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06 俺にしておけ
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「な、何を急に?」
私はイサークに押し倒され、ベッドの上でビキニアーマーをつけたまま大の字になっていた。私を押し倒したイサークは私のお腹のあたりをまたいでいた。座り込んではいないがイサークの太ももでがっちりと私の腰を挟んでいた。
イサークの黒い瞳がギラギラと光る。冒険してきた森の闇に潜んでいる、しなやかな黒豹の様だ。イサークは両手を私の顔の横につけて私の顔を覗き込む。
よく観察するとイサークの首や腕などに沢山の傷がある。いくつもの死線を乗り越えてきた証し。さっきは怒りで血管が浮き出ていたこめかみから、瞳を見つめる。
イサークと視線が合うと掠れた声が聞こえた。
「俺にしておけ」
「え?」
俺にしておけ──とは? 私は首を傾げる。
「ルカなんてガキは止めて俺にしておけ」
黒くて闇の様な瞳に熱がこもっているのが分かった。イサークに睨まれた敵は思わず動きを止める時があるけれども、今まさに私がそうなっていた。
「え、俺って……イサーク? んっ!」
まさか、それって。と、思った瞬間イサークが首を傾けて私の唇を奪った。
噛みつく様なキス。ジュッと音を立てて吸い上げられたら、唇の間から肉厚な舌が入り込む。私の口内は先程泣いたせいで体温が上がっていたけれども、それよりもずっと体温が高いイサークだった。こじ開けられて私の舌を絡めて吸い上げる。
「ふっ……」
唇を合わせたまま角度を変え、漏れる声すらイサークの口内に吸い上げられる。少しだけ隙間が空くと顎の裏を舐め上げられて私は思わず足の指先に力が入った。
えっ、何? どうなってるの。何これ? キス?
キスをまともにした事がない私は、今自分に起こっている状態が飲み込めなかった。イサークのシャツを握りしめる。どのぐらいそうしていただろう。息が苦しくなった頃、イサークがゆっくりとはなれた。はなれても私のおでこに自分のそれつけて近い距離にいる。
そして、今まで聞いた事がない低くて甘い声で囁かれる。
「泣いた後の上気した顔も可愛いな」
「かっ、可愛いって?!」
そんな言葉は未だかつて誰にも言われた事がない。だから再び頭の上から声を上げる。色気のない私の大きな声に、イサークが人差し指を立てて私の唇を押さえた。
「静かにしろ」
イサークが優しく笑い私の瞼にこめかみに、頬に小さくキスを落とす。キスでしっとりとしたイサークの唇が触れる度、体がはねる。甘い声で囁かれて私は目をまん丸にしていると思う。
この人は誰? あの寡黙で素っ気ない、話を聞いているのか聞いていないのか分からないイサークはどこへいったの?
私が突然遭遇した魔物を見た時よりも驚いた顔をしていたのだろう。イサークが笑いながら耳朶にキスをしながら囁いた。
「どうした? そんな丸い目をするなんて珍しい」
どうしたじゃない。どうしたのかはあんたよ。だから私は素直に答えた。
「だってキスしたの初めてなんだもん」
顔を横にしてイサークの黒い瞳を見つめると、今度はイサークがこれでもかと目を見開いた。
「…………なん、だと? 初めて、だと?」
私はイサークに押し倒され、ベッドの上でビキニアーマーをつけたまま大の字になっていた。私を押し倒したイサークは私のお腹のあたりをまたいでいた。座り込んではいないがイサークの太ももでがっちりと私の腰を挟んでいた。
イサークの黒い瞳がギラギラと光る。冒険してきた森の闇に潜んでいる、しなやかな黒豹の様だ。イサークは両手を私の顔の横につけて私の顔を覗き込む。
よく観察するとイサークの首や腕などに沢山の傷がある。いくつもの死線を乗り越えてきた証し。さっきは怒りで血管が浮き出ていたこめかみから、瞳を見つめる。
イサークと視線が合うと掠れた声が聞こえた。
「俺にしておけ」
「え?」
俺にしておけ──とは? 私は首を傾げる。
「ルカなんてガキは止めて俺にしておけ」
黒くて闇の様な瞳に熱がこもっているのが分かった。イサークに睨まれた敵は思わず動きを止める時があるけれども、今まさに私がそうなっていた。
「え、俺って……イサーク? んっ!」
まさか、それって。と、思った瞬間イサークが首を傾けて私の唇を奪った。
噛みつく様なキス。ジュッと音を立てて吸い上げられたら、唇の間から肉厚な舌が入り込む。私の口内は先程泣いたせいで体温が上がっていたけれども、それよりもずっと体温が高いイサークだった。こじ開けられて私の舌を絡めて吸い上げる。
「ふっ……」
唇を合わせたまま角度を変え、漏れる声すらイサークの口内に吸い上げられる。少しだけ隙間が空くと顎の裏を舐め上げられて私は思わず足の指先に力が入った。
えっ、何? どうなってるの。何これ? キス?
キスをまともにした事がない私は、今自分に起こっている状態が飲み込めなかった。イサークのシャツを握りしめる。どのぐらいそうしていただろう。息が苦しくなった頃、イサークがゆっくりとはなれた。はなれても私のおでこに自分のそれつけて近い距離にいる。
そして、今まで聞いた事がない低くて甘い声で囁かれる。
「泣いた後の上気した顔も可愛いな」
「かっ、可愛いって?!」
そんな言葉は未だかつて誰にも言われた事がない。だから再び頭の上から声を上げる。色気のない私の大きな声に、イサークが人差し指を立てて私の唇を押さえた。
「静かにしろ」
イサークが優しく笑い私の瞼にこめかみに、頬に小さくキスを落とす。キスでしっとりとしたイサークの唇が触れる度、体がはねる。甘い声で囁かれて私は目をまん丸にしていると思う。
この人は誰? あの寡黙で素っ気ない、話を聞いているのか聞いていないのか分からないイサークはどこへいったの?
私が突然遭遇した魔物を見た時よりも驚いた顔をしていたのだろう。イサークが笑いながら耳朶にキスをしながら囁いた。
「どうした? そんな丸い目をするなんて珍しい」
どうしたじゃない。どうしたのかはあんたよ。だから私は素直に答えた。
「だってキスしたの初めてなんだもん」
顔を横にしてイサークの黒い瞳を見つめると、今度はイサークがこれでもかと目を見開いた。
「…………なん、だと? 初めて、だと?」
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