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スライム討伐編
エンドの新衣装と見えない給仕係
しおりを挟む「???」
こくこく
私は一先ず、新しく注いであった紅茶を飲んで心を落ち着かせる。
気が付いたらそこにあった、その摩訶不思議な紅茶を口に含んで。
「ぶふぅ~っ! って、のんびりお茶してる場合じゃないってっ!」
思わず吹き出し叫びだす。
「がう? モグモグ、さっきから何を騒いでるんだよ、フーナ姉ちゃん」
そんな私を奇異な目で見ているアド。
「いや、いや、これが騒がずにいられるかって~のっ! だって気付いたら紅茶もケーキもあるんだよ? おかしいとは思わないの、アドはっ!」
未だに美味しそうに、ケーキを頬張っているアドに抗議する。
「モグモモゴ、モグ?」
「いや、もう何言ってるかわからないんだけどっ!」
「ゴクンッ。でも美味しいからいいじゃないか。紅茶もケーキって奴も」
「って、それはそうだけど…… いや、味の話じゃなくて、これおかし――――」
って、最後まで私の主張を言おうとしたけど止めた。
だってこの子(ドラゴン)天然だし、細かい事気にしなさそうだし。
『はぁ、きっと、その大きいお乳にみんな持ってかれたんだよ。賢さを』
なんて、無邪気に食べ進めているアドの揺れる胸を見て勝手にそう決めた。
――
『に、しても、さすがに正体を知らないと不安だよね? そもそも私たちの愛の巣に、他人が住んでいるなんて、色々と気になっちゃうし』
あんな事や、こんな事をしてるのを知られても嫌だし。
「だったらっ!」
ゴクゴクゴクゴク
ムシャムシャムシャ
一心不乱に出されたものを食べて完食する。
グラスやお皿を全て空にする。
『ふふんっ! 全部食べちゃえばきっと補充に来るから、だからその隙を逃さないようにしないとねっ! 姿を現したら捕まえてやるんだっ! これで完璧だねっ!』
私は天井を仰ぎ、その考えに酔いしれる。
見た目は幼女だけど、中身は頭脳明晰な立派な大人だ。
そう。
これは作戦なのだ。
テーブルの上の物を無くしてしまえば、きっとお替りを用意しに来る。
そこを発見して捕獲するだけの簡単な作業。
だったんだけど――――
「フーナ姉ちゃん、冷めちゃうから飲まないと勿体ないぞ? がう」
「え?」
アドの声で我に返る。
「冷めちゃうって………… ああああああっ!」
しまったぁ~っ!
私の目の前。そこには、
湯気の立つ淹れ立ての紅茶と、きれいに切り分けられたケーキがあった。
「ああ、もうっ! わたしのバカっ! なんで調子に乗っちゃったんだろうっ! なんだよ、自分に酔いしれるってっ! もう~っ!」
両手で頭を押さえて、天を仰ぎ絶叫する。
なんでカッコつけて天井なんか見ちゃったんだろうって。
「? モグモグ」
そしてそれを横目に何事もなかった様に食べ進めるアド。
ガチャ
「ん、フーナさまうるさい。もっと静かに」
「そうよ、フーナの声が廊下まで聞こえたわよ?」
更に、帰ってきたアドとエンドに叱られる私。
――
メドと部屋を出て着替えてきたエンド。
その姿は――――
「あんまりジロジロ見ないでよフーナ。我はあまりこういった物は着ないのだから」
黒い頬を僅かに赤く染め、モジモジと体を揺らすエンド。
「いや、いや、十分可愛いってっ! 思わず頬ずりしたくなるもんっ!」
「ん、似合う」
「おおっ! エンド姉ちゃんっ! きれいだなっ!」
そのエンドの晴れ姿を見て、三者三葉の賛辞を贈る。
そんなエンドの衣装はというと、
「く、何だかむず痒いわっ! いい加減にこっちを見るのは止めて」
ゴスロリチックな白と黒のメイド衣装だった。
しかもドレスヘッドを被ってのフル装備だった。
「いや~、まさか色黒エンドがメイド服とはねぇ~っ! 自分の事、我とか言ってるのに、そんな可愛いのが趣味だなんて意外だったなぁ~っ! 見る人が見たら十分ご褒美だよっ!」
「こ、これが我の趣味なわけないでしょっ! 我はもっとシックな…… はっ!?」
「………………」
急に言葉尻を止めるエンドの脇には、それをコーディネートした無言のメドがいた。
「あ、あの、メルウ、我は決して、この衣装が嫌なのだと――――」
「ん、ワタシも悪いと思った。でも合うサイズがそれしかなかった。その中でもそれが一番似合うと思った。ごめんなさい」
隣に立つメドに、慌てて言い訳の様に話すエンド。
それを遮って頭を下げて謝るメド。
「そ、そんなっ! メルウが悪い訳ではないわっ! 我はこれが気に入ったから文句を言わずに着ているわっ! ほら、似合うでしょう?」
早口で捲し立てた後、スカートを摘まんで優雅にお辞儀をするエンド。
カーテシーと呼ばれる挨拶だろうか?
