる。嬉しいけど、嬉しくない。
「も、もっと違うところ……」
「うん?」
白い肌の上から顔を上げた彼と目が合い、ヒカリは真っ赤になる。
――自分は今何を言おうとした?
うっかり浅ましいお願いを口にしそうになったことに気付き、慌てて口を噤む。だけど彼は聞き流してくれなかった。
「違うところがいいの?」
そう言うと彼はおもむろに下の方へ移動する。そして丁寧な手付きでヒカリの足に手を掛けると、その指を一本ずつ舐り始めた。
「や、やぁっ……なんでっ」
ヒカリは驚き声を上げた。「違うところ」がどうしてそこになってしまうのか。
そんなヒカリの内心の叫びはいざ知らず、彼は大切な宝物に触れるように丹念に足への愛撫を施していく。
「ヒカリ、好きだよ。頭のてっぺんから足の先まで愛してる」
「んっ……」
彼の口付けはだんだんと這い上がってくる。ふくらはぎに唇を押し付け、膝の上を通り、内腿へ――。
彼の舌が足の付け根へと限りなく近付いた時、彼は感心したようなため息を漏らした。
「ヒカリ?」
「な、なに?」
「ここ、とろっとろだよ。まだ触ってないのにどうしたの?」
「だ、だって……」
ヒカリは耳の先まで熱が回るのを感じた。恥ずかしくて堪らない。
「ヒカリって本当にかわいいね。キスだけで気持ち良くなっちゃったんだ?」
あれはどう考えてもキスだけじゃない――そう抗議をしようと口を開くが、発することができたのは言葉にならないため息だった。
「はぁっ……」
足の間の泥濘に彼の指が入り込んで来たのである。彼の長い指が、中を探るような動きをしながら少しずつ奥へ入ってくる。待ち望んでいた刺激に、ヒカリはうっとりと酔いしれた。
ふと下へと目を遣ると、立てた両足の間からこちらの反応を窺うような眼差しに捉えられる。大好きな人が、自分のあられもない姿をつぶさに観察している――そう意識すると堪らない気持ちでいっぱいになった。
彼の指は蜜を絡め取りながら中をゆるゆると動く。間違いなく気持ちいい。だけど、足りない。その細い指では全然足りない。もっとその圧倒的な質量のもので一思いに貫いて欲しい――焦がれるほどの渇望に、ヒカリは目に涙を浮かべる。
「隼、さん……」
「うん?」
「しないの……?」
「してるよ?」
「そうじゃなくて……」
何で分かってくれないんだろう。困惑しながら彼の顔を見ると、こちらを食い入るように見つめる彼の瞳と目が合った。
(あ……)
その瞳の奥底の輝きを目にした時、ヒカリは初めて理解した。彼はヒカリに求められたいのだ、と――。
彼はいつだって溢れるほどの愛情を言葉と態度で示してくれたけど、ヒカリはそれにただひたすらに甘えてきただけだった。それで良しとされてきたのがこれまでの二人の関係だった。だけど今ここに来て、彼はヒカリに対して少し欲を見せている。
その思いに応えたいと思った。自分が何よりも欲しいのはあなたなのだと分かってもらいたいと思った。
ヒカリは意を決して身体を起こす。足の間の蜜が零れシーツを汚すが、気にしている場合ではない。
急にヒカリが起き上がったので隼は戸惑った様子を見せた。しかしヒカリは構わず彼の下穿きに手を掛けてそのままずりずりと脱がしてしまう。
「ヒカリ……?」
彼は完全に当惑してしまっていた。今日に至るまでベッドの上では常に受け身だったヒカリが急に行動に出たのだから無理もない。彼は怪訝な表情を浮かべ、下腹部の屹立を晒したまま両膝を左右に開いて座っている。
「……隼さんは、そのままで」
ヒカリは頬を染めながら、彼の足の間に身を入れる。自分の足を彼の足の向こうへと交差させ、後ろ手をついて腰を浮かせる。
そのまま、足の間の泥濘を彼の屹立にこすりつける。何度かそれを繰り返した後、ゆっくりと腰を下ろしていく。熱くて硬い雄芯がヒカリの足の間の泥濘にぬぷぬぷと音を立てて飲み込まれていく。
「はぁ……」
ずっと欲しくてたまらなかった質量をようやく手に入れ、ヒカリは大きく息を吐いた。
彼は胡坐に組んだ足でヒカリの身体を受け止め、両手で腰を支えてくれる。熱っぽい眼差しでこちらを見つめながら、恍惚としたため息をついた。
