上 下
90 / 579
SS双子姉妹の追想

ぺろぺろ魔物に全員完敗!?

しおりを挟む



「ね、ねえっ、ナゴタとゴナタ、二人とも、こっちに来てくれる?」


 シルバーウルフに覆い被さられ、揉みくちゃにされながら、二人を呼ぶ。


「え、はい、承知しました」
「うん、わかったよっ!」

 二人は返事をしながら、私の近くまで来てくれた。

 途端、

『!? ばぅっ!』

「きゃっ!?」
「あ、ナゴ姉ちゃんっ!」

 シルバーウルフは、近付いてきた姉妹に気付いた途端に、姉のナゴタに覆い被さり、私がされたように至るところを舐められてしまう。


『わうっ! はっはっはっはっ!』

 ペロペロ ペロペロ

「あ、あなたは、一体何をっ! って、どこを舐めているのですかっ!? そ、そんなとこまで舐め上げないでくださいっ!? ちょっ、なぜ、そんなところに、か、顔をっ!? ま、待ってっ!あまり調子に乗ってると、痛い目に合―― あああああっ! そ、そこは、私っ弱、いっ! んんんんんっ!?――――」


「……………………」
「~~~~~~っ!」


 なぜだろう。

 やられている事は私と同じはずなのに、何故かいけない気持ちになるのは。
 一瞬にして、そんなアダルトな空間が出来上がってしまう、なんて。

 私の場合はきっと、大きな犬にじゃれられる子供みたいな感じなんだろう。

 だけどナゴタがやると、思わずモザイクカラーの透明壁で覆い隠したくなる。
 もちろん、視聴制限年齢ありで。


「………………次は、ゴナタね」


 そんなナゴタの光景を見ながら、そわそわしている妹のゴナタに声を掛ける。


「えっ? えええええ――――っ! ス、スミカ姉っ!?」
「なんて、冗談だよ」


 私の言葉に焦っているゴナタに、そう返事をしながらアイテムボックスより、先ほど顔を拭ったタオルを出して、ナゴタに覆いかぶさっているオオカミに近づけてみる。


 すると―――

『ばうっ!』

 そのオオカミはすぐさまナゴタより体を浮かし、そのタオルに顔を近づけ、匂いを嗅いだり、顔を摺り寄せたりしている。

 相変わらず、フサフサの尻尾はブンブンと振られたままだ。


「ふぅ~、ふぅ、助かりました。スミカお姉さまっ。はぁ、はぁっ」

「……………………」
「~~~~~~っ!」

 そう言って、オオカミのペロペロ攻撃から解放されたナゴタは、顔や首筋、胸元まで、テロテロに濡れ光っていた。
 胸元なんかドレスがちょっと乱れてるし、胸の峡谷が深いのも見えるし、きれいな顔も上気してるし。


『ま、まあいいっ、そ、それよりも、これでなんとなくわかったよ』


 未だに嬉々としてタオルにじゃれる、シルバーウルフを見てそう呟いた。


※※


「スミカお姉さま、ありがとうございます」


 ナゴタはお礼と一緒に、使い終わったタオルを差し出してくる。
 タオルはシルバーウルフの唾液でベトベトだった。


「それとも、洗ってお返ししましょうか? そんなに、汚れてしまって……」

 受け取ったタオルを、指先で摘まんでいたのを見て、
 申し訳なさそうにしている。


「ううん、別にいいよ。ナゴタを呼んだのは、私だから」

 私はそんなナゴタに、そう返事を返す。

 レストエリアに入れば、洗濯機があるから洗うのも簡単だし。
 乾燥までして、ふんわりと仕上がるから。とも思ってみたり。


「そうですか、ありがとうございます。それとこのシルバーウルフですが、一体?」

「ああ、多分『匂い』に釣られてきたんだよ。嗅いだことのある匂いに」

「匂いですか? それは一体なんの匂いなのでしょうか?」
「確かにずっと、タオルの匂いを嗅いでいるなっ!」

 未だにタオルをクンカクンカしている、シルバーウルフ。

「私と一緒にいる、小っちゃくて可愛い少女の匂いだと思うよ」

「そんな方の匂いがなぜ、こんなところに?」
「うん、しかも、かなり気に入られてるみたいな感じだなっ!」

「あ、え~とねぇ」

 その二人の疑問に答える為に、もう一枚のタオルを出す。
 もちろんこれも使用済みのものだ。


「この使い終わったタオルに、その少女の匂いが移ってるんだよ。それで、ナゴタもゴナタも、私が渡した時に、顔や首筋まで拭ったでしょ? このタオルで。だからあなた達にも匂いが付いちゃったんじゃないかな? もちろん、私もだけど」

 そう説明をし、再度タオルの匂いを嗅いでみる。

『ふあぁ~』

 ユーアの甘い匂いが微かにする。
 赤ちゃんみたいな、甘い粉ミルクの香りが。


「え、そうなのですか? ならなぜ、その匂いをこのシルバーウルフは気に入ってるんでしょう?」
「あっ!ワタシ。顔だけじゃなく違うところも拭いたんだけど」


「あ~、そこまではわからないかな? でも何かそのオオカミにしたんだと思う。気に入られるような何かをね。それは本人に聞いてみないと分からないなぁ」

 シルバーウルフの、柔らかそうなタテガミを見ながらそう答える。
 触ったら気持ちよさそうだ。色もユーアの髪と一緒の色だし。

『まあ、ユーアはあの性格だから、大体は予想はつくけどね』

 なんて、心の中では思ってみたりする。
 ただ確証も何もないので、ここでは言えないけど。


「それよりそろそろトロールの討伐に向かおうか? このオオカミはこのままでも大丈夫そうだし…… ってあれ?」

 気が付くと、目の前にいたオオカミが消えていた。

「うわっ! ちょ、ちょっとっ!」

 そんなオオカミは、今度はゴナタに襲い掛かっていた。

「もうっ! やめてくれよっ!」

 襲われているゴナタは、内股になって手で塞ぎ、太ももをガードしている。

「うわっ!?」

 だが、全てを隠しきれるはずもなく、執拗な接触に難なく突破されてしまう。


「うんんんっ! ちょっとくすぐったいよっ! や、やめ、内側にその顔突っ込むなっ! って、ベロベロするなっ! ざらざらして気持ち――― んんん~~~ やめろぉ~~っ!」

『がう~~っ!♪』


「…………なんで、太ももをペロペロされてんの? ゴナタは」

 またもや変な空間を見せられる私。
 その原因を姉に聞いてみる。
 

「…………はい。妹は貸していただいたタオルで太ももを拭いていたからです。あの子はホットパンツで素足を出していましたから、汚れが気になって拭いていたんです。それでだと思います」

「………………なるほど」

 その返答に納得し、軽く頷く。
 さっき違うとこ拭いたとか言ってたから。


「み、見てないで助けてくれよぉ~~っ! もうっ! あんんっ!――――」


 これで全員が、あのペロペロオオカミの餌食になった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

全てを諦めた令嬢の幸福

セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。 諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。 ※途中シリアスな話もあります。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...