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the 10th day 油断大敵
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「ねえ、弟。ちょっと気になることがあるんだけど」
自室でハンに声を掛けられ、カイは朝食のバゲットサンドを咥えたままハンを見た。
「何? その食べてますけどっていう適当な感じ……まあいいや、ちょっとお城の中の人たちと色々話したりしてみて、引っかかってるっていうか」
ハンは何かを思い出しながら続ける。
「この国の人たち、これはなんとなくだけど、先王とそのお妃様のこと、あんまり覚えていないような気がしない?」
ハンに言われてカイは記憶をたどるが、あまり思い当たる節が無く、
「?」
と首を傾げた。勿論、口にはバゲットサンドが咥えられたままだ。
「それ、話聞く態度? シスターズが見たら喜ぶかもしれないけど、兄には通じないから」
ハンはそう言ってカイの背中をピシャリと叩いて部屋を出て行った。
ハンは力が強い。カイは危うくバゲットが喉に刺さるところだった。
(先王と妃を覚えていない…………確かに、殿下はそんな感じだった気がするが……)
それ以外の人間に、先王と妃のことをあまり深く尋ねたことが無かったので、ハッキリとみんながそうだとは思えないでいた。ハオルに先王のことを訪ねた時も、特に具体的な話は出なかったが、忘れいているような話し方はしていなかった気がしている。
ただ、ハンに言われたことが引っかかっているのも事実だった。何か、ここには何か欠けている要素があるような、不思議な感覚がある。
ロキが調べた王家の系譜にも、何故か事実が欠けていた。
意図的に、外部の人間に知られないようにしているのだとして、なぜ隠す必要があるのだろうか。国王の他殺にも関係しているのかもしれない。国王を暗殺した人間は、何故当時7歳のレナを残したのだろうかというのも気になっていた。
(王家自体が邪魔であれば、王女を葬る選択肢はなかったのだろうか…………。王女信仰があるということは、王女のみを残したということと繋がるのだろうか……)
シンとロキの情報も含めて総合的に判断したいところだったが、限られた時間の中で部下の2人がどこまでの情報を収集できるかは分からないことも想定している。部下の2人は優秀だが、ここまで謎に包まれていると一筋縄ではいかないだろう。
カイは、ふとその日に届いた朝刊に目を落とした。
『ルリアーナ王女の見合いに、ポテンシア第四王子が訪問』
大きく踊る題字に、カイは目を疑った。
(王女の見合いが娯楽になっているというのはこういうことなのか……)
記事を読むと、ポテンシアの第四王子が沢山の護衛を連れて王女の元を訪れたことが書かれている。丁寧にルイスのプロフィールまで載っていた。
(あの王子、どこか得体のしれないものを感じたな)
カイはルリアーナに積極的に協力を持ちかけた第四王子の印象を思い出す。レナの見合い相手には申し分ない条件が揃っているが、協力者としてはまだ底知れぬ何かを秘めていそうだ。
カイはざっと記事に目を通すと、ルリアーナの新聞記事に恐ろしさを感じていた。
自分が勝手に記事にされないように、誰に口封じをしておけばよいのだろうかと仕事以上に気になって新聞を畳む。
ルリアーナに来て以来、あまり注目されずに仕事ができていると思っていたが、案外油断はできないな、と思い直した。
自室でハンに声を掛けられ、カイは朝食のバゲットサンドを咥えたままハンを見た。
「何? その食べてますけどっていう適当な感じ……まあいいや、ちょっとお城の中の人たちと色々話したりしてみて、引っかかってるっていうか」
ハンは何かを思い出しながら続ける。
「この国の人たち、これはなんとなくだけど、先王とそのお妃様のこと、あんまり覚えていないような気がしない?」
ハンに言われてカイは記憶をたどるが、あまり思い当たる節が無く、
「?」
と首を傾げた。勿論、口にはバゲットサンドが咥えられたままだ。
「それ、話聞く態度? シスターズが見たら喜ぶかもしれないけど、兄には通じないから」
ハンはそう言ってカイの背中をピシャリと叩いて部屋を出て行った。
ハンは力が強い。カイは危うくバゲットが喉に刺さるところだった。
(先王と妃を覚えていない…………確かに、殿下はそんな感じだった気がするが……)
それ以外の人間に、先王と妃のことをあまり深く尋ねたことが無かったので、ハッキリとみんながそうだとは思えないでいた。ハオルに先王のことを訪ねた時も、特に具体的な話は出なかったが、忘れいているような話し方はしていなかった気がしている。
ただ、ハンに言われたことが引っかかっているのも事実だった。何か、ここには何か欠けている要素があるような、不思議な感覚がある。
ロキが調べた王家の系譜にも、何故か事実が欠けていた。
意図的に、外部の人間に知られないようにしているのだとして、なぜ隠す必要があるのだろうか。国王の他殺にも関係しているのかもしれない。国王を暗殺した人間は、何故当時7歳のレナを残したのだろうかというのも気になっていた。
(王家自体が邪魔であれば、王女を葬る選択肢はなかったのだろうか…………。王女信仰があるということは、王女のみを残したということと繋がるのだろうか……)
シンとロキの情報も含めて総合的に判断したいところだったが、限られた時間の中で部下の2人がどこまでの情報を収集できるかは分からないことも想定している。部下の2人は優秀だが、ここまで謎に包まれていると一筋縄ではいかないだろう。
カイは、ふとその日に届いた朝刊に目を落とした。
『ルリアーナ王女の見合いに、ポテンシア第四王子が訪問』
大きく踊る題字に、カイは目を疑った。
(王女の見合いが娯楽になっているというのはこういうことなのか……)
記事を読むと、ポテンシアの第四王子が沢山の護衛を連れて王女の元を訪れたことが書かれている。丁寧にルイスのプロフィールまで載っていた。
(あの王子、どこか得体のしれないものを感じたな)
カイはルリアーナに積極的に協力を持ちかけた第四王子の印象を思い出す。レナの見合い相手には申し分ない条件が揃っているが、協力者としてはまだ底知れぬ何かを秘めていそうだ。
カイはざっと記事に目を通すと、ルリアーナの新聞記事に恐ろしさを感じていた。
自分が勝手に記事にされないように、誰に口封じをしておけばよいのだろうかと仕事以上に気になって新聞を畳む。
ルリアーナに来て以来、あまり注目されずに仕事ができていると思っていたが、案外油断はできないな、と思い直した。
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