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連れさられるメドと青いドラゴン

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「え~~と『すとれーじまじっく』?」


 メドが私の為に用意してくれたご飯が、腕の中に消えていく。


「おおっ! 便利だねこれはっ!」

 私はメドを追いかける前に、試しに使った魔法。
 それはこの『収納魔法』だった。

 どういう仕組みかは分からないけど、魔力量に応じて収納できる量が決まるらしい。それが重さなのか、面積なのかは記載されていなかったから分からない。

「そこら辺は、後で検証してみよう」

 そんな訳で、せっかくメドがご飯を準備してくれたんだから、後でゆっくり食べようと思って『収納魔法』に保管しておいた。

 もしかしたらお屋敷ごと収納されちゃう?
 なんて冷や冷やしたけど、さすがに大丈夫だった。

「ん、お屋敷って収納できるの? まぁそれも後で確認だね」

 一先ずまたメドを探しにお風呂場を出る。


「メドぉ~~っ!!」


 叫びながらエントランスまで戻りメドの名を呼ぶ。

 もちろん浮遊魔法の『ほばー』は使用したままだ。
 じゃないと私は亀より遅い歩みになるだろうからだ。


 ズズッ――――――――ンッッッッ!!!!

 グラグラッ


「えっ!? な、なにっ?」

 大きく地面が揺れる衝撃と同時に屋敷全体も揺れ動く。


「そ、外かなっ!?」

 その何かの大きな衝撃音は、この先の外から聞こえてきた。
 玄関を抜けた大きな庭のある屋敷の外だ。

「な、なにっ??」

 嫌な予感がしながらも玄関まで浮遊して向かう。
 そしてその無駄に豪華な、外に続く扉を開ける。


 そこには――――

「えっ!?」

 大きな、いや、屋敷よりも巨大な群青のドラゴンがその存在をアピールするかのように、大きな翼をはためかせていた。そして今にも飛び立とうとしている。

 その青いドラゴンはメドのドラゴン化と同じくらい。
 恐らく50メートル級の大きさだった。


「メ、メドっ! な、なんでっ!」


 私は慌ててメドの名前を叫ぶ。

 何故なら飛び立とうとするドラゴンの手、そこにはメドが握られていたからだ。


『ナンダ、キサマは』

「メドっ! どこに行くのっ!!」

 群青のドラゴンが何かを言ったが無視する。

 今はそれどころじゃない。
 トカゲなんて、今は相手にしていられない。


「ごめんフーナさま。ワタシ負けた。このドラゴンについていく」

「負けたってなに? どういう事っ!? それとこのドラゴンはっ!」

「こいつはエンドの下僕。エンドに言われてワタシを――――」


『グハハッ! コイツはナニを考えてるのかニンゲンの姿で挑んでキタッ! チカラはオレよりも上だというのに馬鹿な奴ダっ! ダカラ勝負のルールーにシタガッテ、オレが連れていく。グハハッ! 馬鹿なメスだッ!』


 聞いてもいないのに、群青のドラゴンはペラペラと話し始めた。
 お陰でなんとなく事情が分かった。

 でもその前に確認しないといけない事がある。


「ねえっ! メドは『END』て奴のところに行きたいの?」

 ドラゴンの手の中のメドにそう尋ねる。

「ワ、ワタシは負けたの。だから行く」

「メド違うよっ! そうじゃないよっ! 『メドがENDのところに行きたい』か『私と一緒にいたいか』そういう意味だよっ! どっちなのっ!」

「ワタシは――――」

 メドはこのドラゴンの話だと「人間の姿で」勝負したって言っていた。
 その内容はわからないけど、メドはきっと私が言ったことを覚えていたんだ。


 (私が人間だから、メドも合わせてくれなきゃダメだよね)


 そう言ったことを、こんな状況でも守ってくれていた。


「そのせいでメドは――――」

 きっと負けたんだ。
 その勝負に。


「メドどうなのっ! 私と一緒じゃ嫌なの? ENDがいいのっ!」

「ワタシ、フーナさまと一緒に―――― いたいっ!」

「うんっ! わかったっ!」

 タンッ

『ハァッ!? オマエらはいったいナニを言っているのだ? 勝っタのはこのオレだぞっ! オマエみたいなニンゲンなんてカンケイないだろッ! ジャマだからヒネリ潰し―――― ウギャッッ――!!』

 ガバッ!