「おお~っ!」
「がうっ!」
パチパチパチパチ
その出で立ちを見て、自然と拍手をしてしまう。
背がちんまくてあまり迫力はないけど、なぜかロリカッコいいっ!
それに色黒の肌に、白のアクセントのメイド服が絶妙にあっている。
「…………」
「ね? フーナもアドもこんなに気に入ってるんだから、わ、我も気に入ってるのよ?」
言い聞かす様に無言のメドに話す。
「ん、やっぱりワタシの目には狂いはなかった。ん、似合ってる」
そんなメドはジト目のままで、若干照れているエンドにそう答えた。
「そ、そうよね、これが正解だわっ! だからこれからもよろしくね、メド」
「ん」
そんなやり取りの後で、手を取り合って笑顔になる二人。
どうやらお互いの言いたい事を伝えられたようだ。
『ふふふ、二人とも可愛いね~っ!』
仲睦まじい姿の二人を見て心からそう思った。
コクコク
そんな二人を見ながら、飲み干したはずのカップに手を伸ばす。
「あ」
そして思い出した。
カップの中が、また湯気の立つ紅茶で満たされていた事で。
「あああああああっ――――――!!」
「ん、だからフーナさま、うるさい」
「がう、フーナ姉ちゃんなんだよっ!」
「はぁ、さっきから一体何なのよ、フーナは」
再度、絶叫を上げる私に、またクレームが来る。
「あのさっ! わたしってこのお屋敷の主だよね?」
「ん、フーナさまがここの持ち主」
メドがいの一番に答えてくれる。
「だったら、なんでわたしが知らない何者かがこのお屋敷にいるのっ!?」
「ん? 知らない何者?」
「そうだよっ! さっきから気付いたら勝手に紅茶が―――― え?」
「ん、ありがとう。シーラ」
突然現れた、その存在を目の当たりにして固まる。
メドが空のカップを横に差し出した瞬間、現れたその存在に。
「ん、後はエンドの部屋を用意して」
「ひゃ、ひゃいっ! メドさまぁっ!」
「………………」
「ん、それとお風呂の用意も」
「ひゃいっ!」
スタタタッ――――
そんな普通のやり取りをした後で、突如現れた見た目幼女は去って行った。
しかもその格好は、何故か『裸エプロン』だった。
「あ、あ、あのさっ! さっきの子供はっ!」
謎の幼女が出て行った扉を見ながらメドに問いただす。
「ん、紹介遅れた。あの子はお手伝いの『シーラ』 あれでもドラゴン」
「え?」
ええええええええ―――――っ!!!!
ま、またドラゴンが仲間になるのっ!?
しかもなんでいつも幼女ばかりなのっ!
『はぁ、私的には嬉しいんだけど、展開が早すぎるよ。だってエンドが今日会ったばかりだよ? アドだって一日しか経ってないし。くふふ』
溜息をつきながらも、ちょっとだけニヤニヤしてしまう。
『むふふ。だってあんな過激な格好のお手伝いさんなんだもんっ! そりゃ、色々と妄想がはかどっちゃうよね? ぐふふふふ――――』
去り際の可愛いお尻を思い出して、更に期待をしてしまう私だった。
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