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お風呂解凍中

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前回のあらすじなの

青いドラゴンの正体は、フーナお姉さん好みの幼女だったの。
お邪魔気味な女神のメルウちゃんも追い払って、またフーナお姉さんの悪い癖がでたんだけど、目を覚ました青いドラゴンは何やら記憶をなくしてる様子なの。



「お、お、お、お、お前は誰だっ――――」

「ねえ、アド。もう私は敵じゃないよ?お姉さんだよ?」

 私は混乱して絶叫を上げるアドにわたわたとお姉さんアピールをする。

 私は敵じゃないよぉ! あなたを愛でるだけのお姉さんだよぉっ!!


「ね、ねえ、アド大丈夫?自分の名前言える?」
「ビクッ!?」

 少し、じゃなく、かなり近寄って触れるか触れないかの距離で聞いてみる。

 『俺は何者だぁぁっ!』て言ってたし。


「ね、ねえっ?」
「~~っっっっ!!」
「あ、アドどこ行くのっ!?」

 アドは声を掛けた私と目が合った途端に脱兎のごとく走り出した。
 その際に、たわわな物が揺れたのを私は見逃さなかった。

 私やメドが持っていない立派な物を。

 ぷるん、ぷるん、

 タタタッ!

 と、その向かう先は……


「…………どうしたの?このドラゴン」

 何故かメドの後ろだった。


※※※※※


「がるるるっ!!」
「~~~~~~うううっ」

 なんでだろう?

「がるっ!」
「~~~~~~ぐすっ」


 アドはメドの後ろから出て来たはいいが、私を威嚇するように吠え立てる。
手を出そうものなら、食いちぎられそうな勢いだ。こ、こわい。

 今は女の子座りしているメドに、アドが抱き着いてる。

 時折メドの胸に顔を埋めては、安心し嬉しそうな表情になる。
 私を見る目とは大違いだ。


「よしよし」
「♪」

 そんなアドをメドは撫でていた。

 そこは私の居場所( 予定 )だったのに…………

「………………」

 おかしい。確かメドと戦ってた筈なのに。


「ね、ねえ、アドっ」

「がるるっ!」

「うひぃっ!?」

 ダ、ダメだこれは、私を確実に敵と認識している目だ。

「~~~~~~グス」

 吠えるアドの八重歯が、牙を剥き出しにしてるように見えるもん。
 私の喉笛を狙っているもん。目が怖いもん。

「フーナさま、少し離れて」
「っ!?」
「アドが怯えてるから」
「っっっっ!!!!!!」

 お、おかしい、やっぱりなんかおかしいよぉっ!

 何でメドはアドに連れ去られそうになってたのに、アドを庇ってるの!


 私はメドを助けたんだよね?
 それともメドの母性が目覚めっちゃったの!
 懐かれるアドを目の前にして!

「じ~~~~~~ぃ」
「??」

 ん、アドがメドの胸から顔を上げて私を見ている。

 もしかして大丈夫だって気付いたかな?
 私がお姉ちゃんって思ったかな?

「ど、どうしたの? ア、ド?」
「――――――にやぁ」
「っっっっ!!!!」

 ポフッ
 むにゅん

「!!!!!!ッッッッ」

 アドは私と一瞬だけ目が合うと、すぐさまメドの胸に顔を埋める。
 しかもちょっとだけ、笑ってなかったっ!?

 これはもしかして、私からメドを取る作戦なんじゃっ!?

 私はそう確信した。絶対そうだっ!


「メ、メドっ!この子ドラゴンのくせに、ネコ被ってるよっ!私たちの中を引き裂くつもりだよぉっ!!それとメドの貞操狙われてるよっ!!」

 私は立ち上がり、早口でメドに捲し立てる。

 この子って部分で指を差すが、相変わらず長い袖が邪魔で指が出ない。
 ダランってなって何処を指しているかも分からない。

 それを聞いたメドは、アドを自分の胸から少し引き離しアドの顔を見る。


「フーナさま」
「な、何っ?」

 こ、これは分かってくれたかな!

 私の方がメドと付き合いが長いんだし、新人のアドになんか負けるわけがない。
 それに私はメドのご主人さまだ。私の意見を無視なんかできない。

 どきどき


「もう少し離れて」

「へっ?」

「アドが怯えてるから」

 と、無表情のジト目で端的に告げられた。
 まぁ、無表情ジト目はいつもなんだけど。

 そう言ってメドはアドを「ぎゅっ」と抱きしめ直し、頭を撫で始める。

「よしよし」
「にやぁ」

「っ!!!!」

 メ、メドぉっ!



※※※※※※



「ううう~~~~ぐすっ」

 私は今1階の大浴場に立っている。

「『ほっと』」

 ボォォォ――――ッ

 そして浴場一面を覆っている氷を溶かしている。
私が間違って凍らせちゃったから。


「うううっ、何もあんな目で見なくても~~~~」

 私は慎重に魔法で氷を溶かしながら、さっきとメドを思い出す。


『…………フーナさま。これじゃ使えない。ワタシたちは外のお風呂使うから。今夜中に元に戻しておいて』

 あの後、私の収納魔法からお屋敷を出して、私とメド、そして新人のアドの三人でお屋敷の中に戻って来たんだ。

 それで、メドを含めて、アドも戦いであちこち汚れてしまったからって、メドはアドを連れて1階の大浴場に入っていった。

 そしてすぐに戻ってきたと思ったら怒られた。
 お風呂使えないって。

 その目がいつもより5割増しでジト目だった。
 ジト目を通り越して、殆ど薄目だった。怖かった。


『それじゃアド。外のお風呂に行こう』
『うん、メド姉ちゃんっ!』

『はぁぁぁぁぁぁっ!?――――!!!!』


 ちょ、ちょっと待ってよっ!そんな簡単にアドはメドとお風呂に入れるのっ!
 私なんか勝負しなくちゃダメなんだよっ!

 それにメドはお風呂凍ってるの知ってたよね?見たよね一度?

 もしかして直してないか確認したの?口うるさいお姑さんみたいに!?

「『ほっと』」

 ボォォォ――――ッ

 そんなこんなで、私はメドの言いつけ通りにお風呂を解凍中。
 何?お風呂解凍って……聞いたことないよっ!


「はぁ、わたしも行きたかったな、あの桃源郷に……きっと今頃二人は、小さな二つの影が重なって、2匹が1匹に…………そして3匹に…………」

 私はよくわからない妄想をしながら、慎重に慎重に解凍作業を進めるのであった。
 お風呂場を燃やさないように。



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