22 / 41
メドと合流と挨拶と
しおりを挟む「フーナさま。これは一体……」
地上に降りてきたら、メドが珍しく目を見開き驚いている。
冒険者のギルドの建屋があったであろう
今はただのデカい水溜まりを見つめて。
「ち、違うんだよぉっ!わざとじゃないんだよっ!だってメルウちゃんが出てきて、メドがいなくなって、それで鳥さんがわたしを――――」
私はそれに対しブンブンと長い袖を振って言い訳する。
「ワタシが出て、いなくなって?フーナさま適当な事言わないで」
と、ジト目を更に薄めて私を鋭く睨む。
「ち、違うんだってっ!メルウちゃんは脳内の女神でメドはメドでしょっ!だから別人なんだよぉっ!」
あわわと説明するけど自分でも何言ってるか分からない。
こんな時まで女神のメルウちゃんは私を困らせる。
「もういい。アド、ワタシたちは一度離れよう」
そう言ってアドの手を引いて私に後ろを向け歩いていく。
「メ、メドぉ!私を置いてかないで!見捨てないで!せっかくメドに会えたのにっ!なのに、う、うわわわんっ!」
私は頭を抱えて蹲り大泣きする。
止めようと思っても止めどなく涙が溢れてくる。
幼女の姿になってから本当に情緒不安定だ。
やはりこの姿に子供らしさが引っ張られているんだろうか。
女神のメルウちゃんを見てウキウキし、メドの美しい幼女姿を見てドキドキし、アドのロリ巨乳を見てワクワクしてるし。
って、これは元々だった気もしないわけでもないけど……
それでも感情の起伏をコントロールしずらいのは本当だ。
「お、おいフーナっ!それと白い幼女と青い……幼女?」
そう声を掛けてきたのはロリ男だった。
なんでアドで幼女呼びを言い淀んだのかは、きっとあの容姿に不釣り合いな大きな胸を見たからだ。
やはりこの男はロリコンだ。
私たちには危険な存在だ。
「何?」
「何だ?」
メドとアドはロリ男の呼びかけに仲良く後ろを振り向く。
その繋いでる手の間に私も入りたい。
「そのぉ、そこの白い、えーと――何て呼べばいいんだっ!?」
「メドでいい。そう名付けてもらったから」
「そ、そうか変わった名前だな俺はルーギルだ。で、そっちの青いのは?」
「俺はアド」
「俺?お前も変わった名前だなっ!それと俺って。そんなデカいむ――」
「それで何?」
ルーギルと名乗った冒険者風な若い男は、アドの胸部に目を奪われながら何か良からぬ事を口走りそうになったところで、メドが話に割って入る。
「あ、何かお前ら知り合い同士だろ?フーナと魔法使い同士で。だから礼と、それと何か勘違いしてるっぽいから、それの説明もしようと思ったんだよっ」
ルーギルは私とメドとの間に入ってそう口を開く。
「で、だ。取り敢えず、メドだったな?お前には礼を言いたい。ここら辺りを魔法で守ってくれただろっ?そして街の人間もなっ」
「……人間と共存するのは当たり前。持ちつ持たれつだから。だからワタシは守った。別に礼を言わなくてもいい」
メドが珍しく長く話したけど、めっちゃカタコトだった。
やはり会話は苦手なんだろうか?
まぁ、いきなり流暢に話されても、それはそれで引くけど。
ジト目幼女には無口が似合うからね。
「人間?何かお前も変わってるなっ?まぁいいや。それでも救ってもらった事には変わらねぇ。だから礼を言いたかったんだっ、ありがとなっ!」
頭の後ろに手を回しながらルーギルはもう片手をメドに伸ばす。
それを見る限り、握手でお礼を伝えたいんだろうとわかる。
その顔はちょっと照れたようで、でも真摯な目でメドを見ていた。
きっと心から感謝しているんだなと思う。
「ん、わかった。アド、ここで待ってて」
「わかったメド姉ちゃんっ!」
メドはアドにそう断り、手を差し出してるルーギルに近づいていく。
「良くやってくれたなっ!フーナもお前にも――」
ルーギルはそう言いながらメドを出迎える為に笑顔で近づく。
そして、
メドの白くて小さな手と、ルーギルの黒くて大きな手が触れあい握手を交わす。
「――世話になった!本当に助かったぜ。にしても――」
と、誰もがそう思っていた。
「――フーナもお前も凄い魔法使いなんだ――なはぁっ!?」
ガシッ
ブンッ!
