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070 9月1日 再び、ハンバーガーショップにて 2/2
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私はハンバーガーを食べようとしたら、紗理奈がぽつりと話し始めた。
「それより明日香と七緖よねー問題は。特に七緖よ、七緖」
「七緖くん?」
私が首を傾げると、紗理奈が身を乗り出して来た。
「『七緖くん?』じゃないわよ。何よすっとぼけて。私のクラスは朝から七緖と明日香の話題で持ちきりなんだから」
新学期が始まると、怜央と私が別れた話があっという間に広がった。怜央に思いを寄せている女子は歓喜しているとかいないとか。そして私が七緖くんと付き合い始めたという話も追いかける様に広まった。密かに七緖くんも一部の派手な女子に人気だったので『何でよりにもよって巽なのよ!』と言われているとかいないとか。
(どう転んでも話題になるのは避けられないのね。私が珍獣扱いなのは続きそうだけど、七緖くんと一緒ならそれも平気だし)
元々怜央と一緒にいる事で妬まれる事には慣れている。マイペースで精神力の強い七緖くんと一緒なら、何でも乗り越えて行けそうだ。
身を乗り出して顔を近づける紗理奈は更に顔をしかめる。
「もうさー明日香と七緖がどういう経緯で付き合い出したのかって、クラスの皆がよってたかって私に聞いてくるのよ? 直接七緖に聞けば良いのに。あいつ相変わらず暖簾前髪で視界をシャットアウトしているのよ!」
英数科のクラスメイトに質問攻めにされる紗理奈だったらしい。私と親友なのを皆知っているからだろう。紗理奈と同じクラスにいる当の本人である七緖くんはいつもと変わらないのだとか。
(暖簾前髪って面白い表現)
前髪を垂らして瞳を隠している七緖くんが澄まして教室で席に座っている。クラスメイトは誰も近づけず、仕方なく紗理奈を取り囲んでいる──という絵が簡単に想像出来て、私は吹き出し笑ってしまった。
「笑い事じゃないわよ。本当にひどいのよ七緖の『話しかけるなオーラ』がさ」
「そんな事ないでしょ? 七緖くんは結構おしゃべりだよ」
「あれの何処がおしゃべりなのよ!」
「えーそうかなぁ。質問したら色々答えてくれるし。ほらいつか話した『穴の話』なんて……七緖くんの面白さを凝縮していると思うし」
「いや……だから『穴の話』はただの男子の事情でしょーが」
「ふふふ」
(話しかけるなオーラなんて。そんな事は全くないのに。でも前髪は私の前以外では、以前と同じで垂らしたままなのね)
それはそれで私に対して特別な感じがする。だから私は一人嬉しくなってハンバーガーにかぶりついた。そんな私の顔を見ながら紗理奈は溜め息をついた。
「もーいいわよ。付き合い始めた今が一番楽しい時だものね。七緖とさ、夏休みどっか遊びに行ったりしたの? 私は力也と遊園地に行ったぐらいかな」
紗理奈は諦めてハンバーガーを手にとりがぶりと一口大きくかじった。私は夏休みの出来事を思い出しながら、そんな事はないと紗理奈に答えた。
「何処にも行かなかったよ。七緖くんと一緒に行動する事が多かったけど、遊んだって感じはないなぁ。夏休みは補習授業と勉強漬け。後はアルバイトでしょ? 足のリハビリ。それだけだよ」
指折り数えてみるが、やっぱりこの夏休みは勉強で始まり勉強で終わったと思う。おかげで明日から始まる休み明けのテストは期待出来そうだ。
(七緖くんと出かけたと言えば、一緒に陸上競技場の秘密の場所に行ったぐらいかな)
その事を思い出して私は話を続ける。
「そういえば、気分転換に陸上競技場側の公園に行こうとして……あ、その時に怜央と萌々香ちゃんとばったり会ったから、結局出かける事が出来なかっ」
そこまで紗理奈に話して顔を真っ赤にしてしまう。
何故ならば、七緖くんの自宅の玄関先で押し倒され、あっという間に七緖くんと経験してしまった事を思い出したからだ。
(キスも苦しかったしあそこも痛かったけど、とても幸せな気持ちになったのよね……って違う違う)
あらぬ事を思い出して私は更に顔を赤くする。
「何よ。何でそんなに顔を赤くするのよ」
紗理奈が私の顔を見ながら指についたハンバーガーのソースをペロリとなめていた。
私は視線を彷徨わせて俯く。
「い、いや、その。気分転換は出来なかったなぁと」
瞳を彷徨わせしどろもどろ呟く私に、紗理奈がカラカラと笑いながらポテトを手にとった
「やだ~明日香ったら、何処かに出かけたかって尋ねただけなのに。顔真っ赤にして。もしかして~勉強って言いながら二人きりだし。七緖と盛り上がっちゃった事でも思い出したとか?」
ニヤニヤと笑いながらポテトで私を指した。
「盛り上がっ」
そんな事を言われたものだから、私は瞬間的に七緖くんに揺さぶられている姿を思い出してしまい慌てて自分の顔を両手で覆う。
(ひぇ~たった一回の行為なのにすぐに思い出しちゃうの!)