「……急にどうしちゃったの」
「だって……なかなか挿れてくれないから」
「きみが強請ってくれたらいいなと思って焦らしてみたんだ。だけど、まさか、こんな……」
彼が期待したのはせいぜいヒカリが挿入を懇願するくらいのことだったのかもしれない。だけど、ヒカリの気持ちはその程度のことでは収まらないのだ。
ヒカリは隼の肩に両手を回すと、そのままぎゅうっと抱き着いた。
「わたしだってあなたが欲しいんです。――隼さん、好き。大好き」
そして彼の唇に自分のものを押し付ける。そのまま舌を彼の口の中へ差し入れ、ねっとりと彼のものと絡める。唾液の音をさせながら深い口づけを続けていると、腹の中に収めた彼の屹立がその質量を増したような気がした。
そのまま足と腹筋を使って腰を前後に動かし、恥骨を彼の下腹部にゆっくりと擦り付けていく。亀裂の上の蕾が彼の腹と擦れ、快感が走る。
「……っんっ……っんんっ……」
瞬ぎもせずこちらを見つめる熱い眼差しに、ヒカリの身体は火照っていく。羞恥に頬を染めながら、ゆっくりゆっくりと腰を動かす。流れ出る蜜が増し、くちゅりくちゅりと隠微な水音が部屋の中を満たしていく。
ベッドの上で自分からこんなにも動いたのは初めてのことで、恥ずかしくてたまらない。彼に淫乱な女だと思われたらどうしようという不安もある。――だけど。そんなことよりも。
(わたしだってあなたが欲しくてたまらないことを、知って欲しい)
「隼さ、んっ……好きっ……大好きっ……」
下腹部を繋げ、胸と胸を擦り合わせ、ぎゅうぎゅう抱きつきながら何度も囁く。
しばらくすると、彼は堪りかねたように切羽詰まった声を上げた。
「ヒカリ……俺、もう……っ」
彼はそのままヒカリを掻き抱くと、狂ったようにがつがつと下から突き上げ始めた。
「え!? っあっあっあぁっ……んん~っ!」
彼のなりふり構わぬ腰の動きに、ヒカリはあっという間に達してしまった。脳裏を白い閃光が走り、つま先から頭の先まで快感が駆け抜けていくのを震えながら耐える。
きゅうきゅうと収縮する膣癖が彼のものを噛み締め、今まさに自分の中に彼が入り込んでいるのだとまざまざと感じさせられてしまう。彼の屹立もまた同時にヒカリの中で震えた。
「はぁっ……はぁっ……」
肩で呼吸を繰り返しながら、ヒカリはぐったりと彼にもたれかかる。彼も呼吸を乱していたが、それでもヒカリのことをしっかりと抱き留めてくれた。その胸の中で、ヒカリは思う。
――ああ、この人が好き。
気だるい沈黙がしばらくの間続いた後、隼はヒカリの顔に掛かった髪を優しい手付きで除けてくれた。そして掠れた声で囁く。
「なに今の。めちゃくちゃエロかった……」
「……エロいわたしは駄目ですか」
「まさか。最高だよ」
彼はヒカリを抱き留める手を更に強めた。そしてポツリと呟く。
「……なんか物凄く愛されているような気がして幸せだった」
「……だって、物凄く愛してますから」
「……そっか」
どこか嬉しそうな声である。彼はヒカリのことをぎゅうぎゅうときつく抱きしめると、万感の思いがこもったような震えた声で囁く。
「ヒカリ、もう離さないから。ずっと一緒にいて」
「わたしももう勝手に帰ったりしません。……添い遂げましょうね」
ヒカリは右手で彼の手を探り出す。少しゴツゴツして分厚いその手の内側に自分の手を潜り込ませ、指と指を絡ませる。
――この人が好き。この手をずっと掴んでいたい。
握り返してくれた手から彼の温もりが伝わってきて、ヒカリは胸がいっぱいになった。なぜだか分からないけれど無性に泣きたい気分になってしまい、涙がぽろぽろと零れ落ちてしまう。濡れた頬を彼がそっと拭ってくれた。
「愛してるよ、ヒカリ」
優しく抱き締められながら、愛し愛される喜びがひたひたとヒカリの心を満たしていく。
――幸福を噛み締めるような夜だった。
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❄︎
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