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第2章

年末の銀座飲み

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 今日は、赤堀を食事に連れて行くと約束した会社の最終日だ。兼ねてから行こう行こうと思っていた、銀座の鶏料理『鳥磨隆(とりまる)』のオーナー、佐久さくさんにメッセージを送る。

『大将~今日、2名で行きたいんですけど』
『茶谷さん!! マジっすか! あざます!!』
『混んでます? 時間とか決めて行った方が良いですか?』
『いつでも大丈夫です!』

 良かった。大将の鶏が食える。あの鶴女は鳥類同士で共食いになるけど。まあ、前回の日本料理でも肉を旨そうに食ってたから肉食なんだろう。若いし。

 大将の佐久さんとは、かれこれ3年くらいの付き合いだ。最初は佐久さんが有名店で修業していた頃の出会いだった。俺はたまたま取引先の営業担当に紹介されて、あまりにもいい店だったから時々通うようになった。佐久さんのノリとセンスが好きで、独立して『鳥磨隆』をオープンさせてからは、佐久さんの店にずっと通っている。

 最近は雑誌にもよく取り上げられるようになって、客が安定して来たらしい。本当に良かった。

 年末最終日はそこまで忙しくならなかった。トラブルも起きずに仕事納めになった。赤堀とは19時頃に新宿西口のロータリー待ち合わせにしたので、ひと足早く着いた俺は近くの喫茶店でコーヒーを飲んでいる。

 19時前に、赤堀から西口に到着したというメッセージを貰った。
 そっちに向かうと返信して会計を済ませ、赤堀が待っているらしい百貨店前に急いだ・・んだけど・・。赤堀が見当たらない。
 あの赤堀に限って、勝手に動き回るとは思えない。焦って周りを見回したら・・全然赤堀じゃない赤堀がいた。

 俺の中の赤堀結という女は、どこか女らしい格好を避けたような、身体のラインが出ない服を着る。ついでに言うと、髪型もキラキラ系の女子の雰囲気はしない。はずだ。
 なのに、目の前にいる赤堀は、Aラインの白いウールコートに細いブーツを履いている。ハッキリと身体のラインが出ているし、顔周りに緩く巻いた後れ毛を残した複雑なヘアスタイル。これは、気合が違う。

「お前・・また化けたな」

 ちょっと息が止まった。赤堀は、スタイルは良いと思っていた。やっぱり現代人は違うな、と感心はしていた。いや、だけど・・ここまで変わるか?

「茶谷さん・・」

 お前・・妙に目が濡れてるのはあざといな・・。計算か? そんな目で見るな、おい。

「今日、銀座にしよーぜ」
「えっ、私、ほとんど縁が無い町なんですけど!」
「だろーな」

 後輩との飲みだと思って、気軽に考えてたけど、こいつ俺のこと好きとか言ってんだよな・・。それで、ここまで気合入れて来たんだろうか。だとしたら、相当かわ・・いくねえよ。鶴がかわいいとか何だよ。鶴だぞ。

 新宿でタクシーを捕まえて銀座に向かう。隣にいる赤堀の雰囲気が別人で、妙な居心地だ。

「私、さっき・・告白みたいなものをされちゃいました」
「・・へえ?」
「でも、私には茶谷さんがいるし」
「いや、いねえだろ」
「もー、なんでそういう事言うんですか! 私の心には茶谷さんがいるんですー」

 告白か。青木なんだろうな。赤堀、そりゃ、勿体ねえよ・・。

「先輩後輩で良いって言ったよな?」
「言いました」
「じゃあ、別に誰と付き合ってもいいんじゃねえの?」
「良くないです」

 赤堀がハッキリと言い切るのを、不覚にもかわいいと思ってしまう。これ多分、相当疲れてんな・・。

 タクシーに店のある場所まで道を伝えて、佐久さん・・大将の店が入っているビルの前で降りて店に向かった。
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