16 / 27
もがれた羽根
憎悪
しおりを挟む
私はあの女に復讐する。必ず。この手で。何度もチャンスはあったその都度、私の槍で串刺しにしようとした。しかし、そのほとんどがことごとく失敗した。
ある日、私がうたた寝をしているあいつの背中を椅子ごと、ザックリ突き刺そうとした時のことである。
私は背後に忍び寄り、これまでにないほどの強烈な一撃を放った。『殺った』とさえ思うほど完璧な一突きだったのに、その槍は女にではなく私に刺さっていた。皮肉にも完璧に、腹部を貫通していた。
口から血が勝手に出てきて気持ちが悪かった。そんな私に対してあいつは、
「クククッ」
笑いをこらえて、お腹を抱えて、立っていられなくなった私を見下ろして言った。
「お馬鹿さんね。あなたは人形。私に仕え、使われる消耗品だって教えなかったかしら?」
ギリッと私は女を睨んだ。もちろんこの後どうなるかは、分かっていたけれど、やられっぱなしは何もしないより嫌だったから、私にできることはせいぜいこれくらいのことだった。
「あら、何その目は?まーだ立場が分からないのねぇ。いえ、痛めつけられるのが好きなのかしら」
そう言って、女は私の腹に刺さった槍を思い切り引き抜いた。
「ハァッ」
体が熱い。痛みは分からない。痛いのか、気持ちいいのか。そんなことは考えられなかった。一瞬で蒸発しそうな体温になったかと思うと、続いて寒気が間髪入れずに猛威を振るう。
「ハァハァハァ」
「大丈夫よ。あなたは人形。壊れることはあっても死ぬことはないわ。だから」
女は鮮血に染まりぽっかりと空いた私の腹の中に手を入れて、グチャグチャにかきまわす。
「あっああああー」
声ではなく、むしろ瀕死の獣のように絶叫する情けない私。死にたいのに死ねない。『私は人形だから』
女は手を引き抜いて、何かをブツブツと唱えると。私の傷はあろうことかすっかり治りきっていた。
それでも、私の体は先ほどの疲労を蓄積している。しかし、
「あははは、だからあなたはお間抜けさんなのよ」
言うが早いか、女は私の腹を蹴りうつ伏せになったところを背中から槍で突き刺してきた。
「ハグゥ」
しかし今度はそれだけではない。さした槍を回したり揺らしたり、私の背中を抉って楽しんでいる。
「あらあなた鳥頭なの?私が許したと思っちゃった?躾のなってない馬鹿で愚かなペットには、拷問がつきものでしょ。それに、いえこれはいいわ。あなただけの責任じゃないものね。でも、私のストレスはあなたで発散することに今決めたから」
殺す。こいつは危険だ。だけど私は逆らえない。意思の話ではなく肉体が逆らえない。
その後のことはよく覚えていない。絶えることのない無限地獄。尽きることのない意識をずっと朦朧とさせながら、痛みだけが積み上げられていった。
代わりに私はその苦痛に耐えるために理性を消した。そうでもしないとやっていられない。
そして今、目の前に、赤い髪の私と同い年位の少女が立ちはだかる。彼女に伝えなくては、私はそう思い口を喉を必死に働かせるが届かない。出てくるものは、叫びと咆哮。
私、何やってるんだろ。
彼女も何かを語りかけている。それでも、ノイズのような音とともに掻き消されてしまう。
私に話しかけてくれてありがとう。でも今は、誰であろうと私の邪魔をするなら排除する。
通じないのなら仕方ない。やはり私は不器用だ。こんなことでしか自分を証明できないなんて。
そして私はまた、私の三叉槍トリアイナを振り下ろす。
ある日、私がうたた寝をしているあいつの背中を椅子ごと、ザックリ突き刺そうとした時のことである。
私は背後に忍び寄り、これまでにないほどの強烈な一撃を放った。『殺った』とさえ思うほど完璧な一突きだったのに、その槍は女にではなく私に刺さっていた。皮肉にも完璧に、腹部を貫通していた。
口から血が勝手に出てきて気持ちが悪かった。そんな私に対してあいつは、
「クククッ」
笑いをこらえて、お腹を抱えて、立っていられなくなった私を見下ろして言った。
「お馬鹿さんね。あなたは人形。私に仕え、使われる消耗品だって教えなかったかしら?」
ギリッと私は女を睨んだ。もちろんこの後どうなるかは、分かっていたけれど、やられっぱなしは何もしないより嫌だったから、私にできることはせいぜいこれくらいのことだった。
「あら、何その目は?まーだ立場が分からないのねぇ。いえ、痛めつけられるのが好きなのかしら」
そう言って、女は私の腹に刺さった槍を思い切り引き抜いた。
「ハァッ」
体が熱い。痛みは分からない。痛いのか、気持ちいいのか。そんなことは考えられなかった。一瞬で蒸発しそうな体温になったかと思うと、続いて寒気が間髪入れずに猛威を振るう。
「ハァハァハァ」
「大丈夫よ。あなたは人形。壊れることはあっても死ぬことはないわ。だから」
女は鮮血に染まりぽっかりと空いた私の腹の中に手を入れて、グチャグチャにかきまわす。
「あっああああー」
声ではなく、むしろ瀕死の獣のように絶叫する情けない私。死にたいのに死ねない。『私は人形だから』
女は手を引き抜いて、何かをブツブツと唱えると。私の傷はあろうことかすっかり治りきっていた。
それでも、私の体は先ほどの疲労を蓄積している。しかし、
「あははは、だからあなたはお間抜けさんなのよ」
言うが早いか、女は私の腹を蹴りうつ伏せになったところを背中から槍で突き刺してきた。
「ハグゥ」
しかし今度はそれだけではない。さした槍を回したり揺らしたり、私の背中を抉って楽しんでいる。
「あらあなた鳥頭なの?私が許したと思っちゃった?躾のなってない馬鹿で愚かなペットには、拷問がつきものでしょ。それに、いえこれはいいわ。あなただけの責任じゃないものね。でも、私のストレスはあなたで発散することに今決めたから」
殺す。こいつは危険だ。だけど私は逆らえない。意思の話ではなく肉体が逆らえない。
その後のことはよく覚えていない。絶えることのない無限地獄。尽きることのない意識をずっと朦朧とさせながら、痛みだけが積み上げられていった。
代わりに私はその苦痛に耐えるために理性を消した。そうでもしないとやっていられない。
そして今、目の前に、赤い髪の私と同い年位の少女が立ちはだかる。彼女に伝えなくては、私はそう思い口を喉を必死に働かせるが届かない。出てくるものは、叫びと咆哮。
私、何やってるんだろ。
彼女も何かを語りかけている。それでも、ノイズのような音とともに掻き消されてしまう。
私に話しかけてくれてありがとう。でも今は、誰であろうと私の邪魔をするなら排除する。
通じないのなら仕方ない。やはり私は不器用だ。こんなことでしか自分を証明できないなんて。
そして私はまた、私の三叉槍トリアイナを振り下ろす。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる