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the 34th day 終わりの前に

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 カイがレナとの外出を前に、城下町をどう歩くべきか悩みながら着替えをしていると、
「ちょっと、今、話せる?」
 と、ロキがカイに声を掛けた。団員モードではなく、普段の関係で話がしたいということなのだろう。カイに対して敬語が消えている。

「ああ……どうした」
 その時、シンは隣の部屋で護衛に入っていた。

「一応聞いておきたいんだけど……あの人のこと、どう思ってる?」
「あの人ってのは、殿下か。別にどうと言われても……」

 カイはロキがレナを想っていることを知っている。2人で出掛けることが余程気に食わないのだろうと察した。

「誤魔化さずに教えてくれないと、こっちは困るんだよなあ」
「困る、か。任務に私情を挟むなと、日頃から言っているはずだが?」
「……ふうん、あくまでもその姿勢か」

 ロキはカイを睨んだ後、
「言っておくけど、納得してないから」
 と言い残し、隣の部屋に消えて行った。シンと護衛に入るつもりらしい。

「納得していないとは……何がだ……?」
 カイは首を傾げて身支度を終えた。


「殿下、カイ・ハウザーです」

 カイがレナの部屋を訪れる。レナはカイが来たことに期待と寂しさで複雑な気持ちを抱えていた。

「どうぞ」

 レナの声が聞こえたのでカイが扉を開けて中に入ると、前にも一緒に出掛ける時に身に着けていた綿のドレスに、ゆるく髪をまとめたレナが待っていた。

 レナは、カイを視界に入れた瞬間、無理をして微笑む。カイにも、それが心からの笑みでないことが分かった。

「言っておくが、この手の仕事は引き受けない主義なんだぞ。今回は1か月間の間に2回も受けることになったが……できれば感謝して欲しいものだが」

 いつもは明るく笑うはずのレナの隣に立ち、カイはそんな皮肉を言いながら腕を軽く開く。自ら腕を差し出したカイに驚き、レナは満面の笑みを浮かべてしがみついた。

「そうね、あの『騎士団長様』がここにいて、一緒にデートをしてくれるなんて、光栄だわ」
「……いや、あれは、フィクションであって俺じゃない」

 カイはそう言って苦笑するが、寂しそうだったレナがいつも通りに笑ったことを確認し、ほっとしていた。

「今日、結局行きたいところも、したいことも、ハッキリとは思いつかなかったの」
 カイの腕にしがみついて城内を歩きながら、レナは正直に白状をする。

「じゃあ、適当に歩けばいいのか?」
 城内を歩くレナとカイの姿を目にした使用人が、まるで仮装のように庶民に扮している2人に始めは気付かず、慌てて頭を下げていく。

「適当……ねえ。確かに一緒に歩きたいのはあるけど……」
 レナはそう言って考え込む。カイの腕にしがみついているだけで目標の大半は達成し、何もしなくてもこうしていられれば、とすら思った。

「城下町に行った時に花火を見た、『空間のはざま』に行ってみたい」

 レナは、あそこなら誰の目にも触れずに2人きりになれる、と、それだけを考えた。最後らしく、これまでのことを話したり、感謝を伝えたりしたい。
 あともうひとつだけ、レナには小さな企みがあった。
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