まるで頭から湯気が出そうな程赤くなるので必死に椅子に座って小さくなる。
その様子を見た紗理奈が私を指していたポテトをポトリとトレイに落とした。
「えっまさかマジなの?」
そう一言低い声で呟くと、紗理奈は次に小声で「信じられない早すぎるでしょー!」と私に耳打ちしてきた。
七緖くんとの関係がどのぐらい進んでいるのか……紗理奈にバレてしまったのだ。
「それより明日香と七緖よねー問題は。特に七緖よ、七緖」
「七緖くん?」
私が首を傾げると、紗理奈が身を乗り出して来た。
「『七緖くん?』じゃないわよ。何よすっとぼけて。私のクラスは朝から七緖と明日香の話題で持ちきりなんだから」
新学期が始まると、怜央と私が別れた話があっという間に広がった。怜央に思いを寄せている女子は歓喜しているとかいないとか。そして私が七緖くんと付き合い始めたという話も追いかける様に広まった。密かに七緖くんも一部の派手な女子に人気だったので『何でよりにもよって巽なのよ!』と言われているとかいないとか。
(どう転んでも話題になるのは避けられないのね。私が珍獣扱いなのは続きそうだけど、七緖くんと一緒ならそれも平気だし)
元々怜央と一緒にいる事で妬まれる事には慣れている。マイペースで精神力の強い七緖くんと一緒なら、何でも乗り越えて行けそうだ。
身を乗り出して顔を近づける紗理奈は更に顔をしかめる。
「もうさー明日香と七緖がどういう経緯で付き合い出したのかって、クラスの皆がよってたかって私に聞いてくるのよ? 直接七緖に聞けば良いのに。あいつ相変わらず暖簾前髪で視界をシャットアウトしているのよ!」
英数科のクラスメイトに質問攻めにされる紗理奈だったらしい。私と親友なのを皆知っているからだろう。紗理奈と同じクラスにいる当の本人である七緖くんはいつもと変わらないのだとか。
(暖簾前髪って面白い表現)
前髪を垂らして瞳を隠している七緖くんが澄まして教室で席に座っている。クラスメイトは誰も近づけず、仕方なく紗理奈を取り囲んでいる──という絵が簡単に想像出来て、私は吹き出し笑ってしまった。
「笑い事じゃないわよ。本当にひどいのよ七緖の『話しかけるなオーラ』がさ」
「そんな事ないでしょ? 七緖くんは結構おしゃべりだよ」
「あれの何処がおしゃべりなのよ!」
「えーそうかなぁ。質問したら色々答えてくれるし。ほらいつか話した『穴の話』なんて……七緖くんの面白さを凝縮していると思うし」
「いや……だから『穴の話』はただの男子の事情でしょーが」
「ふふふ」
(話しかけるなオーラなんて。そんな事は全くないのに。でも前髪は私の前以外では、以前と同じで垂らしたままなのね)
それはそれで私に対して特別な感じがする。だから私は一人嬉しくなってハンバーガーにかぶりついた。そんな私の顔を見ながら紗理奈は溜め息をついた。
「もーいいわよ。付き合い始めた今が一番楽しい時だものね。七緖とさ、夏休みどっか遊びに行ったりしたの? 私は力也と遊園地に行ったぐらいかな」
紗理奈は諦めてハンバーガーを手にとりがぶりと一口大きくかじった。私は夏休みの出来事を思い出しながら、そんな事はないと紗理奈に答えた。
「何処にも行かなかったよ。七緖くんと一緒に行動する事が多かったけど、遊んだって感じはないなぁ。夏休みは補習授業と勉強漬け。後はアルバイトでしょ? 足のリハビリ。それだけだよ」
指折り数えてみるが、やっぱりこの夏休みは勉強で始まり勉強で終わったと思う。おかげで明日から始まる休み明けのテストは期待出来そうだ。
(七緖くんと出かけたと言えば、一緒に陸上競技場の秘密の場所に行ったぐらいかな)
その事を思い出して私は話を続ける。
「そういえば、気分転換に陸上競技場側の公園に行こうとして……あ、その時に怜央と萌々香ちゃんとばったり会ったから、結局出かける事が出来なかっ」
そこまで紗理奈に話して顔を真っ赤にしてしまう。
何故ならば、七緖くんの自宅の玄関先で押し倒され、あっという間に七緖くんと経験してしまった事を思い出したからだ。
(キスも苦しかったしあそこも痛かったけど、とても幸せな気持ちになったのよね……って違う違う)
あらぬ事を思い出して私は更に顔を赤くする。
「何よ。何でそんなに顔を赤くするのよ」
紗理奈が私の顔を見ながら指についたハンバーガーのソースをペロリとなめていた。
私は視線を彷徨わせて俯く。
「い、いや、その。気分転換は出来なかったなぁと」
瞳を彷徨わせしどろもどろ呟く私に、紗理奈がカラカラと笑いながらポテトを手にとった
「やだ~明日香ったら、何処かに出かけたかって尋ねただけなのに。顔真っ赤にして。もしかして~勉強って言いながら二人きりだし。七緖と盛り上がっちゃった事でも思い出したとか?」
ニヤニヤと笑いながらポテトで私を指した。
「盛り上がっ」
そんな事を言われたものだから、私は瞬間的に七緖くんに揺さぶられている姿を思い出してしまい慌てて自分の顔を両手で覆う。
(ひぇ~たった一回の行為なのにすぐに思い出しちゃうの!)
まるで頭から湯気が出そうな程赤くなるので必死に椅子に座って小さくなる。
その様子を見た紗理奈が私を指していたポテトをポトリとトレイに落とした。
「えっまさかマジなの?」
そう一言低い声で呟くと、紗理奈は次に小声で「信じられない早すぎるでしょー!」と私に耳打ちしてきた。
七緖くんとの関係がどのぐらい進んでいるのか……紗理奈にバレてしまったのだ。
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