二人が手を握り合った瞬間、メドの前からルーギルの姿が消えていた。
消えたというか、超高速で真横に飛んでいった。あり得ない速度で。
「えっ!?」
ビュンッ!
ドゴオォォォォンッ!!!!
「ふごぁっ!!」
「いいいいいいっ!!!!メ、メド何やってんのぉっ?」
そんな破壊音と絶叫が元冒険者ギルド前の建屋から聞こえる。
それはメドと握手したルーギルだった。
「ルーギルっ!」
「ちょ、ルーさん大丈夫すかっ!」
「うわぁっ!ル、ルーギルあんた大丈夫っ!?」
建屋に激突したルーギルに、
冒険者ギルドの人たちが駆け寄り声を掛ける。
この3人の人たちも無事だったんだ?
ってそれよりも――
「メ、メドっ!な、何でロリ男吹っ飛ばしたのぉっ!?」
私はそんな奇行に走った張本人のメドにホバーで近づく。
「何って?ワタシはただいつも通りに――」
そんなメドは何故かキョトンと不思議そうな顔をしていた。
何かワタシした?みたいな。
にしても、良く分からない事を言ってる。
いつも通りって、人ひとり吹っ飛ばすのが?
「な、何って、何でロリ男にあんな事したのぉ!握手してたんじゃなかったのっ!!ロリ男戦ってもいないのに、もう2回も吹っ飛ばされてるよっ!もうボロボロだよぉ!!」
まぁ、その内の1回は私だけど……。
「あくしゅって何?フーナさま」
「へ?」
握手知らないの?
「ワタシはドラゴンの挨拶で返しただけ。そしたらあの男が吹っ飛んだ。ワタシはそんなつもりなかった」
「え、それって――――」
ドラゴン特有のコミュニケーションの取り方があるって事?
「そ、それってどうやるの?手を握って投げ飛ばすの?」
「ん、なら実際にやってみる」
そう言ってメドは私の前に近づき、手を握る。
かと思いきや、
「へっ?」
私を軽く抱き寄せ、お互いの首筋に合わせてスリスリしている。
メドの温もりと匂いが私の頭を急激に沸騰させる。
「ちょ、ちょっとメド、こ、こんなところでっ!」
「みんな見てるよっ」と言いながら抱きしめ「クンカクンカ」する。
肺いっぱいにメドの成分(体臭)を取り込む。
「はっ?」
ってこれ何か違くない?
どうやっても私は吹っ飛ばないよね?ロリ男みたくは。
これで吹っ飛ぶのは私の理性だけだよね?
「あ、あのメドこれって?……」
「ん、これがメス同士の挨拶」
メス同士?
「じゃ、じゃあ、オスもあるの?何か違うの?」
私は非常に名残惜しいけどメドから体を離して聞いてみる。
「ん、オスは翼どうしを合わせて払うの」
と私の手に触れて、すぐさま「パン」と弾く。
チョットだけズシリとした。
「こんな感じ」
「………………」
なるほど良く分かった。
と、言っても深い意味までは分からないけど……
同性には首を擦り付けて、
異性には翼を合わせて弾く。
それでロリ男は異性だから翼の代わりに手で払ったんだ。
そして堪えきれずに吹っ飛ばされたんだ。
メドは人型になっても力はドラゴンのまま。
加減が難しいから面倒って言ってた。
屋敷の物を壊しちゃうからって。
「なるほどね……」
私は冒険者ギルドの人たちに開放されている
ロリ男を見てそう思った。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる