193 / 579
第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
寝起きのルーティンといざ決戦の地へ
しおりを挟む※この物語は作者の創作の世界になります。
他の作品の設定や、現実の倫理観とは
異なる場合がありますので予めご了承ください。
「う~ん……………」
私は寝ぼけ眼のまま、ふらふらとお風呂場に向かう。
眠気覚ましには熱いお湯が一番だからね。
別にそんな事しなくても目は覚めるけど、もはやこれは日課みたいなもの。
だって誰にもあるでしょう? そういう無駄な事。
やらなくてもいいんだけど、やった方が良い事って。
その方が気持ちも、気分もいいなんて事。
人間なんてきっとそんなものだよ。
それに無駄を全部省いたら、色々とつまらなくなるからね。
食事にしても、買い物にしても、
遊ぶにしても、生活するにしても。
そんな話。
「あれ、先に誰か入ってる?」
フラフラと洗面所に着いた時に水の音が聞こえてきた。
それに曇りガラス越しに、影が動いてるのが見える。
きっとユーアかな?
「珍しいね、私より先に入るなんて」
そう思いながら全裸になりお風呂場の扉を開ける。
ガララ
と、そこには、
「………………」
「ちょとナジメちゃん動かないでよぉ!きちんと洗えないからぁっ!」
「うぬぁっ!め、目が痛いのじゃっ!!助けてくれなのじゃっ!」
「ユ、ユーアっ!これ止まらねぇっ!どうすんだよぉっ!!」
扉を開けたお風呂場の中では、ユーアとナジメとゴマチの幼女三人組が、わちゃわちゃと仲良く入っていた。どうやら可愛い先客がいたようだ。
『……ああ、そう言えばナジメもゴマチも泊まったんだよね』
まぁゴマチは元々泊めるつもりだったし、ナジメは後から泊まりたいって言ってたんだっけ?そんでナゴタたち姉妹とラブナは自分のレストエリアに帰って行ったんだよね?そう言えば。
グッスリと寝過ぎて、まだ頭が働いてなかったよ。
「おはよう。何か満員みたいだから私後から入るね」
私はユーアたちにそう声を掛け脱衣所に戻る。
無理すれば入れない事もないけど、先客の子供達に迷惑になりそうだし仕方ない。あ、ナジメは子供じゃなかったね、そう言えば。
「あ、スミカお姉ちゃんっ!ボクとゴマチちゃんはお風呂に浸かるからしゃわーは使えるよ?だからナジメちゃんを洗って上げて」
脱衣所に向いた直後、お風呂場のユーアから声が掛かる。
「う~ん?それじゃそうしようかな」
私はユーアとゴマチが浴槽に入るのを見てお風呂場に戻る。
これなら充分に広い。
まぁ、元々大人3人分のスペースがあるからね。
子供数人なら問題ない。
「ね、ねぇねっ!は、早く洗い流してくれなのじゃっ!目が痛いのじゃぁっ!」
「わかったから目を擦らないでナジメ」
目を抑えジタバタするナジメにシャワーを掛け、泡を流し落とす。
それにしても――
『……本当にナジメは幼女だね。これで100歳くらいでしょ?』
私はナジメの体を観察してみる。
「も、もう目を開けてもいいじゃろうか?ねぇね」
うん、ユーアと一緒で凹凸が殆ど無いね。
しかも手足も小さくて、短いし。
そしてくびれなんてものは存在しなかった。
「ストン」と至る所がストレートだった。
『あ、でもお腹が少しポッコリしてる。ふふ、小さかった頃の妹を思い出すね』
私は微笑み、シャワーをかけながら、張りのあるお腹を押してみる。
「んひゃっ!?ね、ねぇね何をやっておるのじゃ?」
『おおおっ!!』
なんか今にも破裂しそうな程の弾力だった。
そのついでに手の平でサワサワしてみる。
「っ!?ねぇね? うひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」
『うん、思った通りにスベスベだね。ユーアと同じくらい。かな?』
色の白さはユーアが上。
ポッコリお腹の弾力はナジメが上。
肌のスベスベ感は――――引き分け。かな?
『まぁ、総合優勝はユーアで一人勝ちだけどねっ』
私はナジメの観察と感触を終えて、浴槽のユーアを見る。
「どうしたんですか?スミカお姉ちゃん」
そこには「うん?」と首を傾げるユーアと、
「ス、スミカ姉ちゃん、き、きれいだな……、長い黒髪も、彫像のような白い体も、細い腰も……、ブクブクブク――」
口までお湯に浸かって、何かを呟いているゴマチがいた。
「はぁはぁはぁっ、い、いったい何だったのじゃ?ねぇね……」
そして私の傍らには、涙目で息を荒げるナジメがいた。
※※※※
「それじゃみんな行こうか。案内よろしくねユーア」
私はラブナと一緒にハラミの背に乗るユーアに声を掛ける。
「はい、わかりましたスミカお姉ちゃん!」
そんな快活に返事するユーアとは対照的に、
「うう、何か緊張するわねっ」
「ラブナ、あなたが別に戦うわけではないでしょう?」
「そうだぞラブナっ!ワタシたちの事は心配するなっ!」
「そ、それもそうなんだけど、アタシ街の外にあまり出ないし、戦い見たのも数回だけだし、だから緊張するのは当たり前でしょっ!!」
とユーアの後ろのラブナは何故か顔が強張っていた。
そしてラブナの師匠の姉妹の二人に宥められていた。
「ラブナ、お主に危険な事は別に起きぬぞ?もし何かあったら、わしが颯爽と救い出してやるのじゃ。だから緊張はいらないのじゃ」
「いや、いやっ!そんなところにいるナジメに言われたって、ラブ姉ちゃんは安心なんかできないからっ!何だってそんなところにいるんだ!子供かっ!?」
最後は緊張するラブナに気を使うナジメと、それにツッコミを入れるゴマチ。
因みにゴマチの言うそんなところとは、ゴナタの肩の上だった。要は肩車だ。
そういうゴマチも、ユーアとラブナと一緒にハラミの背に乗ってるけど。
『ああ、ナジメは高い所が好きだって言ってたね。そう言えば。でも私と孤児院爆散した時は怖がってたような。あれは単純に高過ぎたのかな?』
何て考えながら、ゴマチも加えて賑やかなシスターズたちを眺める。
どうやらゴマチもみんなに打ち解けているようだ。
※※※
そんなこんなで、朝早くお風呂終えて軽く食事をし、ナゴタたちと合流し、
今はアマジの待つゴシキの森に向かう街の中を歩いている。
通りを歩いてると、色々な街の人たちに声を掛けられた。
朝の挨拶とか、何処に行くんだ?とかゴマチの事とか。
私たちはそんな街の人たちに当たり障りのないように返事をしながら、ワナイたちが守っている街門を抜け広い街道に出る。
ここからはユーアの案内でゴシキの森を目指す。
「みんな乗ったね?」
「はいお姉さまっ!」
「大丈夫だぞっ!お姉ぇ」
「ふむ、魔法で運ぶとは、……ねぇねはやはり凄いのじゃっ!」
「ユーアとハラミもお願いね」
「うん、ハラミあっちに行ってっ!」
『わうっ!』
姉妹たちを乗せた透明壁スキルの前を、ハラミに乗ったユーアが先頭に出る。
「それじゃ出発するよっ」
「「「「はいっ!!」」」
そうして私たちはここから東のゴシキ森に向かってスピードを上げるのだった。
私の誇りと妹たちを守る事。
そしてそこにある真実を知る為に。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる