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第六章
04-3
しおりを挟む「え……?」
洋太が問いかけるように順平を見ると、相手はすぐ眼を逸らして、洋太の胸を愛撫していた手を下にずらし、ブルージーンズのチャックを下ろした。熱く大きな手で、ズボンの中から洋太の震えている芯を握り出すと、わざと乱暴な動作で上下にしごいて性急な刺激を与える。
「ひっ……あ、ああっ?! よ、よせっ……順平っ……! あっ……そんな、急に……強く、したら……っ、あんっ、あああ……っ!」
洋太が腰をがくがく揺らして、悲鳴のように切羽詰まった掠れ声を上げた。
順平の大きな口が、先走りの雫で濡れ始めていた洋太のモノを包み込むと、アイスキャンディーのような水音を立ててしゃぶり、熱い舌で裏側まで舐め回して、洋太を気が遠くなるような快感の洪水で責め立てた。
冷酷な獣のように洋太の芯を咥えて、舌と唇を絡ませて弄びながら、順平の逞しく長い腕が洋太の両脇から伸び上がって、傷一つない腹や胸を手探りする。
無防備にさらされていた胸のピンク色の突起を探り当て、指で摘まんだり、弾いたりして愛撫する動きを再開すると、最も敏感な三カ所を同時に刺激されて、たまらず洋太が頬を紅潮させながら、呼吸を弾ませつつ、白い首をのけぞらせた。
絶え間ない喘ぎ声が、カーテンを開け放ったままの暗い窓に反響し、ガラスに映り込んだ、身悶えする半裸の体の脈動とともに次第に上り詰めて行く。
「はあっ……ああ、んっ! あっ、あ……やあっ……順平っ……! あっ、あんっ! あああっ! あっ、あ……ああああ――っ!」
びくびくっと全身を震わせながら、洋太が爪先をぴんと張りつめさせて、順平の口の中で達した。そのまま数秒間、だらりと全身を脱力させて荒い呼吸を繰り返しながら、こぼれ落ちそうな涙を滲ませた眼で、放心したように天井を見上げている。
普段の順平は、何より洋太の体と、”気持ちよさ”を優先してくれたから、自分が「したい」と思っていないのに強引にイかされるのは、これが初めてだった洋太は、強いショックを受けて呆然自失の状態だった。
ついさっき洋太が出した雫を、口で強く吸って残らず搾り取っていた順平が、ようやく唇を離して、自分の掌に唾液と混じり合った白濁をたらりと吐き出した。それを掌に握り込みながら、煽るような、サディスティックな笑みを浮かべて言った。
「オレに無理やりされて、こんなに出したのか……? 悪い子だな、洋太は……」
「あ……あ……、それは……順平、が……いきなり……するから……っ」
顔を赤らめ、震えながら涙を浮かべて抗議する洋太に、順平が暗い笑みを浮かべながら、どこか熱に浮かされたような眼で見つめると、残酷に言い放った。
「無理やりされて、気持ちよくなってしまうような悪い子には、たっぷりお仕置きをしてやらないと……なあ、洋太? 今夜はあと何回、イくことになるのかな……?」
これから一晩中、あの熱い舌と唇と指先で追い立てられるような、無理強いの快楽の責め苦を味わわされると知って、洋太が必死に懇願するように弱々しく首を振って拒絶した。怯えた眼には涙を一杯に溜めている。
「い、いやだっ……もう、やめて……順平、こんなの……ひどいよ……」
「何がひどいんだ? お前がオレにしたことのほうが、よっぽどひどいだろう?」
「だから……何のこと言ってるんだよ……?! 全然わからないから、話して――」
「うるさい……黙ってオレに抱かれていろ……」
順平が空いていたほうの手で洋太の口を塞ぐと、テーブルの上に縫い付けられるように横たわった半裸の体から、下着ごとジーンズも強引に抜き取った。
