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第4蝶 初めての街探索編

初めての夜とお買い物

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 ユーアと一緒にお風呂から上がる。

 やっぱり一日の終わりはお風呂だよね。

 引きこもっていた黒い時代も、私は毎日湯舟には浸かっていた。
 お風呂に入る事によって、体も気持ちもリセットできるからだ。


 ユーアの格好はパジャマ姿ではなく普段着ている貫頭衣の薄手のものだ。
 そして腰ひもは結んでいなく、ゆったりしている。

 私はアバターのインナー姿の、黒のキャミソールと下着だ。

 お風呂上がりのドリンクレーション(ブドウ味)をユーアに渡して寝床の用意をする。と言ってもアイテムボックスよりシュラフを出すだけなんだけど。

 とりあえず二人分用意して広げる。
 ユーアも手伝ってくれた。

「これ、お布団なんですか?すべすべしてて柔らかいです」

 女の子座りでぺたんと座ったユーアは、手触りを確かめて聞いてくる。

「ん――、布団よりは固いけどね。ただ疲れは取れるよ」

 これもゲーム内アイテム。
 使用している時間に比例して体力を回復するものだ。

「それよりも、どう? きれいになったでしょう?」

 私はツヤツヤになったユーアの肌や髪の毛を触る。

「はいびっくりしましたっ! こんなボクでもきれいになるなんてっ!」

 先ほどからユーアはちょこちょこ自分の髪を触ってみたり
 手足を眺めてたりしていた。

「あれは、せっけんなんですか?ボクが知っているせっけんとは違うみたいですが」

 この世界にもせっけんはあるらしい。
 そしてきっと高額なのがお決まりだ。

「そうだね、石鹸みたいなものだよ。でも普通の石鹸ってどんな感じなの?」

 なんとなく聞いてみる。

「普通のせっけんはちょっと臭います。体は洗えないです。お皿を洗ったり、お洋服を洗うのに使っています。ただ高いせっけんもあるのですが、ボクは見たことないです」

「ふ~ん、そうなんだ」

 臭いってのは、動物とかの油から作ったりするのかな?
 それか料理に使った後の廃油とか。

 まぁ石鹸の歴史なんて興味ないからもうこの話は終わり。


「あ、それとユーア。ちょっと明日は早く起きてもらってもいい?」
「はい、いつ頃ですか?」
「ん――、そういえばこの街のお店とかは何時から開いてるの?」
「時間はわからないですけど、辺りが明るくなってからは開いてるよ」
「そう、それじゃ明るくなる少し前に起きようかっ」
「はい、わかりましたっ!」


