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第3章

敵意が剥き出しだ

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 得意先の店を回る合間に、新しく営業2部に配属になった青木に電話を入れた。青木には、俺の客先をいくつか渡している。

「はい、青木です」
「おお、あれからどんな感じ? 担当者には会ってるか?」
「・・いえ。緊急事態宣言中ですよ? オンラインでは一度打ち合わせしましたけど」

 はあー・・。人のことを言えた義理じゃねえが、なんでこいつこんな感じ悪いんだよ。配属されて来てからずっと俺に対して感じが悪いが、副部長に昇格して直属の部下になってからは更に酷い。青木って、普段こんな感じ悪いやつだったのか?

「あっそ。まあ、営業の方針はお前に任せるけど、あそこの担当者、独特のクセがあるから連絡を密に取ってねえと急な対応を求められて大変だぞ」
「ああ、そういう感じで下に指示してくる人なんですね、茶谷さんって」

 苛つくわー。苛ついてしょうがねえよ・・。いや、我慢しろ、俺は副部長・・。

「指示じゃなくて、アドバイスって言うんだ、これは」
「余計なお世話じゃないですか?」
「・・・・」

 ああああ殴らせろ! 誰か俺に青木を殴ってもいいと許可をくれ。ああ赤堀、お前こいつ振って正解だ。あの普段爽やかな青木が、まさかこんなやつだったとは。
 いや落ち着け、俺。今、赤堀は俺の家にいる。そして俺の帰りを待っている。つまりこいつは負け犬・・。

「分かったよ、好きにしろ。俺はアドバイスしたからな。それをお前がどう捉えるかはお前の自由だよ」
「じゃあ切ります」

 食い気味に電話を切られた・・。こいつずっと運動部だったよな? 有名校の野球選手だよな? 上下関係とか厳しい所にいたんだよな? それで上司に対してこれか?


 1日の仕事を終え、これから家に向かう。今日は車で店舗を回っていた。赤堀が心配していたなと思うと、急ぐあまりスピード違反をしないようにとか、事故には気を付けて帰らなきゃなと気を引き締め直す。やっと一週間が終わった。ああ、早くあいつに会いたい。


 赤堀に青木の愚痴をこぼすのは男としてカッコ悪いんだろうか? こうなったら本性を知られて徹底的に嫌われてしまえと思う俺は、心が狭いんだろうか。

 管理職って、なんかやりづれえなあ。今迄部長のこと馬鹿にしてきたけど、これはこれでストレスが溜まる仕事だ。自分のことですら管理は難しいっていうのに、他人なんか管理できるはずがない。
 
 それに、青木がどうなろうが本当は知ったこっちゃない。あいつの営業成績が下がろうが、俺の築き上げた信頼が揺らごうが、あまり興味が沸かない。
 あえて指導なんかしなくても、あいつがやりたいようにやって、失敗しながら覚えればいいだろうと思ってる。

 俺は、目の前の仕事に向き合っている方が性に合うらしい。
 つまり、管理職には向いていないってことだな。
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