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平凡な男ですけど、魔王として物語をサクサク進めます
しおりを挟む「私は女神ダンデライオン。海藤院リクタ、あなたは今代の魔王として、この世界に召喚されました。ドゥユーアンダースタン?」
「イエスアイドゥ。魔王か、それは何とも面白そうだ」
「……あの、私が言うのもアレなんですけど、状況分かっています? 私、中々にトンでもない発言をしましたよ? ホント自分で言うのもアレなんですけど」
「ふむ、俺には理解力が足りていなかったか。てっきり、この世界……異世界に召喚された俺は、魔の軍勢の王として君臨し、いずれは勇者と戦い、そこで敗北し、悪役としてこの世界の歴史書のひとページとして記されて欲しい、そんなことを望まれているのだと勝手に解釈していたが……そうか、勘違いだったか」
「一言一句合っているし!? 合い過ぎて逆に怖いんですけど!? というかですね、あなたいったい何者なんですか? 召喚した私がいうのもまたまたアレなんですけど」
「海藤院リクタだ。女神たんぽぽに召喚された平凡な男だよ」
「ダンデライオン! 私、女神ダンデライオンですから!」
「うん? ダンデライオンとは英語でたんぽぽの意味だろ?」
「あなたの世界ではそうですけど、私の名前はたんぽぽじゃなくてダンデライオンなんですぅー! そこのところ間違わないように!」
「まずは魔なる軍勢の統率から始めることにしようか。福利厚生を整えて、それから──」
「私の話聞いていますか!? 大体、平凡な男の人が異世界に来てまず最初に考えることが、魔軍の統制とか福利厚生とか、あなた絶対に平凡じゃないですよね!?」
「たんぽぽよ。平凡だからこそ、こういった状況は常に予期しているものなのだ。──ああ、そうだった。生活水準の底上げが異世界では必須だったな。まずは食から手を付けるのが定番だろうか?」
「……つーん、知りません。もう勝手にしてくださいよ。女神様すねました、すねちゃいました。適当に知識チートでもなんでもやっていれば良いじゃないですかぁ? ぷくー」
「やれやれ……身勝手なたんぽぽだ。──むっ!? 今の『やれやれ』は中々に『やれやれ』系主人公ぽくはなかっただろうか? まぁ、所詮俺は脇役に過ぎないのだが、たまにはこうして主人公の真似事くらいしたい時もある」
「くッ……! 突っ込みどころがあり過ぎますけど絶対に突っ込みませんからね!」
「では魔界四天王たちよ! 人間たちの主要都市を落とし、魔軍の支配下としてくるのだ!」
『ははっ! 魔王様のお心のままに!』
「早っ!? 展開チョー早っ!? いくら何でも急展開過ぎません……? いつの間に魔界四天王とか作ったんですか? というか、もう魔軍の支配が完了している!?」
「俺は平凡な男だからな、せめて手際くらいは良くないといけないだろう?」
「手際とか最早そんなレベルじゃないですよね!? 召喚されてから三十分も経っていませんからね!?」
「魔王様ご報告いたします! 世界の九割を魔軍の支配下に置きました!」
「ごくろう」
「だから展開が早過ぎますって! 魔界四天王がもう帰ってきて世界のほとんどを支配完了とかわけわかめです!」
「ふっ……わけワカメとは面白いことを言うな、たんぽぽよ! 俺は今爆笑しているぞ」
「女神様のことをバカにしていますよね、あなた!? 全然爆笑していないですし、さっきのはただ噛んだだけですよぉ! あと、私の名前は女神ダ・ン・デ・ラ・イ・オ・ン!!」
「魔王様ご報告いたします! うっかり世界の十割を魔軍の支配下に置いてしまいました! ご意向に沿うことができず申し訳ございません!」
「まぁ、そういうこともある。気を落とすな。落とすなら今日は休んで疲れを洗い落したほうが建設的だ」
「ははっ! 寛大なお心、誠に恐悦至極に存じます!」
「……あの、空耳じゃないとしたら、もしかして、この世界の人間って滅んじゃったっぽい感じですか?」
「たんぽぽよ、俺はそんな野蛮な魔王ではないぞ? 当然、全ての地域において無血開城だ。この世界には存在しない菓子や、肌触りの良い衣服、住み心地の良い住居、これらを用いれば実に容易であったな」
「本当に知識チートしているし!? というか! まだ召喚してから一時間も経っていないんですけどぉー!」
「俺は平凡な男だが時間遅延の力を持っていてな、ここでの一時間はこの世界の六十年に値する」
「なにそのチート!? 女神様も知らないくらいの超チートなんですけどッ!」
「チート、チートと言われるのは好みではないな。これでも平凡なりに努力して習得した力なんだぞ?」
「平凡な人が努力して、そんな超凄い力を手に入れられるかぁあぁぁぁー!!」
「むっ? たんぽぽよ。その耳に着けているイヤリングが光っているぞ?」
「はぁはぁ……。こ、こちら女神ダンデライオンです。どうかしましたか先輩?」
「なるほど、無線か携帯電話のようなものだったか」
「え゛……? あ、いえ! 嫌ってわけじゃないですよ! 断じて違いますよ! ……あ、はい……分かりました……それでは、はい……失礼します。……はぁー」
「どうした、たんぽぽ? まるで先輩女神に、俺と共に違う世界に跳んで、今度は勇者をやらせ、たんぽぽが俺のサポートにつくよう言い渡されたような顔をしているが、一体どうしたんだ?」
「その通り、その通りなんですよぉ! もーッ! その察しの良さに最早突っ込み気もおきません! 一言一句そうですよぉー!!」
「我が配下たちよ達者でいるのだぞ?」
『ははっ! 魔王様のお帰りをいつまでもお待ちしております!』
「だから展開が早いですって!! ──きゃっ!?」
「しっかり俺につかまっていろよ、たんぽぽ。世界間移動は多少揺れるからな」
「お姫様抱っこされてる私!? というか召喚は女神様の役割なのに、普通に異世界へのゲートを開かないでくださいよぉッ!? どこまで非常識なんですか、あなたは!?」
「俺は平凡な男さ。では、次の世界に行くとしようか、たんぽぽよ」
「ダンデライオン! 女神ダンデライオンですから!!」
「こうして、平凡な男と女神たんぽぽの冒険の日々が始まった」
「何そのモノローグ風な台詞!? というか! 女神ダンデライオンだって言っているでしょうが! もぉーッ!!」
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