 この世界の住人は起きるのが早い。
 朝日や鶏の鳴き声が目ざめの合図なんだろう。恐らく。

 そんな時間。元の世界の私だったら寝る時間だよ。


「それで午後からは冒険者ギルドだから、午前中はユーアに街の案内を頼むね。ギルド終わってからは――――その時に決めようか?」

「はいわかりました!ボクがスミカお姉ちゃんを案内しますっ!」
「うん、よろしくね」

 元気に手を上げて返事するユーア。

「それじゃ、明日は早いからもう寝ようか」
「はい、スミカお姉ちゃん」

 私はレストエリアの灯りを暗くする。

『………………』

 そして目を閉じ一日を思い出す。

『今日一日で色んなことが沢山あったなぁ……』

 起きたら異世界にいたり、ユーアに会ったり、ルーギル達に襲われて返り討ちにしたり、ギルドに着いてはランクC冒険者に絡まれたり、ユーアの住む家にきてみたり。


 目を開けて隣のユーアを見てみる。

『ユーアもきっと疲れたんだね?』

 横になってからすぐに可愛い寝息が聞こえていた。

 そりゃそうだよ。まだ子供なのに魔物に襲われて死にそうになるし、森の出口で襲われるし、知らない家に招待されるし、ね。

『少しはユーアを守れたのかな? 私はユーアの為になっているのかな?』

 私はきれいになったユーアの髪を撫でながら目を閉じた。


 明日もユーアと一緒の世界が眩しいものでありますように。



◆ ◆ ◆ ◆




 ♪♪♪ ♪♪  ♪♪♪♪   ♪♪

 私はいつもの目覚ましの音楽で目覚めた。

 「ふわぁ――」と軽くひと伸びする。
 一先ずお風呂に入ってご飯を食べよう。

 お風呂場に向かう前に冷蔵庫をみる。
 先に冷凍食品をチンしておきたいからだ。

『?』 あれ?空っぽだ。

 冷凍食品が一個もなかった。
 たしかまだ10食以上はあった筈なのに……

 はぁ、だったらお風呂してから注文しよう。
 なので今朝はカップ麺で我慢するか。


 次に私は目を覚ます為に、お風呂場に向かう。

 すぐさま熱いシャワーを浴びる。

『♪』

 ふぃ――気持ちいいね。
 気持ちよくて自然と目を閉じる。


『?』

 なんかパタパタと音が近づいてくる。

『ん?』

 私は気になって目を開ける。

 そして勢いよく扉が開かれる。

『あれ?』

 私がいるここって――――


「スミカお姉ちゃん、目が覚めたらいきなり裸になってお風呂行くんだもん、びっくりしちゃった!お外はもう明るくなっちゃうよ?」

「ああ――、ま、まだ時間あるから、ユーアも一緒に入ろうかっ?」

 寝ぼけてたのを悟られないように、ユーアにそう提案する。

「う、うん、スミカお姉ちゃんが、そう言うならいいけど」

 そうして二人一緒にシャワーを浴びる。

『………………』

 ふぅ、危ない危ない。

 現実と同じメロディのタイマーにしていたから勘違いしてた。
 朝早いから、念のためにメニューのタイマーをセットしてたの忘れてた。

 なるべく早く起きて、レストエリアを収納したかったのに寝ぼけて間に合わなかった。誰かに見つかって騒がれなければいいけど。

 一応、雑木林で影になる所を選んだつもりだけどちょっと心配だった。


 私たちは着替えてから、レーションを食べて外に向かう。

 ユーアは相変わらず美味しそうに食べていた。朝からお肉だった。
 私はスティックタイプですました。


 外に出ると幸い周りには人影がなかった。
 日はもう殆ど昇っている。

 とりあえず、今のうちにレストエリアを収納する。これで安心だ。
 ユーアは出した時と同じように、また驚いていた。


「それじゃ、ユーア、色々街を案内してちょうだいね」

「はいっ!最初にどこに行きたいですか?」

「そうだね。最初はアイテムを買取できるようなお店あるかな? でもこの時間で開いてるの?まだ日が出で少ししかたってないよ?」

「大丈夫だと思います。着くころには開いていると思いますよ。それじゃこっちです!」

 ユーアは私の手を引き笑顔で歩いていく。

「あれ、そういえば、孤児院に昨日の稼ぎは寄付にいかなくていいの?」
「はい、そうなんですけど、この時間はまだ忙しいから帰りにします」


 私たちは、教会、孤児院と抜ける。
 そして各ギルドが集まるエリアの少し東に位置したエリアに着いた。

 そこには武器、防具、鍛冶屋、雑貨屋、服飾屋
 など多数の店が並んでいる。

「スミカお姉ちゃん、買取だったら、ここでできますよっ!」
「うん」

 ユーアは小走りに一つの店の前に行く。

 私はユーアの隣に並んで、お店の外観を見てみる。


 『ノコアシ商店』

 そう書いてある。

 店自体の大きさは、他の並んでいる店に比べれば小さい方だ。
 ただ、2階にも窓があるからもしかしたら2階も売り場かも。


 いやそれよりも――――


 『い、一体これっ! 何屋さんなのぉ――――っ!!』


 あまりの店のカオスっぷりに、私は心の中で盛大に突っ込んだ。




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