「よっと、大丈夫メド?」

 腕の中にいるメドにそう聞いてみる。

「ん、フーナさまありがとうっ。でもあいつは?」


『グオォォッッ、キ、キサマッ!』

 群青のドラゴンは大きなお腹を抑えて、私とメドを睨んでいる。
 50メートル級のドラゴンが、人間の一撃で苦しんでいる。

 
 メドが私と一緒にいたいと返事してくれた時に、ちょっとジャンプして杖で「ドスッ」とボディに一発入れていた。

 そしてその痛みで離したメドを、私がキャッチしただけだった。


『キサマ、エンドさまとオレに逆らうノカッ! ダッタラキサマもっ!』

「ちょっと待ってっ!」

 怒り狂う群青のドラゴンの言葉を遮って、後ろのお屋敷に振り返る。


「『すとれーじまじっく』 よしこれでOKっ!」

 収納魔法で私のお屋敷を丸ごと収納する。
 そしてそこには、ただ広いだけの空き地が出来た。

 と言っても、お庭とか庭園とかはそのままなんだけど。
 あれは収納できるかわからなかったから。


『なァっ! あの大きさをマホウでだとッ!』

 その光景を目の当たりにして、驚愕する群青のドラゴン。


「ん、フーナさま凄いっ!」
「えへへ。まぁねっ!」

 そしてその前では、メドに褒められる私。

 おおっ! 珍しくメドが少し驚いている。気がする。
 もしかして収納魔法を見たのは初めてだったのかな?


 続いて更に魔法を唱える。

「『まじっくどーむ』」

 次なる魔法で、今度は私たちとドラゴンを閉じ込める。

 お屋敷を収納したのは壊したくなかったから。
 ドラゴンを閉じ込めたのは、周りを気にしなくてもいいようにだ。


「さあ、こっちの準備は出来たよっ! だからかかってきなよ大トカゲっ! 私のメドを連れ去ろうとした事は絶対に許せないんだからねっ!」

 おあつらえ向きの戦場を作った後でそう挑発する。


『た、たかが、収納魔法が得意なダケの人間風情ガっ! ならオレの攻撃をウケてみろォ――――っ!!』


 群青のドラゴンは咆哮すると共に、巨大な口から氷の霧を放射する。
 ブリザードブレスと呼ばれるものだ。

「んっ! それぐらいわたしの魔法でっ!」

 メルウちゃん装備の杖を前に出して魔法を唱える。

 氷に対抗するにはやっぱり炎だっ!

「いくよっ! 『とーち』」

「フーナさま。それは火を灯す魔法。蝋燭ろうそく松明たいまつの」
 
 魔法を唱えた後で、メドがそんな事を言ってくる。

「へっ?」

 それを聞いて、間の抜けた声が出てしまう。

「え? ひ、火が出ればなんでも一緒でしょっ!」

 構わずにそのまま発射する。
 このままだったら、私たちが危ないからだ。
 また凍りたくもないし。


「いっけえ~~っ!!」

 杖を突きつけすぐさま発現した、火を灯すだけの魔法。


 それは――――

「わっ!?」
「んんっ!?」


 ゴアァァァァ――――ッ!!!!


 巨大な群青のドラゴンはよりも大きな「火」だった。

『う、ウわあァっ! 押され――ッ!! うがァァッ!!』

 ジュッ

 それはドラゴンの吐いたブリザードを軽々飲み込んだ。

 そしてその勢いのまま、
 ドラゴンの姿までをも飲み込んだ。

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