大きく広げさせた両脚の間に膝立ちして、順平は掌に握り込んだ雫を潤滑剤がわりに塗り付けると、尻の割れ目の奥に、いきなり長くて男らしい二本の指を挿入した。バラバラに動くいかつい二本の指が、入口を中ほどまで広げながら出入りするのを、きゅうきゅう締め付けられながら、構わずに深く押し進める。
息を呑んで体を反らせた洋太の腰を軽々と抱え上げると、内側から一番いいところを指先で引っ掻いたり、押し揉んだりして、執拗に強く刺激した。
汗で濡れた短い髪を額に貼りつかせ、洋太の紅い唇が助けを求めて叫ぶような形を作ったが、ずっと喘がされ続けた声は掠れて、ほとんど悲鳴にならない。
順平は洋太のか細い抵抗を力ずくで抑え込むと、ズボンの前を開けて取り出した、熱く猛った硬い芯を大きく広げた後ろの入口に押し当て、二本の指ごと深く貫いた。すぐに指を引き抜いた手で両脚を抱えて、荒々しく腰を動かし始める。
微かな、すすり泣くような洋太の叫び声が、奥を貫いて激しく揺さぶる順平の腰の律動に合わせて、次第に絶え間ない喘ぎ声へと変ってゆくのを聞きながら、順平は薄暗い歓喜に酔っていた。恋しい人が”悦んでいる”のだと思ったから。
――”される側”の肉体が、防御機構の働きで「快感に似た反応」を示す場合があるということを、洋太以外との経験がない順平は、まだ知らなかった。
洋太の華奢な半裸の体を縫い付けたテーブルをギシギシと軋ませながら、順平が大きく広げさせた両脚の付け根に、何度も腰を強く打ち付けた。肉と肉同士がぶつかる激しい音のリズムに、密やかで卑猥な水音が混じり込んだ。
「はっ……洋太……オレに抱かれて”感じてる”んだろう? だったら今夜中、何度もイかせまくって、オレ以外の男では、”感じない”体にしてやる……そうすれば、お前はこれからもずっと、オレだけの……。はあ……どうだ洋太? 気持ちいいか……? 洋太……ああ、大好きだ……洋太……絶対に、離さない……はあっ、洋太……っ」
繋がったまま洋太の剥き出しの胸に覆いかぶさり、片手で相手の頭を抱き抱えて、順平は愛おしそうに頬ずりした。顔を紅潮させ、狂おしいような眼と声で、うっとりと恋人の名前を繰り返しながら、深く貫いた奥に熱い奔流を吐き出した。
静寂を取り戻した室内に、順平の荒い呼吸だけが響いている。
まるで憑き物が落ちたように、ゆっくりと冷静さを取り戻してきた頭で、ふと順平は、腕の中の洋太が静かすぎることに気づいた。
「……洋太……?」
抱き抱えていた洋太の頭を自分の体から離してのぞき込むと、蒼白な顔でぐったりしている様子が眼に飛び込んできた。驚いた順平は焦って洋太の手の拘束を外して、硬いテーブルから、ふかふかしたラグマットの上に、そうっと横たえた。
その時になって初めて、順平は洋太のなめらかな頬に一筋の涙がつたい落ちているのを見つけた。鋭い錐を突き立てられたように、胸がズキンと痛んだ。
順平が不安に揺れる低い声で、恋人の顔の間近に口を寄せて名前を呼んだ。
「ど、どうした……? 大丈夫か、洋太?! 目を開けてくれ……洋太……!」
大きな手で洋太の頬をぺちぺちと軽く叩いて、必死に呼びかけ続ける。順平の胸には、去年の事故の時、自分の腕の中でぴくりとも動かなかった洋太の濡れた蒼白な顔が思い出されて、一気に心臓を鷲掴みにされるような恐怖が込み上げてきた。
(オレは……オレは……何てことを、洋太に……どうして、あんな無茶な行為を……? 洋太にもしものことがあったら、オレ自身……到底、生きてはいられないというのに……くそっ、何て大馬鹿だ、オレは……!)
