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the 30th day 帰ろう
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レナが身支度を終えてサーヤと宿を出ると、外には馬のクロノスとウレア、その脇にカイとサラがいた。
「おはよう、カイ、サラ」
レナが満面の笑みを2人に見せると、カイとサラはやっと王女は呪いから解放されたのだと安堵した。よく眠れたのか、顔色もすっかり良くなっているのが分かる。
「道のりは長いが、今日1日で城まで戻ろうと思っている。ただ、もし辛かったら無理するなよ」
カイはそう言うと、サーヤが持っていた荷物をクロノスとウレアに括り付け、レナの様子を気にしているようだった。
「ありがとう。ちゃんと護衛に甘えるから安心して?」
レナがカイに挑戦的な顔をして言うと、
「望むところだ」
とカイもレナに挑むような顔をした。
次の瞬間、2人はその顔を砕けさせ、互いに小さく笑う。
その入り込む隙の無い雰囲気を見て、サーヤは悟った。
例え叶わなくとも想っているつもりでカイ・ハウザーを見ていたが、所詮憧れに過ぎなかったのだ。
想いの浅さを思い知らされ、情けなさにため息が出る。
目の前の2人が築いている信頼関係は、恋などという言葉が軽く感じる程、深い慈愛を含んでいた。
(私、ハウザー様の何を見て来たんだろう)
サーヤの目には、そこにいる騎士団長が、急に全く知らない男性のように見えている。
(あーあ、あっけなかった)
全く眼中に入れられず、カイの主人であるレナに嫉妬心を抱いたサーヤの想いは、その時に完全に別の物に変わってしまった。
そんなサーヤをすぐ近くでサラが待っている。
「サラさん、帰りもお願いしますね! 私、結構ウレアの乗り方が分かってきたんですよ?」
サーヤは気を取り直し、帰路に向けて前向きになることにした。
「心強いわね! じゃあ頑張ってみる?」
サラが大きな口を開けて笑った。サーヤはその包容力に吸い込まれるように、
「サラさんん――」
とサラにしがみつく。
「あらあら、どうしたのよ?」
サラが急に抱き付いて来たサーヤに笑うと、
「私、なんか分かっちゃいました。もう……」
とサーヤは呟いてサラの大きな身体で顔を隠す。
「そう? 若いんだから、まだまだこれからよ」
サラはサーヤにそう言って、小さな子どもをあやすようにサーヤの頭を撫でた。
「大丈夫――?」
その2人の様子を少し離れたところから見ていたレナが、クロノスの背に乗ってカイに包まれながらサーヤを気遣う。
「はい、もう行きます……!」
サーヤはサラから離れ、慌ててウレアの背に乗ろうと焦った。
「おはよう、カイ、サラ」
レナが満面の笑みを2人に見せると、カイとサラはやっと王女は呪いから解放されたのだと安堵した。よく眠れたのか、顔色もすっかり良くなっているのが分かる。
「道のりは長いが、今日1日で城まで戻ろうと思っている。ただ、もし辛かったら無理するなよ」
カイはそう言うと、サーヤが持っていた荷物をクロノスとウレアに括り付け、レナの様子を気にしているようだった。
「ありがとう。ちゃんと護衛に甘えるから安心して?」
レナがカイに挑戦的な顔をして言うと、
「望むところだ」
とカイもレナに挑むような顔をした。
次の瞬間、2人はその顔を砕けさせ、互いに小さく笑う。
その入り込む隙の無い雰囲気を見て、サーヤは悟った。
例え叶わなくとも想っているつもりでカイ・ハウザーを見ていたが、所詮憧れに過ぎなかったのだ。
想いの浅さを思い知らされ、情けなさにため息が出る。
目の前の2人が築いている信頼関係は、恋などという言葉が軽く感じる程、深い慈愛を含んでいた。
(私、ハウザー様の何を見て来たんだろう)
サーヤの目には、そこにいる騎士団長が、急に全く知らない男性のように見えている。
(あーあ、あっけなかった)
全く眼中に入れられず、カイの主人であるレナに嫉妬心を抱いたサーヤの想いは、その時に完全に別の物に変わってしまった。
そんなサーヤをすぐ近くでサラが待っている。
「サラさん、帰りもお願いしますね! 私、結構ウレアの乗り方が分かってきたんですよ?」
サーヤは気を取り直し、帰路に向けて前向きになることにした。
「心強いわね! じゃあ頑張ってみる?」
サラが大きな口を開けて笑った。サーヤはその包容力に吸い込まれるように、
「サラさんん――」
とサラにしがみつく。
「あらあら、どうしたのよ?」
サラが急に抱き付いて来たサーヤに笑うと、
「私、なんか分かっちゃいました。もう……」
とサーヤは呟いてサラの大きな身体で顔を隠す。
「そう? 若いんだから、まだまだこれからよ」
サラはサーヤにそう言って、小さな子どもをあやすようにサーヤの頭を撫でた。
「大丈夫――?」
その2人の様子を少し離れたところから見ていたレナが、クロノスの背に乗ってカイに包まれながらサーヤを気遣う。
「はい、もう行きます……!」
サーヤはサラから離れ、慌ててウレアの背に乗ろうと焦った。
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