自分で自分を殺したいほどの激しい後悔と自責の念に胸を掻きむしられる思いで、順平が洋太の傍らに跪いて拳を震わせる。いつかの悪夢で見た、暴走する自分の体が目の前で大切な洋太を傷つける様が、現実になってしまったかのようだった。
つい先ほどまでの熱病に浮かされたような自分は、明らかに異常だった。嫉妬と、洋太を失うかも知れないという恐怖心が、毒のように全身に巡って、体と心を操っていたのだとしか思えなかった。――それも今となっては言い訳だが。
その時、弱々しく瞼を開けた洋太が、ぼうっとした目で順平を見上げた。順平が少しホッとしながら、懸命に呼びかける。
「洋太……本当にすまなかった! ……大丈夫か?! どこか苦しいところはないか……?」
洋太がわずかの間、虚ろな視線を順平の顔から胸の辺りにさまよわせた後で、ごく小さな声で呟いた。
「……順平……? 胸に……血が、ついて……痛いのか……?」
「えっ……?」
意外な洋太の言葉に、順平は一瞬、耳を疑った。脳震盪でも起こした洋太が、まだ幻覚を見ているのだろうか? 順平は余計に心配になった。
「洋太、もしかして頭が痛むのか……? もし辛かったら、すぐ救急車を――」
ゆっくりと首を振った後で、洋太は力の入らない動きで片手を上げると、青ざめた順平の顔に一瞬、躊躇うように触れてから、日焼けした精悍な頬を、そっと撫でた。
天井の白っぽいライトの光に照らされて、洋太の澄んだ明るい茶色の瞳が、どこか憐れむように順平を見つめている。
「……苦しいのか? 順平……かわいそうにな……」
「……」
そのまま洋太はまた目を閉じると、手がぱたりと顔の横に落ちた。静かな寝息から、疲れて眠ったように見えた。
順平は半裸のまま床に跪いて、呆然と洋太を見つめていた。
すぐ傍らには、汚れた体操着姿の痩せた少年が床にぺたりと座り込んで、真っ青な顔をして震えながら、大きく見開いた両目からぼろぼろと大粒の涙を零していた。
『ようたは……死んでしまうの? オレのせいで……?』
小さく首を振って、順平が答える。
「大丈夫だ、死なない……たぶん、眠っているだけだ……」
『ようたは……オレのことをきらいになった? ひどいことしたから……』
「わからない……でも、そうなっても仕方ないだろうな……」
少年が激しくしゃくり上げながら、痩せた手で何度も両目をこすった。
『ようた……ごめんね……オレなんか、いなけりゃよかった……ごめん、ようた……ごめんね……』
とめどなく流れ落ちる涙が汚れた体操着を濡らしている。ぼんやりとそちらに顔を向けて、順平は、少年の幼い胸の真ん中に大きな穴が開いていて、そこから真っ赤な血が流れ続けていることに、初めて気づいた。
(ああ……あの頃の傷は、出血は止まったように見えても、本当はまだ塞がっていなかったんだな……そのせいで、オレは……何よりも大切な、洋太を……)
子供の自分の幻がすうっと消えた後、打ちのめされたような表情で、順平が苦しげに顔を歪めた。怒りに震える手で膝に爪を立て、ぎりぎりと音がするほど食い込ませてから、深く俯いていた顔を上げて、床に横たわった洋太を見やった。
立ちあがってズボンを穿き直し、風呂場から桶に湯を溜めて運んで来ると、洋太を起こさないように、乱れたままの衣服を慎重に脱がす。湯に浸したタオルを絞って、優しく体を拭き清めながら、後で腹痛を起こさないように丁寧に処理してやった。
時々、洋太が薄っすらと目を開けて、順平はそのたびに手を止めて反応を見たが、洋太が嫌がったり抵抗することはなかったので、また恐る恐る作業を再開した。
拘束していた手首に残っていた赤いすり傷を消毒して、絆創膏を貼る時は再び胸がきりきりと痛んだ。初めて洋太と結ばれた時、もし本当に嫌な時は握り拳で背中を叩いて合図しろ、と言ったその手から、順平自身が強引に自由を奪ってしまった……。
洋太の服を元通りに着させた後、順平は部屋を施錠して、洋太を背負って大通りに出ると、タクシーを拾って寺に続く細い坂道の手前まで乗りつけ、そこから先はまた洋太を背負って、歩いて洋太の実家まで向かった。
玄関でびっくりしながら出迎えた洋太の母親に、「風邪気味で具合がよくないようだから連れて帰ってきた」と言い訳してから、二階の洋太の部屋まで運び、パジャマに着替えさせるとベッドに寝かせてやった。
夕食を一緒に、と何度も誘われたが固辞して、洋太の実家を後にした順平は、冴え冴えとした月に照らされながら、刺すように冷たい夜風が吹き付ける坂道を、淡々とした足取りで駐屯地へ向けて一人帰って行った。
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